第28話:異常認定
第28話です。
小さなズレは、ついに“異常”として扱われる。
もはや誤差ではない。
これは、明確な“問題”だ。
「……緊急報告です」
張り詰めた声。
空気が一瞬で変わる。
「何だ」
低い声。
上層の中心。
「複数ラインで、同時に異常が発生しています」
ざわつく。
一気に。
「……詳細を」
「はい」
画面が切り替わる。
グラフ。
数値。
流れ。
すべてが――
ズレている。
「……これは」
誰かが息を呑む。
「収束していない」
「はい」
即答。
「修正をかけても、別の箇所で再発します」
完全に、パターンだ。
「……原因は」
重い問い。
だが――
今回は違う。
「特定済みです」
空気が止まる。
「……言え」
その一言。
静かだが、圧がある。
「“特例個体”です」
その瞬間――
完全に、止まった。
「……やはりか」
誰かが呟く。
「監視データと一致しています」
確定だな。
「……呼べ」
短い命令。
逃げ場はない。
――数分後。
「……来ました」
扉が開く。
俺が入る。
視線が刺さる。
全員。
完全に。
「……呼ばれて来ました」
いつも通り言う。
だが――
空気は違う。
完全に敵だ。
「座れ」
命令。
座る。
逃げない。
「……分かってるな」
最初の男が言う。
「何のことですか」
あえて聞く。
最後まで、崩さない。
「とぼけるな」
即座に返される。
「全ラインのズレ」
一歩踏み込む。
「お前だな」
断定。
疑いじゃない。
「……証拠は」
静かに返す。
ここが勝負だ。
男は少しだけ笑った。
「ない」
予想通りだ。
「だが」
続ける。
「確信している」
それで十分な世界。
「……」
少しだけ間を置く。
ここでどう出るか。
「で?」
顔を上げる。
「どうするんすか」
逆に聞く。
空気が張り詰める。
「処分する」
横から声。
来たな。
「危険すぎる」
当然の判断。
「制御不能」
正論だ。
「……」
だが――
別の声が入る。
「待て」
空気が止まる。
「まだだ」
視線がそちらに集まる。
「結果は出ている」
確かに。
ズレてるが――
崩壊はしていない。
むしろ――
「効率は維持されている」
それが問題だ。
「……異常だ」
誰かが呟く。
その通りだ。
「通常なら破綻する」
だが、していない。
「……つまり」
最初の男が言う。
「意図的にコントロールされている」
核心だ。
「……」
黙る。
肯定もしない。
否定もしない。
「答えろ」
強い声。
俺は――
少しだけ笑って、
言った。
「どう思います?」
空気が凍る。
完全に挑発だ。
「……舐めているのか」
低い声。
危険なラインだ。
だが――
「違う」
首を振る。
「見てほしいだけだ」
正直に言う。
「何をだ」
「この形」
画面を見る。
ズレ。
流れ。
揺らぎ。
「完璧じゃない方が、回る」
静かに言う。
沈黙。
数秒。
だが――
重い。
「……理屈は」
誰かが口を開く。
「分かる」
意外な反応。
「だが」
続ける。
「危険だ」
当然だ。
「だから」
一歩踏み込む。
「俺がやってる」
責任を取る。
その意味も込めて。
「……」
空気が変わる。
少しだけ。
「……どうする」
最初の男が周りを見る。
判断の時間だ。
「監視強化」
一人が言う。
「制御範囲の制限」
別の声。
「一部停止」
慎重派だな。
「……」
だが――
最後に。
「続行だ」
決まった。
空気が止まる。
「ただし」
来たな。
「完全監視」
当然だ。
「逸脱すれば即処分」
それも当然。
「……了解」
うなずく。
それでいい。
「……お前」
男がこちらを見る。
「何が目的だ」
核心。
俺は――
少しだけ考えて、
答えた。
「見たいだけっすよ」
小さく笑う。
「この世界が、どこまで歪むか」
沈黙。
誰も、何も言わない。
だが――
全員、理解した。
「……危険だな」
誰かが呟く。
「そうっすね」
否定しない。
それでいい。
「以上だ」
会議が終わる。
立ち上がる。
視線を背中に感じながら――
歩く。
「……どうでしたか」
外で教育係。
俺は小さく笑う。
「最高だな」
本音だ。
「完全に“異常”認定された」
それでいい。
むしろ――
「やりやすい」
枠がはっきりした。
「……」
女性は少しだけ息を吐いて――
言った。
「本当に」
言葉を選んで、
「戻れませんよ」
その一言。
俺は振り返らずに答える。
「最初からだ」
もう、戻る気なんてない。
「行くぞ」
前を向く。
ここからが本番だ。
完全に――
敵として認識された。
だからこそ――
壊す価値がある。
読んでいただきありがとうございます。
第28話では、主人公の行動がついに“異常”として認定されました。
処分寸前の状況の中、
それでも“続行”という判断が下されます。
ただし条件は――完全監視。
ここからは、より危険な領域に入っていきます。
引き続きよろしくお願いします。




