第20話:予想外の結果
第20話です。
“全員通す”という選択。
その結果は、成功か、それとも失敗か。
――答えは、予想とは違う形で現れる。
「……報告が上がりました」
教育係の声。
静かだが、どこか張り詰めている。
「……来たか」
椅子に座ったまま、顔を上げる。
早いな。
だが、この世界なら普通か。
「どうだった」
単刀直入に聞く。
結果だけでいい。
教育係は、一瞬だけ間を置いて――
言った。
「三人とも、結果を出しました」
「……は?」
理解が追いつかない。
「もう一回言ってくれ」
「三人ともです」
はっきりと。
「全員、基準値を超えています」
その言葉で、思考が止まる。
(……あり得るのか?)
普通なら――
誰かが落ちる。
それが前提の仕組みだ。
なのに。
「……マジかよ」
思わず笑う。
「やるじゃねぇか」
正直な感想だ。
「ですが」
教育係が続ける。
その一言で、空気が変わる。
「問題があります」
やっぱりな。
そう簡単にはいかない。
「何だ」
視線を向ける。
教育係は、まっすぐこちらを見て――
言った。
「一人が、規定を逸脱しました」
嫌な予感。
「誰だ」
答えは、すぐに出た。
「……三人目の男性です」
あいつか。
やっぱりな。
「何やった」
教育係は、ほんの少しだけ間を置いて――
答えた。
「他の候補者を“潰しました”」
空気が凍る。
「……は?」
意味が分からない。
「競合対象を排除し、自分の価値を引き上げています」
淡々とした説明。
だが――
中身は最悪だ。
「……それ、ありなのか」
確認する。
教育係は首を横に振った。
「グレーです」
完全アウトじゃない。
だが――
「推奨はされていません」
つまり。
やったもん勝ちに近い。
「……」
頭の中で繋がる。
あいつは言ってた。
“壊れる”って。
「……あいつ」
小さく呟く。
「やりやがったな」
予想外ではない。
だが――
現実になると重い。
「現在、上層で議論されています」
教育係が続ける。
「評価をどうするか」
当然だ。
この結果は、想定外すぎる。
「……どうなると思う」
聞く。
教育係は少しだけ考えて――
答えた。
「評価は上がるでしょう」
やっぱりな。
「結果を出していますから」
冷たい現実。
「ただし」
続ける。
「扱いは難しくなります」
当然だ。
コントロールできない。
「……」
沈黙。
だが――
今回は違う。
怒りではない。
「……面白ぇな」
口から出たのは、それだった。
教育係がわずかに驚く。
「面白い、ですか」
「ああ」
うなずく。
「全員通したら、全員結果出した」
それだけでも異常だ。
「その上で、一人はルールぶっ壊した」
笑うしかない。
「最高じゃねぇか」
本音だ。
この世界に、風穴が開いてる。
「……あなたらしいですね」
教育係が小さく言う。
「だろ」
軽く笑う。
「で」
一歩立ち上がる。
「そいつ、どこだ」
会う必要がある。
「現在、別室にいます」
「行く」
即答だった。
止まる理由はない。
部屋を出る。
歩く。
少しだけ、足が速くなる。
「……」
扉の前。
一瞬だけ、立ち止まる。
そして――
開ける。
「……来ましたか」
あいつがいる。
静かに座っている。
だが――
空気が違う。
「やったな」
軽く言う。
あいつは少しだけ笑って――
答えた。
「やりました」
その顔。
迷いがない。
完全に、踏み込んでる。
「……なんでやった」
聞く。
責めるわけじゃない。
ただ、知りたい。
あいつは少しだけ考えて――
言った。
「勝つためです」
シンプルだ。
「それが、この世界でしょ」
その言葉に、何も言えなくなる。
正しい。
この世界では、それが正解だ。
「……」
少しだけ、間を置く。
「後悔は?」
聞く。
あいつは、即答した。
「ないです」
迷いなし。
「……そうか」
うなずく。
それが答えだ。
「で」
あいつが聞いてくる。
「どうします?」
試すような目。
俺は少しだけ考えて――
笑った。
「別に」
肩をすくめる。
「何もしねぇ」
その一言で、空気が揺れる。
「……いいんですか」
「ああ」
うなずく。
「それも含めて結果だろ」
俺のルール。
選ばない。
ただ――
見る。
「……」
あいつはしばらく俺を見て――
小さく笑った。
「やっぱり変わってますね」
「よく言われる」
軽く返す。
「じゃあ」
振り返る。
「次、どうなるか楽しみだな」
その言葉に、あいつも笑った。
「ですね」
静かな笑い。
だが――
その裏は、深い。
部屋を出る。
廊下に戻る。
「……どう思いますか」
教育係の声。
俺は少しだけ考えて――
答えた。
「始まったな」
小さく笑う。
「この世界、壊れ始めてる」
それが、今の実感だ。
読んでいただきありがとうございます。
第20話では、“選ばない選択”の結果が描かれました。
全員が結果を出すという異例の展開。
そして、その中でルールを逸脱する者の出現。
この世界の歪みが、少しずつ表に出始めています。
主人公はそれを否定せず、
ただ“見る”ことを選びました。
次回、事態はさらに加速します。
引き続きよろしくお願いします。




