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背伸び  作者: 雨世界
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7 幸せはきっと、あなたのとても身近なところにある。

 幸せはきっと、あなたのとても身近なところにある。


「ねえ、ひとみ」みなみは言う。

「なに、みなみ」ひとみは言う。

「僕と友達になってくれて、本当にどうもありがとう、ひとみ」

 まっすぐにひとみの目を見て、ちょっとだけ照れながらみなみはいう。


 そんなみなみのことを少しだけ自分の顔をあげるようにして見つめながら、ひとみは「ううん。私のほうこそ、私と友達になってくれて、本当にどうもありがとう。みなみ」と本当に嬉しそうな顔で、にっこりと笑ってみなみに言った。

 そんなひとみの言葉を聞いてみなみは不覚にも泣きそうになってしまった。ううん。実際にみなみは泣いてしまっていたのかもしれない。

 そのとき、みなみの見ている世界は、少しだけ滲んでいた。


「これからもずっと一緒にいようね。みなみ」と別れ際にひとみは言った。

「うん。そうだね、ひとみ」ひとみに手を振りながら、みなみは言った。


 それから二人はいつものように、途中の道で分かれて、真っ赤な夕焼けの中を歩いて、それぞれ別の自分たちの家に帰って行った。


 その次の日も、懲りずにひとみはみなみに「私と付き合ってよ。みなみ」と言った。でもやっぱりみなみは、「付き合わないよ」とにっこりと笑ってひとみに言った。

 そんな日が何日か続いた。

 でも、結局、ひとみとみなみは付き合うことはなかった。(まあ、二人は女性同士なのだから、当たり前といえば当たり前のことなのだけど)

 みなみがその話を竹内かすみ先生に話すと、みなみはかすみ先生から「大人になりなよ、大川さん」と言われた。


 二人は高校生になって、それぞれ別の人と恋をして、お付き合いをした。だからあのころのひとみの感情が恋だったのか、憧れだったのかは、二人が高校生になってしまった今となっては、もう誰にもわからないままになってしまった。(ひとみはずっと私の初恋の人はみなみだったと、今も自慢げに自分の友達や彼氏に言っていた。そんなひとみのことをみなみは少し困った顔をしながら、でも、ちょっとだけ嬉しそうな顔をして、いつも「それはひとみの勘違いだよ」と言いながら、いつもひとみの近くにひとみとは別の高校の制服を着て、いた)


「ねえ、ひとみ。キスしようか」

 ある日、高校生のみなみの見ている夢の中で中学生のころのみなみは中学生のころのひとみにそういった。

「うん。いいよ。キスしようよ」とにっこりと笑ってひとみは言った。

 でも、二人がキスをする直前になって、みなみは夢から目を覚ました。


 それからみなみは、……もし夢の中に出てきた相手が、ひとみではなくて、みなみのずっと憧れの竹内かすみ先生だったとしたら、僕は夢の中でかすみ先生にキスしようよ、というのだろうか? それとも、そうは言わないのだろうか? 

 ……もし逆に、憧れのかすみ先生から、ねえ、キスしようか? 大川さん、と言われたら、あのころの僕はどうするのだろうか? キスを断るのだろうか? それとも、断らないのだろうか?


 ……と、そんなことを(ぼさぼさ髪のままで、ベットの上でぼんやりとしながら)思った。


 幸せは見つけるものじゃない。気がつくものだよ。


 背伸び 終わり

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