29章「漆黒のRevolution 1」
暗闇に包まれる五香峠。そこにはいつも違法改造のスポーツカーの轟音が響いていた。
欲望に溢れるその峠は、全国から走り屋達が集まり、令和の時代とは思えない程治安が悪い、違法レースが続いていた。
その峠の頂点に立っていた男がいた。車はランサーエボリューションⅣ。
そのエボ4は、特注の黒色の塗料に塗られていた。彼の運転は、相手の自信を削り、数々の走り屋を舞台から引きずり下ろす事から、「ドライバー殺しのエボ4」と、言われ恐れられていた。かつては。
ある日突然、彼はバトルに負けた。エボⅩに。明らかな性能差での敗北だった。だが彼がその後五香峠に姿を見せることは無かった。
・・・・・・
「今は平日、深夜2時。にしては馬鹿どもがいないな」
五香峠をスキール音を響かせながら走る1台の車がいた。白のトヨタ86だ。
コーナーに差し掛かると慣れた手つきで後輪を滑らせ、くるりと回って通過した。
彼は隣の峠で戦って、挑戦者を撃破していった猛者だ。
「ガッカリだな。またホテルに泊まって、土曜日を待つか」
直線に入った時、後方からエンジン音が聞こえてきた。大分旧式の音だ。
「お、来たな」
ライトがどんどん近づいてくる。
「いいぜ。暇してたんだ。かかって来い!!」
ハザードを出し、バトルの状態に入った。
S字カーブに入り、相手の姿がハッキリと見える。
「・・・黒のエボ4?まさか、な。憧れてる奴の真似事だろ。次の直線でケリをつけてやる。俺は加減が出来ないからな」
どちらもカーブを抜ける。
直線に入ると、宣言通りアクセルを全開に踏み込み、エボ4を大きく突き放した。
そして次のコーナーに入った時だった。
「!?もう追いついてきやがった!!」
いつの間にかエボ4は86の背後に立っていた。
エボ4は4駆のグリップ力を使い、86を易々とパスした。
「俺はあの峠で戦って、勝ってきた!!こんな所で負けてたまるかよ!!」
直線で86はアクセルを全開に踏み、一気に加速した。だが、それが仇となった。
「・・・ダメだ」
彼は次のコーナーを曲がりきれない事を予測し、サイドブレーキを引きコーナー直前でスリップした。
・・・・・・
「・・・奴は全開にしていなかった。俺は奴の掌の上で転がされているだけだったのかよ」
ホテルの駐車場で彼はダッシュボードに横たわった。
「奴は偽者じゃない。戻ってきたのか・・・?『ランサー』・・・」




