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Imagine World  作者: サツマイモ
『虚想世界』
55/81

008 まどかの独り言

「なんだよ、もうおっぱじめちゃったわけ? まあ、止めとけっつったわけじゃねーから仕方ないけどさ。で、お前はそこに見てるしかねーってのか。はーん、ほんとにお前は力を失ったんだな。失ったっつーか、忘れたっつーか。忘失ってやつか? ああ、わかってるって。止めればいいんだろ、止めれば。でもさ、よーく見てみなよ。あの子、本気の眼だよ? 私が入っちゃったら、彼女が可哀そうだと思わない? いやいや、私だって行きたいよ? でもさ、彼女が考えている構想の中に、私はいないわけでしょ? だとしたら、私は手を出せねーよ。じゃあ、何しに来たかって? 他の海獣を潰しに来たんだよ。おいしそうだし。血湧き肉躍るって、別に殺伐とした空気を連想したわけじゃねーだろうな? どうせお前のことだ、そういうことを考えていたんだろ。違う違う。間違っているよ。辻褄は通ってるけど根本が違うから答えが間違いになっちゃうっていう、典型的な奴だよ。ほんとに。お前、そんなんだから成績上がんないんだよ。確かに、お前は間違ってねーんだけど、テストって正しさじゃないからさ。いかに出題者の意図を探るか、だからね? その辺勘違いしてんだろ。あんなもので学力を測るなんて無茶な話でさ。あ、ごめん、全然別の話しちゃったな。で、何が言いてえかっつーと、血湧き肉躍るっつーのは、鍋の話だよ鍋。ここの海獣の血液って美容に良いらしいんだわ。んで、ぐつぐつ煮込んだら、肉躍るでしょ? あ、今使い方違うって怒った。だーかーら、それが間違いなんだってば。正しさよりも、相手の趣旨を理解するのが、最近の世の常なんだって。だから、私はお鍋を食べに来たんだよ。良い? じゃあ、私は生け捕りは苦手だからテキトーにぶっ放すから、気をつけてな。


 佐渡島まどかイコール原点(オリジン)

 1イコール1メートル。

 Xの2乗プラスYの2乗イコール、そうだな、49くらい? 


 おー、すごいすごい。練習の成果があったな。え? いやいや、私の能力じゃねーよ? 私は、努力して手に入れるタイプの人だからな。この技だって、ええと円炎(サークルファイア)だっけ、それも私は見様見真似で練習してんだから、お前よりは偉いっつーの。さて、その辺のやつ食べ放題だぞ。いや、ちょっと待てよ。このまま海ごと鍋にしちゃってもいいかもしんない。作戦変更。お前、すぐにあいつらを止めてこい。そして、一旦海の外に出してこい。そしたら、海ごと鍋にして、鍋パーティーをしよう。なーに、龍澤央那も参戦だよ。4人で楽しもうじゃないか。てことで、任せたぞ。……止め方が分かんないだと? 調子乗んなよ? ったく、人が少し甘やかせばそうやって人を頼るようになる。あのな、そういうの高校生のうちは通じるけど、大人の社会では通じないんだよ? その辺分かって発言しないと、ついてけないよ? 正直、私もそれに関しては異議を申し立てたいよ、疑義を正したいよ? でもね、そういうことはできないの。それが、所謂常識ってやつなの。で、何だっけ。あ、やり方が分かんない。あーもう、しゃーねーな。特別に、まどかお姉さんが助けてあげっから。その代わり、お前は鍋将軍だかんな。でもさ、考えてみればわかんじゃん。簡単じゃん。水流っていうからややこしくなるんだろ? 水龍じゃなくてスクリューだと思えばいいんだよ。槍を作るってことは、鋭くしなきゃいけないってことは、要するに渦を巻いているってことでしょ? だったら、逆方向に回転させれば回転も和らぐでしょ。こうやって、『水龍』。逆方向に回せば。ほら、振り向いた。やっほー。あれ、あいつ泣いてね? そんなに嫌だったのかな。ありゃ、うてなも腰抜かしちゃった。なーんだ、あいつもあいつで虚勢張ってたのか。ったく、お前がしゃんとしないから、彼女が大変な思いしちまったじゃねーか。激戦空しく、虚しく負けた龍澤央那は、こっちに向かって何か言ってるし。あとでちゃんとお世話してやれよ? ご主人様。話を聞いたら、お前が抱いている感情も少しは分かると思うぞ? それくらいわかるっつーの。何年一緒に生きてると思ってんだよ、ガキが。ついでだから言っておこう。彼女―龍澤央那の君への思いは、儚くも虚しく散った。虚構で虚勢だった。でもな、実はそれは彼女だけじゃねーってことも忘れるな。その空虚な虚像を追いかけて、虚ろな世界を取り戻してやろうと考えているやつのことも頭の片隅に置いとけ。これ以上は言わねー。あとは、自分でちゃんと見極めな。さあ、行った行った。今からここを鍋にするから、速くどかねーと大変なことになるぞ? じゃあやるぞ? 3、2、1、内切炎(インサイド・ファイア)!」


 言われるがままに、僕は―僕らは、結局彼女―佐渡島まどかによる、一旦の解決を見た。

 彼女の喋りには一切口を割れない。

 圧倒される。気圧される。


 いやまあ、この解決は本当に一旦であり、一端でしかないのは自明なのだけれども。未だ見つけていない先輩は、いったいどこで何をしているのだろうか。


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