プロローグ
<プロローグ>
生徒玄関を出た私は呆然と立っていた。
授業が終わり、部活もない。だから、今日はもう家に帰ろうと思っていた。他の生徒もちらほらと玄関を出て、校門へ向かっていく。
季節は春。崎山高校の校門を出た道沿いには桜が咲き誇っている。でも、すぐに散るだろう。
校門へ向かう生徒たち。咲き誇る桜の木。そして―――
―――ああ、私はまた、この光景を見てしまった。
目の端から何かが溢れ、ぽつんと零れ落ちた。
「なぁーっちゃんっ。」
「・・・何?」
「えっ何?そのいかにも嫌です!って顔。そんなに俺に会いたくなかった?」
「会いたくなかった。」
即答。
「えーそんなー、傷付くじゃん。」
そう言いながらも笑って声をかけてくるこの男は三崎祥平。違うクラスなのにわざわざ昼休みに来るのは、暇なとき、もしくは何かあった時だ。このわざとらしいテンションは、多分後者だ。
今、教室にいる人は少ない。大方、食堂に行ったのだろう。
「で、何の用?」
「一緒にご飯を食べようと思って!」
嬉しそうに手に持っていた弁当を机の上に置いて、椅子にドカッと座る。
・・・・・。
「で、な・ん・の・よ・う?」
先程も言った言葉を丁寧に一文字ずつ区切って言うと、苦笑して
「まあ、相談に乗ってくれないかってこと。」
そう答えた。