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外伝3〈歩み〉

これもまた無理やり縮めた( ・´ω・`)だいたい、だらだら書きすぎて……あはは。

その割には細かい事なんて書いてないしm(_ _;)m

よ、よろしくお願いします。

と、とにかく、本編で明言しなかったこの状況が『雪華の仙術』の答えです。

 心地良い風が吹いていた。高く青い空には雲ひとつ無く、目の前には黄金の稲穂が揺れている。サワサワと木々が頬を揺らす音を聞きながら俺は目を開いた。


 そこには大きな籠を背に抱えた少女が不満そうに立っていた。まだ幼さを色濃く残す少女で年は十三。可愛いと言えばかわいいのだろうが、俺にとってはこの年にして口煩い女でしかなかった。


 名前を『() 彩映(さいえい)』と言った。


 その手も顔もいささか薄汚れているのは、籠に入っている木の実や、根のものを収穫していたからだろう。


 今はこの村一番の収穫期に当たるのだ。よく見ると稲穂の向こうでも鎌を持ち何かを狩っている人々が見えた。


 俺は上半身を起こすと伸びをする。


月清(げっせい)ーーあんた、収穫サボる気? おばさん怒ってたけど? かなり」


 おばさん。その呼称は俺にとっては少しだけ違う。もちろん母ではない。母親は随分前に亡くなってしまったのだから。


「俺は体が弱いんだ。お前とは違ってーー陽曜(ひよう)も許してくれるさ」


 双子の妹だ。


 とは言っても、俺と陽曜では何処からどうみても、他人から見ると親子でしか見えない。それは、俺が特殊な体質をしているためだった。


 外見で言うと、俺は大体ーー彩映と同じぐらい。十三程に見えるだろう。中身はもう五十七で、陽曜の外見は年相応だ。なので彩映に見下される覚えは無いのだが、気付けば彩映の弟みたいになっていた。


「ムカつく! 中身はお祖父ちゃんだなんて」


 悔しそうに地団駄を踏んでいる。


「俺だってなりたくてなった訳じゃねえよ。特だなんて思ってねぇしーーだいたい酷く成長おせークセに、寿命なんて人並だし、どっかの馬鹿が仙人だって騒ぐけど、何も出来ねえし」


 斬られたら普通に死ぬし。良いことない。


 俺みたいな奴は一族にごくたまに現れるらしい。仙の血を引いているとか何とかだが迷惑旋盤だ。俺だって色々人生謳歌したがったのだが、人生半分以上乳幼児期ってなんなんだろう。


 ようやくこの姿まで、と思えばもうすぐ死ぬ。


 笑える。


「可哀想だろ? ということで寝るから! 人生は大事に!! 以上っ!」


「くっ!! 良いもんーー秋祭り呼んであげないんだから」


 勝手に行くからどうでもいい。と動じず狸寝入りを決め込む。耳元で彩映が悔しそうに呻くのが聞こえてくる。


 それが面白かった。


「こ、今年は百年に一度のお祭りだからーー始祖様を呼ぶって言ってたもん。見せてあげないんだから!!」


 俺は飛び起きていた。


「始祖って、仙人の?」


 始祖ーー仙であり、この村を創った者であり、一族の祖先だ。そう大人たちから習った。つまりは、俺の体がこんなのになった張本人だ。見た事なかったし、いるかどうかも眉唾だったが。


 本当にいたんだ。と改めて思う。


 仙というくらいだからーー死なないのだろう。それはそれで嫌だったが。


「ってか、どうやって呼んだんだよ?」


「ーー詳しい事は。あっちから来たって、父様は言ってたけど?」


 彩映の家は古くからこの村の行事を取り仕切る。その為彩映はいち早く情報を得る事ができ、ベラベラと俺に零していく。良い事も悪い事も。まあ問題はないだろう。俺も外に漏らす気は無かったし。


「とにかく、案内してよ。てことは知ってんだろ居場所」


 俺は立ち上がり背に付いた叩くようにして埃を払った。彩映は困惑したように俺を見ていた。


「嫌だよ。怒られるし」


「ばれなきゃいいだろ? 文句言ってやんだよ。俺はもうすぐ死ぬってなーーアンアのせいで」


 言うと彼女は顔を顰めて空を仰ぐ。何かを天秤にかけているらしかったが、『ま、いっか。うん』とスッキリした顔で籠を下ろした。


 嬉しそうに笑う。


「いひひ。実は私も顔が見たかったんだよね。父様がダメって言うし。バレても月清のせいにしとけば良いよね」


 何気に酷いことを言って走り出していた。





 その建物は村の外れに隠れるようにして建っていた。それがここにあること、俺たち一族ーー殆の村人が知らなかった事だが、彩映の一族は知っていたらしい。

 古びてはいたが管理されているのか壊れた所はひとつも無かった。


 家の中に人影は無く静まり返っている。それどころか長い間誰も住んでいないという生活感の無さを醸し出していた。


「誰も居ねぇぞ? っうかほんとにココ?」


「嘘言ってないもん」


 言いながら彼女は辺を見回していると『あ!』と嬉しそうに声を上げた。


 視線の先には一人の老人がぼんやりと、眠るようにして椅子に腰掛けていたのだ。死んでいるのではないか、と不安になる。そんなことはお構いなしに彩映はパタパタと小さな音を立てて駆け寄った。


「始祖様!?」


「ーー汝は?」


 老人はゆったりした動作で顔を上げ彩映を見、俺に目を向けた。


 くすんだ琥珀の双眸。それは妹の物とよく似ていた。まぁ、そんなことどうでもいい。俺は歩み寄ると老人を見据えた。


「俺は月清だ。あんたのせいで成長出来ないまま死ぬ。面白いか?」


「な、なな、何言ってんのよ?」


 動じない。動じたのは彩映だけだ。ただ老人は白い眉を動かしただけだった。


「ほぅ。今回呼んだのは汝か?」


「は?」


 行っている意味が分からなくて俺は眉を寄せた。ただそんなこと気にする様子なく退屈そうに欠伸をしているが。


「たまにこうして『中途半端』な者に呼ばれる。お前のせいだ。何とかしろとな」


 ざっと思考にノイズがかかるのを感じた。這い上がってくるような感情の波。それに抗おうとは思わなかった。


 叫ぶようにして言葉を紡ぐ。


「中途ーー半端って、なんだよ! ……おいーーだいだいお前のせいだろ? お前は永遠の命持ってんだろ? 何とかしろよ!」


「何とか出来ると? 頼んで命が手に入るか? 汝は自分の不幸を嘆く前によく考えた方がいい」


「なんだとっ!?」


 俺は思わず胸ぐらを掴んでいた。殴りかかろうとしたところを、彩映の腕が慌てて止める。それを老人はなんの感慨もなさそうに見つめていた。


「ちょ、止めてよ、ダメだって!!」


「何年生きてもガキなのだな。汝は。もういい年だろうに、その娘と見分けがつかぬわ……ま。なるほど。『だだ』もこねたくなる、か」


 悔しくてギリギリと奥歯がなった。


「ーーつ。くそじじい!!」


 老人は睨みつける俺を無視するように立ち上がった。腰が曲がっているが身長は高い。俺は見上げる形になってしまう。


「……何のために汝は生きたいのだ?」


「生きるためにそんな理由がいんのか?」


 理由なら何も無い。ただ、人生を生きたかった。


 老人の喉が面白そうに低く鳴った。


「なるほどーーまぁ、いいだろう。汝の言うとおり何かをしてみよう」


「出来ないんじゃ?」


 これは彩映だ。彼女にニコリと老人は笑う。ただその顔は幾分曇っているかよように見えた。気は進まないのだろう。


「与える事は出来ない。ただ、元々あるものを延ばすことは不可能ではない」


「月清!!」


 軽い身体か俺に抱き着き飛び跳ねた。ーーただ俺は素直に喜ぶなんて出来なかった。


「良かったねぇ」


「何か、裏が?」


「細く長く。延命にしか過ぎない。病にかかれば風邪でも死ぬ」


 挑むような琥珀に俺は息を呑んでいた。だが、そんな脅しに負けるつもりはない。引くつもりなんて無い。生きられるのなら。成長して死ねるなら本望だーー足掻けるだけ足掻いてやる。


 俺は口元を歪めた。


「上等。やってやるよ」


「ほんとうに、素直に受け入れないのは、長く生き過ぎでその心がガキなのか。汝はーーまぁ、良いわ。面白い」


 少しだけ呆れたように、そう言うと老人は笑ってみせた。





 ーー夢を見ていた。いつも見る夢だ。『あの村』小高い丘の上。見上げると何処までも蒼穹が広がっていて。幸せな世界。


「ほんとに甘いなぁ。風雅は」


 クスクスと笑いながら凜が隣に座っていた。もう彼女が亡くなってどれぐらいになるだろうか。結婚した当初のまま。美しい彼女が座っている。


 こうして夢でしかもう会うことは出来ない彼女。


「仕方ない。元々は俺の血だしーー」


「延ばすのは良いけど、補強に自分の命まで混ぜることないーーおかげで」


 俺は肩を竦めた。実際の所。ああして、怒鳴り込んできたのは過去何人も居る。黙って死んでいったものもいたが、月清のように生きることを選んだものにはああして、命を伸ばしていた。


 俺の命を補強として使いながら。きっと一族以外には使えないだろう。凛にさえも使えなかったのだから。


「俺の命はあの身体によく馴染む。流石、といったところだなーーま、俺の事は構わないだろう。長すぎる命だし」


「ったく」


 ため息一つ。


「俺はよく生きたと思うが?」


  そう言う無茶をしておいて自身の死期が分からない俺ではなかった。眠りなど必要ない筈なのに、最近は眠ってばかりいる気がする。


 おそらく、それは。


「それは、風雅が決める事じゃないよ」


 ピシャリと言うと彼女は立ち上がって俺に手を伸ばした。そして笑う。艶やかに。


「帰ろうか? 皆ーー待ってる」


 俺は一瞬何を言われているのか理解できなかったが、すぐに悟った。しかし嫌ではない。むしろ幸せだと思った。


 滑らかな彼女の手をしっかり取るとゆっくり立ち上がる。


「いこう?」


「ああ」


 そう言うと、俺達は歩き始めていた。


 そう。


 出会った頃と同じように歩き始めていた。


あと一個ぐらい外伝あるけど……どうしようかな?

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