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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第三十章 新たな戦いへ
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第五部 ウーベイとツーハの尾行大作戦

 午後。ついに待っていたこの時が来た。ライトさんと、買い物に行く、2人きりで!これって実質デートですよね?とはいえ、あの日手を握られた以外なんともないから、実感ないけれど。本当にライトさん私のこと好きなんだろうか?でも、誘ったのはライトさんの方だ。今日確かめればいい。私は身だしなみを整えて、荷物をチェックし、自分の部屋を出た。


 「よし、2人が外に出たのでございまーす」

「びこうする」

一方、僕たち、ウーベイとツーハさんは、物陰から2人の初デートを見守っていた。姉さんのことだから、ドジで何かやらかして台無しにしてしまうかもしれない。だから、しっかり見守っておかなければ!僕たちは狐の国の都会の都会にあるショッピングモールというものに行くらしい。僕はツーハさんをおんぶしてあげたかったが、あいにくこの足では無理だ。頑張ってもらうことにした。でも、姉さんとライトさんの歩く速さはかなり早く、追いつくだけでも精一杯だった。そして、休憩を入れて僅か2時間程でついてしまった。ツーハさんはすでにぐったりしているが、大丈夫だろうか。僕たちは話しながらショッピングモールに入ろうとしている2人を見て、慌てて中へ入った。中に入ると、空調は整えられ、天井は高く、横にも縦にも長い空間が広がっていて面食らった。ツーハさんが『おいしいポップコーン』というのぼりを見てよだれを垂らしていたが、今回の目的はそこではない。僕たちは姉さんとライトさんを見失ってしまわないように気をつけて尾行しながら、通路の店に目を向けた。商店街とは違って、店が壁一枚で分けられており、手間の壁はなく普通に入っていける。ライトさんはある服屋で足を止めた。

「ここで俺の親戚が店長やってるんだ」

「そ、そうなんですか。服、見せてもらいましょう」

姉さんは明らかに緊張している。手前側の上部は壁があり、『ミトの服屋』と言う言葉が印字されていた。あと、店の前にある黒板には『服、小物販売中』と書いてあり、多分女性の店長さんだ。

「ミトさーん!今います?」

すると、すぐさま誰かが来た。

「あらー。ライトちゃんじゃない。大きくなったのね。こちらは彼女さん?中々いい男になってるんだからおばさんびっくりだよ」

「ミトさん、お久しぶりです。おすすめありますか?…できれば2000円以内で」

「ふふ。いいわ、戦士になったそうだけど、お給料はそんなに多くはないだろうし。でも、身内だからちょっと割引してあげる」

こんな大きな建物の中でも、こう言った温かいやりとりはあるのか。そして、姉さん、さっきから止まってるけど大丈夫なのかな?姉さんはライトさんに呼びかけられてはっとしたように動き出した。ライトさん、早速姉さんを親戚に紹介するなんていいことしてくれるじゃないか。僕は少し場所を移そうと思ったが、ツーハさんが寝ているのに気づいた。結局、フィッティングルームというよくわからないところに入り、一旦ツーハさんが起きるのを待った。すると、誰かの足音が近づいてきたのでツーハさんを思い切り叩き、一瞬だけ僕を乗せて飛んでもらい、なんとかフィッティングルームから脱出した。見ると、姉さんが入っていくところだった。危ない危ない。姉さんに見つかったら一巻の終わりだ。そして、しばらくして出てきた姉さんを見て、僕は立ち上がって駆け寄りそうになり、ツーハさんに裾を掴まれた。姉さんは明るい空色のワンピースを着ていた。なるほど、フィッティングルームは試着室のことだったのか。今度はライトさんが止まっていた。なんか似てるな、この2人。ライトさんは3000円、値引きしても2500円だったのに迷わず財布を取り出していた。そのあと、2人が仲良く服屋を出ていくのを見て、ツーハさんが僕の裾を引っ張った。

「ツーハ、びこうはいらんと思う」

「…そうですね、では!」

「楽しむぞ、ショッピングモール!」

僕たちは最寄りのアイス屋に駆け込み、僕はチョコミント、ツーハさんはキャラメルを頼んだ。そして、それを食べた途端、後ろめたさが吹き飛んだ。アイスは一つ500円と高かったけれど、僕たちは僕の財布が持つ限り買い食いをした。そして、ツーハさんの口周りについている汚れを拭いて証拠隠滅し、帰ろうとした時姉さんとライトさんが手を繋いで歩いていて慌てて隠れた。ライトさんはこちらを振り向くと、こう言った。

「そこにいるんだろ?ツーハ、ウーベイ。別に怒らないから、早く出てこい。僕たちは仕方なく素直に物陰から出た。まさか、バレていたとは。

「い、いたんですか?ウーベイ」

「…姉さんが心配だったのでございまーす」

「ツーハ…。留守番しとけって言っただろ…」

「うっ」

「まあいい。一緒に帰ろう。みんな心配してるだろうし」

「はあい」

その後、晩御飯を食べられなかった僕たちはそれぞれ叱られ、結局何も得たものはなかった。でも、あのアイスは美味しかった。あんなばあちゃんが作る饅頭よりもずっと!

ここで『運命の始まり』は終わり、次の『光と闇』に続きます。お間違えのないよう、ご注意下さい。

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