表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォニックス 運命の始まり(年明けより大幅改稿予定)  作者: ことこん
第三十章 新たな戦いへ
149/150

第四部 意見交換

 翌日。ツーハとシンは一応仲直りをし、ツーハはプリンを美味しそうに食べていた。そういえば、今日はウルベフに行って光狐と闇狐のことを相談するつもりだ。フウワの忠告はしっかり聞いていた。だけど、ウルベフの方針も知っておいた方が判断材料になる。シンはぶつぶつ文句を言いながらも朝食を食べ終わると俺たちを瞬間移動させ、ウルベフの本拠地へと連れて行ってくれた。警備をしていたレイさんに案内してもらい、ハクムさんの部屋に行った。エントが憧れているらしいが、未だに良さがわからない。いや、いい人そうだけどさ。ハクムさんは俺たちを歓迎してくれた。

「エヴェルとムルルが世話になった。ムルルも一緒にいて欲しかったが、残念ながら今日は勉強中でな。しばらく学校に行っていなかった分、追いつくのが大変らしい。2人増えたようだな。賑やかなのはいいが、彼らはまだ子供だ。無理はさせるな」

「誰だ。子供扱いなんてされたくないし、別に俺は1人でも戦える。それよりも、今日は戦争の件を話しに来たんだ。草狼のチビのことなんて興味もない。さっさとお前らの方針を教えろ。これ以上余計な話をするんなら帰るぞ」

なんでこんな人にそんなことを言えるんだか。少しヒヤリとしたが、ハクムさんは気にも留めていないようで、表情を崩さず俺たちを見ていた。あー、びっくりした。交渉の場では、いくら遠くても絶対にシンは連れて行かないようにしよう。

「そういえば自己紹介がまだだったな。俺はウルベフ団長の闇狼、必勝の剣士ことハクムだ。よろしく」

「…シンだ。訳あってお辞儀でも帽子は脱げん。だが、共闘してくれるのならよろしく」

どこまでひねくれてるんだよ。いい加減礼儀というものを覚えてほしい。

「早速俺たちの方針についてだが、今回はあくまで協力。幹部レベルまでは手を出さない。俺たちも他国の事情に構っていられる程暇ではないのでな。申し訳ないが、俺たちが協力できるのはそこまでだ。だが、無理はするな。ブラックスの時のような奇跡は起こらないと思っておけ。下手に手を出せば、それこそ全滅だぞ」

黙りこくる俺たちに対して、シンとソウマは全く変わりなくハクムさんを見据えていた。シンはそうだろうとわかっていたけれど、ソウマはどうしてなのだろう。

「今日はここで解散としよう。またな、シン」

シンは少し不満げだったが、何か言うわけでもなく、静かに団長室を出て行った。俺たちもそれに続くと、今日は会えないと思っていた2人がいた。

「あ、フォニックスのみんなとツーハちゃんと来てくれた知らない人」

「こんにちは。久しぶりね」

「ムルル君にアイナさんやな。こんにちは」

「知らない人とはなんだ。シンだ。あと、行ってやったわけではなく俺の住処がめちゃくちゃにされたから行っただけだ。勘違いするな」

「今日はどうしたん?アイナさんにお勉強教えてもらっとったん?」

「そうだよ。みんな変わってなくてよかった。またね。僕今からルルさんに算数を教えてもらいにいくから」

「私もこれで。フウワちゃん、またライブ来てねっ!」

そして、俺たちはシンの瞬間移動で戻ってきた。

「なんだ、あの早熟坊とあざと女は」

「ムルルとアイナな。人を変なあだ名で呼ぶな。あの2人がどうかしたのか?」

「別に深い意味はないんだが、ムルルとか言う奴は本当にあの年齢なのか?しかも、なんか裏がありげな雰囲気だったし」

「あいつの兄がさっきのハクムさんとブラックスのボスのエヴェルな。だから、色々思うところがあるんじゃないのか?ほっといてやれよ」

「本当にそれだけなのか?それにしては俺たちを見る目に妙な光があった気がするんだが。あと、アイナとかいうやつは絶対何か隠してる。あそこ、本当に信頼できる奴らで構成されてるのか?」

「別にいいじゃんか。会う人全員疑ってても自分が疲れるだけだぞ?お前がどう思うかは別として、みんな一生懸命生きてるんだ。きっとあそこは大丈夫さ。それよりも、戦争の件、お前はどう思う?俺たちとしては、あまり関わり過ぎたくないってのはある。それだけに労力使えるわけではないからな。変に動いて足手纏いになるのも申し訳ないしな。お前からしてみれば自分で解決したいって思うことかもしれないけど、俺たちはあくまで下っ端処置。それだけのつもりだ。シン。お前の気持ちは、よくわかる。でも、無茶ばかりしていられない。どうしても行きたいのなら、行ってもいい。でも、俺たちは責任を負いきれない。わかってくれ」

「ばーか。子供じゃないんだ。そんなことわかってるよ。俺の目的は復讐なんかじゃない。ただ、もう戦争はまっぴらだって思ってるだけだ。この戦争が終わるのなら、それでいい。俺のこの紫の目が差別対象になってることなんて、俺からしてみればそんなに大事な問題じゃない。だからライト、これだけは絶対に守れ。最後までこの件につき合え」

「ああ」

それは、シンと初めてしっかり会話できた気がした午前だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ