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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第二十九章 不思議な力
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第五部 イネイの恋路

 はあ。私は一つ、ため息をついた。それは宿題をしていたツーハさんにも聞こえていたようで、顔を覗き込んできた。

「どしたの?おなやみ?」

「…まあ、はい。ツーハさんは宿題をしていてください」

私の悩みは、ライトさんだ。ウーベイが余計な茶々を入れたせいで面倒なことになっている。そりゃあ、かっこいいし、優しいし。でも、多分ライトさんはもっといい人を選ぶんだろうな。器用で綺麗な人を。だって、ライトさんのお母様は写真で見ても美しいから、そうなると思う。ああ、もう。こんなことで悩んでいたくないのに。ふと、郵便受けを見に行った。すると、チラシが入っていた。依頼の手紙以外の郵便物なんて珍しい。そこには、『女性のお悩み、ご相談ください。愛神、シオン』と書かれており、驚いた。あのシオン様が、こんなことしていらっしゃるんだな。日付を見ると…今日だ。私は勢いに任せてドアを開けて大声を出した。

「コウさん!ツーハさんをよろしくお願いします!私は出かけますので!」

「あ、わかりました。って、え?」

私はカバンを掴むと、会場へ走って行った。会場は狐の国の宮殿近くの街で、距離はあったものの、あっという間についた。しかし、人はおらず、間違えたかと不安になったが、さっきのチラシが貼ってあり、私は中へ入って行った。強い妖気を感じる方へと進み、やがて大きなドアの前で立ち止まった。チラシが貼ってあることを確認し、鍵がかかっていなかったドアを開けると、1人用のソファが向かい合って2つあり、奥の方に彼女はいた。

「恋に悩むあなた。いらっしゃい。私は愛神のシオン。待っていたわ」

「えっ、あの、なんで」

初めて見た彼女は私でも見惚れてしまいそうなくらいに美しく、声がうまく出せなかった。そんな私を見てシオン様は妖艶に微笑んだ。

「あら。かしこまらなくてもいいのよ。私のことも様付じゃなくってもいいし。私の特殊能力は、”縁結び“。あなたのいる所には2人いたから、どっちかが来るかなあって。私の勘は絶対に当たるの。この特殊能力のおかげで、ここまで登り詰められたのもあるしね。早速行くわ。あなたが好きなのは雷狐のライトでしょう?」

「な、なんでわかったんですか?」

シオンさんの特殊能力だってわかっていても、思わず言ってしまった。

「ふふ。天然で可愛らしいわね。ライト君があなたをどう思っているかは伏せておくけれど、大事なのは勇気よ。もう1人の子は、失敗はしたけれど告っていたわ。あの2人も向こうが理性で止めているだけなんだろうけど。まあそれはいいとして、あなたが本気なら、向こうも応えてくれるわよ」

「そ、そうは言っても、ライトさん、私なんかを受け入れてくれますかね…?」

「ダメじゃない、最初から諦めてたら。もしダメだったとしても、向こうは絶対あなたのことを意識するわ。で、お互いの親密度が上がった時に改めて言ってみればいいのよ」

「でも、ライトさんと一言も話さなくなってしまったら、意味ないんじゃ…」

「あなたの中のライト君は、どんな感じなの?」

「明るくて、かっこよくて、優しくて、太陽みたいな人です」

「しっかり好意があるなら、それを届けるべきよ。先延ばしにし続けて後になって後悔するなんて、もっと嫌でしょ?しなかった後悔より、した後悔の方が、よっぽどいいものよ。懐かしいわねえ。同じようにここに来て一緒に話した子、トメちゃん、ライト君のお母さんにもこの言葉言ったのよ」

私は頭が追いつかなかった。ライトさんのお母様が同じことを…。私は立ち上がった。シオンさんは微笑みながら私を見ていた。

「ありがとう、ございました!」

私はまた走ってフォニックスの本拠地に向かった。ドアを開けると、宿題をし終わってテレビを見ているツーハさん、本を読んでいるコウさんがいた。

「ただいま。ツーハさん、宿題の答え合わせしますね」

ツーハさんはちょっと嫌そうな顔をしていた。でも、私はツーハさんの宿題と答えを出し、答え合わせをした。結局、何箇所か間違いが発覚し、ツーハさんは渋々直しをしていた。私は1人になると、自分の部屋に向かった。シオンさんはああ言っていたけれど、どうやって言えばいいんだろう?今三月だし。花とか、プレゼントとかを渡すのかな?それとも、どこかに誘うのかな?私は図書室へ行き、恋愛小説を読んでみた。でも、冒頭部分でフォニックスたちが帰ってきた。そして、みんなが寝た頃。私は勇気を出してライトさんの部屋のドアをノックし、

「どうぞ」

と聞こえたので入ると、まだ寝ておらず、外を眺めていた。私は思い切ってライトさんに言った。

「ライトさん、ずっと好きでした」

声が震えてしまったけど、ちゃんと聞こえたようだ。

「俺ってバカだな。普通告白は男からするべきだろうに」

「へっ?」

「俺もだぜ、イネイ」

ライトさんは私の手を握り、ニッと笑った。成功…ってことなの?えっーと、あの、その…。私はクラっとそこに倒れてしまった。

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