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フォニックス 運命の始まり(年明けより大幅改稿予定)  作者: ことこん
第二十八章 決着へ
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第二部 エヴェルの本気

 思いっきり氷が割れる音で、俺たちは目が覚めた。俺はあくびをすると、辺りを見回し、立ち上がった。

「エント、ムルル、大丈夫か?」

「はいほうふは」

エントはあくびしながら答えたので、変な声になった。多分、『大丈夫だ』と言っているのだろう。

「大丈夫だよ。アインさん、起こしてくれたのかな?偶然かもしれないけど」

「まあ、どっちにしろ、結構寝れたみたいだな」

なんだか的外れな返答だ。エント、まだ寝ぼけているのだろうか。

「エント!目を覚ませ!」

俺はエントの肩を揺さぶった。

「やぁぁめぇろぉぉあぁにぃじゃぁぁ」

高速で揺らしすぎたのか、声が震えまくった。俺はエントの肩から手を離し、笑いを必死で堪えているムルルを見た。

「ごっ、ごめ…」

ムルルは吹き出し、大声で笑い始めた。エントはすっかり目が覚めたようで、笑っているムルルを不機嫌そうに見ていた。

「おい!起きたなら戦え!」

近くにいたフウワに怒鳴られ、俺たちは持ち場に戻った。


 ほぼ同時刻。まだ宮殿にいた僕は、フォニックスたちの戦っている声を聞いていた。なんだか、不安になった。すると、エントさんが変な声を出しているのを聞いてしまい、思わず吹き出してしまった。ギーヨ様はこちらを向いた。

「業務中に笑うとは、いい度胸ですね」

「す、すみません!思わず…」

「そんなに気になるんなら、行って来たらいいじゃないですか」

「分かりました!ありがとうございます!」

「え!さっきのは冗談です!」

引き止めようとするギーヨ様の声に聞こえないふりをして、僕はフォニックスたちが戦っている廃坑だった所に行った。近くまで来た時、ソウマさんが飛んできた。慌てて避け、声をかけようとしたが、ソウマさんは前だけ向いてまたエヴェルの方へ向かっていった。そこで、アインさんに話しかけようとしたが、考え事に夢中だった。僕がどうしようもなくなって立ち尽くしていると、見知らぬ少女がやって来た。

「誰?急に来たけど」

「ああ、僕は猫の国の王、ギーヨ様の側近を務めているキョウです。実は、なんだか嫌な予感がして、来てみたのですが…」

「失礼しました。ですが、本当にこの状況が覆されますかね?」

「でも、エヴェルは攻撃して彼らを退けていますが、他に妨害手段があったら、厄介だなと」

「ここにいても、邪魔をしなければ問題ないと思います。じゃあ」

その時、エヴェルはエントさんを影から出た黒い手で捕らえた。そして、助けようとしたソウマさんも捕らえ、2人を衝突させた。頭をぶつけた2人はくらくらしていた。ライトさんが後ろに回り込むと、エヴェルは影から手を再び出し、ライトさんに攻撃させなかった。やはり、最後の最後まで力を隠していたようだ。スインさんなどの人による遠距離攻撃もいなされ、あっという間に戦況を変えてしまった。僕は飛び出しそうになって、やめた。こういう時、果たして僕は戦ってもいいのだろうか。地位を考えれば、やめた方がいいけれど、かと言って彼らを見殺しにするのも…。僕が考えあぐねていると、少年がやって来た。確かムルルさんだっけ。

「王族さん。助けてくれようとしてるその気持ちはありがたいんだけど、これは多分王族が動いていいような問題じゃない。帰って」

僕は、なるべく振り返らないようにして、宮殿に帰ったのだった。


 僕は久しぶりに見る兄の本気に、敵わないことを実感し、悔しくなった。どうにかして、僕も攻撃できれば…。僕は辺りに転がっていたビンを見つけ、思いっきり兄に投げたが、自分の近くに落ちただけだった。もっと僕に力があればいいのに。やっぱり、攻撃は諦めて、防御に徹するべきだろうか。兄はどんどんみんなを倒していき、気づけば立っているのは僕とスインさん、アインさんだけだった。…いや、このままだと、終わってしまう。何か攻撃できそうなものは…。僕は刀が落ちているのに気がついた。ヒノガさんが使っていたやつだ。僕は使えるかもしてないと刀を持ち上げようとしたが、重すぎて先端は地面についたままだ。これでは攻撃にならない。でも、他に手段もないので、これを使うしかない。僕は刀を引きずってそっと兄の背後へ回った。兄は今にもアインさんを攻撃しようとしていた。僕は刀を回し、寝かせてシーソーみたいに真ん中に石を乗せてちょっと浮かし、刀を兄の足へ当てた。もちろん、ためらいはあった。でも、僕は、この戦いを、終わらせたいのだ。兄は不意打ちに驚くと共に、思ったより重症となったようで体勢を崩した。

「ムルル君!何しとるん!」

「スイン…さん」

スインさんは攻撃よりも僕の精神状態を気にしたらしい。

「ごめんな」

なんで謝るんだろう。

「お兄さんを攻撃するなんて、本当はしたくなかったやろ。早よ気づけばよかったな。ムルル君が、自分で手を下す前に」

確かに、僕の手は今、震えていた。やっぱり、隠せやしないか。スインさんは僕の手を包んだ。温かかった。

「ムルル君。ちょっと、休みな」

僕は言われた通り木陰に座った。

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