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フォニックス 運命の始まり(年明けより大幅改稿予定)  作者: ことこん
第二十七章 相手は真の味方に
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プロローグ 心変わり

 ソウマはさらに傷を負った。シンは、心底驚いたようで、動きを止めていた。目は隠れているが、おそらくめいいっぱい開いているだろう。だって、私がそうだから。しかし、ソウマは倒れずにエヴェルを見た。エヴェルは忌々しそうにチッと舌打ちした。ソウマは微動だにせず、後ろにいるシンを見て『大丈夫?』と優しく声をかけることもせず、ただじっとエヴェルを見ていた。

「任せたよ、僕はもう、限界みたいだ」

ソウマはくらっと横に倒れた。その時、シンの妖気が変わった。シンはコウモリの羽を背中から出し、空高く飛び上がった。その風圧で帽子が落ち、目が見えた。紫の目だった。でも、そんなことはどうでもいいくらいに、美しい顔だった。ミーハーなやつなら一目惚れしてしまいそうなくらいに。今は、その顔を歪ませ、エヴェルを睨んでいた。エヴェルは真剣な顔になり、自分の影から出る黒い手をシンに伸ばしたが、シンの影から出たこれまた黒い手に阻まれた。エヴェルの手が自分の影に戻るより先に、シンの手は戻って今度は黒い塊が出、エヴェルに向かって降り注いだ。シンはエヴェルは技を受け止めている間に自分の黒い手を自分の手に纏わせ、エヴェルを引っ掻いた。エヴェルはシンのあまりの強さに驚いているようだ。いや、違う気がする。もちろんシンは元々強いけれど、ソウマが自分のせいでやられたという強い後悔とエヴェルに対する怒りがシンをさらに強くしたのだと思う。結局、大切なのは気持ちなのだと、ピンチを乗り越えてきた度に感じる。ウーベイが感情の高ぶりが妖気を高めるとかなんとか言っていたが、まさにその通りだ。シンはみんなの影や物陰に入って姿を眩ましたり、空を自由自在に飛んだりして立体的に戦っている。こんなに暗いのに、あんなに素早く動けるのは、超音波のなせる技なのだろうか。でも、ずっと突っ立っているわけにはいかない。まずはソウマを助けなければ。私はソウマの近くに2人がいない事を確認してソウマの所に歩み寄り、安全な所に寝かせた。遠くから見ていると、みんなできることをしている。ムルルはダメージを軽減し、アインは氷で陰をつくり、スインはそれを超音波が使えるシンだけがわかるように隠している。ライトは走り回ってエヴェルを撹乱し、エントはシンの連続攻撃の合間合間に大攻撃を使っている。私は、何ができるのだろうか。テールハンドも使えないのに、サポートなんてできるだろうか。私はテールハンドを出して眺めた。いくら眺めても手の形をした先端はない。ソウマのグラスヒールのおかげで1週間もしたら治るだろうが、今使いたい。いや、待てよ。延々と伸びる尻尾はまだ残っている。

「スイン!私の尻尾を隠してくれ!」

私はスインに支障がないように一面に尻尾を伸ばした。スインは私ごと透明にしてくれた。伸びる長さにも限度はあるが、2本なので全体を埋めることができた。一見、シンが飛ぶのに邪魔になりそうだが、そうではない。ごちゃごちゃした透明の尻尾を潜り抜けて自在に移動できるのはシンしかいない。シンは私の意図を読み取ったようで、エヴェルを撹乱し、ダメージを与えていった。エヴェルは、ひたすら攻撃を受け続けているが、何か切り札はあるのだろうか。躍起になったりはしていない。そこで、私はライトたちに離れるように言って、シンを信じてやってみることにした。私は力を尻尾に込めて一気にエヴェルに寄せて縛り上げた。シンは見事に避け、技を溜め始めた。エヴェルに抵抗する様子はなかった。シンは全力と思われる一撃を、迷わずエヴェルにぶつけた。


 視界が開けると、エヴェルはまだ立っていた。恐ろしいほどの持久力だ。よくみると、エヴェルは紫の炎を出していた。

「仕方ない、か。なるべく使いたくはなかったが、やられては元も子もない。使うしかないか、炎技」

エヴェルはここ全体を燃やした。メラメラと燃え上がる住宅を見ていると、2度と思い出したくないようなあの日の記憶が蘇って来そうだった。シンはその光景を見て余程ショックだったのか立ち尽くしていた。エヴェルは不敵な笑みを浮かべていた。しかし、急に雨が降り始めた。今日は晴れるはずだったのに。誰かが歩いてくる音がした。足音からして、複数人だ。振り返ると、レイナが雨を降らせていて、後ろにはロスト団のメンバーが勢揃いしていた。

「雨、欲しかったでしょ?」

レイナは得意気に微笑んだ。

「ま、マジでやるの?みんな?」

アルガは無理矢理連れてこられたようだった。

「さ、もらった借りを返しに行きましょう」

チーナはエヴェルのような笑みを浮かべていた。

「家族もいるし、手短に済ませたいのだが」

ヒノガは不満そうだった。

「そんなことは言わずに、頑張りましょうよ」

ナノガは2人を慰めていた。シンは謎の集団に警戒していたが、何か言うようでもなかったので、問題ないのだろう。それにしても、わざわざ来てくれるなんて、なんだか嬉しい。

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