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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第二十六章 悪夢からの目覚め
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第三部 敵の仲間

 スインが放つ大量の水の弾丸は、もはやかわし切れる量ではなかった。テールハンドを回転させて弾いているものの、いつまでも続けられる気がしない。ライトやムルルのように言葉で目を覚まさせることはできないし、どうしようか。スインは見境なく技を使い続けているので、そのうち力尽きてしまうだろう。そして、もう、エヴェルを倒すとかそういう話をしてられないくらいに疲弊してしまうだろう。スインのことを1番知っているアインは、今疲れて眠っている。今まで、カリやハスは一度倒すことで止めた。しかし、スインに攻撃なんてできるはずがない。そんな中、エントがスインの方に突っ込んで行った。何か方法を見つけてようではなかったので、多分見てられなくて、じっとしていられなくて、駆け出したんだと思う。

「スイン!」

「標的ヲ確認、排除シマス」

スインの声はロボットのそれと全く変わらず、私の耳にやけに響いた。それでも、エントは止まらず、ぐんぐんスインとの距離を縮めていく。そして、エントはとうとうスインの目の前に来て、何かをスインに投げた。よく見ると、アインがいつもけている妖石だった。妖石はスインの顎にコツンと当たり、跳ね返ったところをスインが掴んだ。きっと、それにはアインの思いが入っている。スインは、驚いた目で妖石を見た。

「アイン?ナンデ、謝ルノ?別ニ、怒ッテナイのに」

語尾が戻った気がした。一体、どんな思いが入っているのだろう。

「アイン…アイン…私…何を、して…」

スインはふらふらとよろけ出し、もうすぐで倒れてしまわないのか不安だ。

「大丈夫。アイン、また、一緒にいて。また、2人で、いっ…」

スインは倒れた。でも、多分大丈夫だ。スインなら、きっとアインを思う気持ちで塗り替えられる。でも、スインが起きた途端に、ソウマが自然に起きた。でも、目の色は違い、感じる妖気や視線は刺々しく、全く別人な気がした。また、あの状態になってしまったのか。ソウマは強い眼差しでこちらを見たかと思うと、いきなり私を攻撃して来た。

「どういうことだよ、レイ!なんなんだよ、自分も攻撃できるようになったら、俺はもう用済みってことか?せっかく自分に価値をくれる人が現れたって、もう一度だけ信じてみようと思ったのに。急に攻撃して来て、逃げ出すなんてさ、本当にどういうことだよ!レイ、俺はもう、十分に理解した。俺はやっぱり人を信じられない。嘘つきで、利己的で。全部ぶっ壊してやるよ。この体を借りて、ようやくこの世界に戻って来れたんだ。全部壊して、全部やり直してやる。今みたいに腐った人間のいない理想郷を作り上げてやる。何年かかっても、やってやるさ。これが、俺の復讐だ」

私に話しかけて来たが、もちろん人違いだ。でも、なんだかやばい気がしたので、私はソウマを止めようと、テールハンドでぐるぐる巻きにした。ソウマの眉間にさらに皺がより、私のテールハンドを容赦なく切り捨てた。ソウマは散々あんなことを言っていたくせに、何処か寂しそうな顔をしていた。私はだんだん気の毒になって来て、近くに行こうとするも牽制されてしまう。

「来るな、汚い人間」

ちょっと嫌だったけれど、ぐっと堪えた。

「そうは言っても、お前も人間だろ?」

「聞き飽きたよ、その言葉。僕は人間なんかじゃない。普通に生きるだけでも面倒だ。僕は人間の体に入り込んだ浮遊体だ。だから、人間の汚さも、ずっと見て来た。もう、面倒なんだよ、追い回されて、気づいたら狭間の世界にいた。お前らなんかにはわからないさ。僕の気持ちなんて」

その時、ソウマの体がぴくりと動いた。

「何を、言って、いるんだ?俺の体は。気味が悪い。違う、僕は破壊なんてしたくない。だから、静まってよ。僕は、今」

うるさいうるさいと、小競り合いを延々とし続けていると、私はソウマの右頬を引っ叩いた。

「うるさい?ソウマはソウマだ!私たちのソウマの体返せ、ソウマ!ふざけたこと言ってんじゃねえよ!今戦闘中だぞ!」

しかし、ソウマの勢いは止まらず、視界が歪み始めた。一体、どういうことだ。自分が揺れているのかもしれないが、なぜかみんなも同じように景色に驚いているようで、やはり景色の方が揺れているようだった。世界の終わりとは、こんなものなのか?その時、どこからか声がした。

「やれやれ、もうみんな起きちゃったよ。だけど」

エヴェルだった。エヴェルはソウマのすぐ横に立った。

「とても心強い仲間が増えたことは、確かかもしれないねえ。僕が寝ている間、散々好き勝手にしてくれたじゃないか。今度は、本気で潰しに行くから。降参なんてしても、もう遅いよ」

一瞬で場の空気が変わった。


 やれやれ。研究は途中段階で終わりか。惜しいものだが、そういう約束なので仕方ない。しかし、今回の実験は想定以上の結果が出た。研究員たちは片付けに明け暮れていた。確実に、何かが動き出したのだった。

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