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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第二十四章 代わりに得たもの
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第三部 まだやることある!

 『ライトさーん、何かお忘れでは?』

「あっ!」

そういえば、まだ支部に捕えられている人を助けていない。すっかりやり切った気でいた。危ない危ない。

『今から道案内しますので、その通りに進んで頂けるとありがたいのでございます』

「私は、ソウマを病院に連れていきたいんだが…。5人で大丈夫そうか?」

「分かった。戦闘は少ないだろうし、気にせず行ってこい。ソウマをよろしくな」

「じゃあ、気をつけてな」

フウワは地図を片手に去っていった。その後、ウーベイの案内で支部に向かい、牢屋まで来たのだが。

「はあ?鍵もらってこなかったのか?散々話したのに?」

「ごめんって」

トルキが持っていたはずなのに、牢屋の鍵をもらってこなかった俺はエントに怒られていた。他4人は、エントと一緒にまくしたてることもせず、でも俺を擁護することもしない、傍観者の立ち位置にいた。エムルがいたら余裕だったけど、呼んだら呼んだで面倒なことになりそうだ。アインでも作れなくはないが、一個一個合鍵を作れるくらいの妖力はない。やっぱり、俺たちは強行突破がお似合いらしい。

「こうなりゃ、牢ぶち壊すぞ!捕まってる奴と両側から攻撃すれば壊せるだろ」

「俺たちって、結局真っ直ぐ突き進むしかないんだよな…」

「まあ、良さでもあるんやけどな」

「私が鍵作れたら良かったけど…」

「僕、攻撃技使えない…」

「アインは気にするな。ムルルは、中の奴をシールドで守ってくれ。破壊の時にぶっ倒したら、元も子もないからな」

「分かった。頑張るよ」

俺は、ちょうど近くの牢の奴に声をかけた。

「無事か?今助けるから、ちょっと待っててくれ!できればでいいから、内側から攻撃してくれるとありがたい!」

すると、牢の中から顔を見せたのは誰かに似ている少女だった。

「お前、誰かに似ているような…」

「ん?フェルク兄ちゃんに似てるねって言われることはあるけど…」

「じゃあ俺の従兄弟じゃねえか!あいつ妹いたのか!」

「うん。私は、フェルク兄ちゃんが失踪してから産まれたの」

「見かけによらず、しっかりしてるな」

「そうかな?」

「とにかく、今出すからな」

牢は案外簡単に壊れた。母と実家は仲が悪かったから、こいつの存在を知らなかった。その後も、一人一人解放していき、気づいたらもう真っ暗だった。来た時は昼だったのに。その後、てくてく家に帰って行くと、まだ7時でほっとした。ツーハはすでに風呂に入ったようで、パジャマ姿でテレビを見ていた。

「ソウマは?」

「あー、ラテラフさんがめちゃくちゃ怒ってさ、『いい加減に自分も大事にしろ。死ぬ気か』って言われてたけど、ソウマは『誰かのために死ねるなら本望だよ』とか言って余計怒らせて喧嘩になりかけたけど、結局きちっと診てくれたよ。今、ようやく風呂に入ってる。お前らも入ってきたらどうだ?」

「ウーベイとイネイが見当たらないんだが」

「2人も、今風呂に入ってたな。あ、私とツーハも入ったぞ」

ここの風呂は、一般家庭とは違い、もともと宿舎だったので、男湯と女湯がきちんとある。だけど、コウは大変そうだ。俺たちは、風呂に入ることにした。


 全員行ったことを確認して、フウワはため息ををついた。すると、ツーハがずいっと寄ってきた。

「さっきのため息なに?こい?」

「おっお前、なんでそんなことを…」

「今日のアニメヒロインがしゅじんこうにこいするシーンあった」

「なんだよ、そういうことかよ!」

「ん?どうした?」

「コウはだまってろ!女の話だ!」

「いつそんな言葉を覚えた?」

「お母さんが言ってた」

「そうなのか…」

「誰なの?ライ兄?でも、ライ兄ぶん殴ってるから違うな。うーん…」

「語弊のある言い方をするな!」

「ごへい?五平もち?」

「もう、いい!」

なんで私は、こんな子供に振り回されているのだろう。その時、背後から、

「どうしたの?フウワさん」

とソウマの声が聞こえて、思わずビクンと肩を振るわせた。

「あっ。ごめん。話しかけ方が悪かったね」

「いや、気にするな。少し考え事をしていただけだ」

「僕も、コウの手伝いをしてくるよ」

「ツーハもやる!」

ツーハが少し振り返って、こちらに向かってニヤッと口角を上げた。いとも簡単に勘づかれてしまったようだ。全然ダメだ。私も、なんとなくコウの手伝いをしにいったが、コウとソウマの手際が良すぎて全然手伝いにならなかった。私は不器用な方なので、ジャガイモの芽が取れず四苦八苦していた。ソウマは、少し呆れながらも手伝いの手伝いをしてくれた。ダメだ。全然上手くいかない。私のジャガイモは芽を取ろうとして周りまで削ってしまった。家事ができない時点で、多分ソウマに呆れられている。これでも、自分は精一杯頑張った方なのだ。15分くらいかけて、ひどい種の抜き方のピーマンがあったりしたが。料理については、得意不得意があると考えるしかなかった。

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