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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第二十四章 代わりに得たもの
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第二部 任されて

 ライトはトルキを蹴り、その勢いでトルキと一緒にだいぶ遠くまで来てしまった。トルキが耐え切っていたらまずいかと思ったが、トルキは倒れたまま穏やかな笑みを見せていた。なぜ笑っているのだろうと不思議に思って顔を覗き込むと、トルキはスッと笑みを消して起き上がり、俺に頭を下げた。

「改めて、すまなかった。今更すぎるが、お前の父を殺してしまったことを謝りたい。しかし、俺には親というものがよくわからない。気持ちを汲みきれないかもしれないが、それだけはずっと悔いてきた。素晴らしい人だったのに、俺はエヴェルに逆らえなかった。ライト、お前に任せてもいいか。エヴェルを、絶対に倒してくれ。ムルルは悲しむかもしれないが、あいつは今かなり気が立っている。顔を合わせれば全力で襲ってくるだろう。あと、一つ助言しておく。あいつと目を合わせるな。特殊能力が消え失せる。俺に言えるのはここまでだ。一般的なルールはよくわからんが、人殺しは悪いことなのだろう?どうやら、俺は結局、外の世界を実際に見ることは出来なさそうだ」

「トルキ…。俺、お前のこと、少し勘違いしてた気がする。確かに、人殺しは悪いことだ。でも、罪を償えば、自由になれるはずだ。どれくらいかかるかわからないけどな。その時は、フォニックスに、入ってくれないか?」

「その言葉、感謝する。しかし、返事はやめておこう。その時のお前たちを見て、足手纏いになりそうであれば辞退させてもらう。最後に、二つ言わさせてくれ。元ブラックスメンバーはどうなった?」

「あいつらなら、捕まってるけど、いつかは外に出られると思うぞ?なんなら、俺が引っ張り出してきてもいいくらいだけどな。なんか、みんなお前みたいに外の世界をよく分かってなかったらしいし。悪気がないんなら、悪い奴でもないしな」

「そうか。だが、俺はしばらく出さないでくれ。色々反省したいからな。あと、ソウマとやらに謝っておいてくれ。散々、怪我させてしまったからな…」

「あいつの自己責任な所はあるけどな…。でも、一応言っておくよ」

「そろそろ、仲間を探しに行け。あまり俺の近くにいると、勘違いされてしまうぞ?」

「まさかそんなことはないと思うけど、仲間は探したいからそうするよ。またな、トルキ」

「仲間は大切にしろよ」

トルキが最後に見せた笑みは、なんの曇りもないものだった。こうなったら、何が何でもエヴェルを倒すしかない。ムルルも、殺すわけではないから協力してくれるはずだ。さっきまで戦っていた所に戻って行くと、墓が無事なことは確認できだが、みんなは見当たらなかった。とりあえず、妖気を感じる方向に歩いて行くことにした。最初に見つかったのは、アインだった。

「あっ。ライトさん。トルキは?」

「もう戦う意志はないよ。それより、みんなを探すのを手伝ってくれないか?」

「分かった。ムルル君は、私の近くにいたはずなんだけど…」

「妖気は感じないな。そういえば、ムルルの妖気ってどんなのだったっけ?」

その時、ムルルがひょっこり現れた。

「あ、ムルル。怪我はしてないか?」

「うん。エントさんとスインさんは、多分あっちの方だと思う」

俺たちは、ムルルが指差した方向に進んでいった。すると、エントとスインはどうするかで珍しく揉めていた。

「元いた場所に戻るべきだろ!そしたらみんなと合流できるかもしんねーじゃん!」

「いーや、ここで待つべきや。技でも打ち上げたら気づいてくれるやろ。すれ違いになったらどうすんねん」

「それは、スインが正解だったな」

タイミングを見計らって俺が出てくると、エントは急に真剣な顔になって、

「トルキはもう倒したのか?」

と聞いてきた。やっぱり、エントの中でトルキは敵なのだ。おそらくずっと、その考えは変わらない。なんだか、やるせない。

「ああ。後は、フウワとソウマか。ソウマが負傷してる予感しかないんだけど」

妖気を辿って行くと、ソウマが倒れていて、フウワが困り顔で膝枕しながら見ていた。

「フウワ、ソウマはどうしたんだ?」

「ああ。お前らを探しに行こうとしたら、ソウマがふらっと倒れてさ。多分、限界だったんだろ。一回寝てもこうなったってことは、だいぶダメージがあったんだろうよ」

フウワはため息をつき、ソウマを抱えて立ち上がった。ソウマは本当に気を失ったのだろう。でなければフウワのことだから俺の時みたいに叩き起こすだろう。ていうか、俺が頑張ってた時みんな寝てたのか?そんな疑問があったが、気にしないことにした。急に、ウーベイにもらったよくわからない通信機が鳴った。

『聞こえていますか?ウーベイでございまーす!ライトさん、ついにトルキを倒しましたね!おめでとうございます!全部聞いていたのでございまーす!』

「ええっ?トルキとの会話も?」

『はい!』

「ライト!お前、トルキと何話したんだ?」

フウワは俺の肩を掴み、ググッと睨んできた。なんだか、面倒なことになってしまった。

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