第二部 毒殺少女
俺たちは、地図を頼りに支部の前へと辿り着き、ウーベイの連絡を待った。
『聞こえてますかー?あと10秒で、セキュリティを解除するのでございます!1分以内に全て通り抜けてください!行きますよ?10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0!』
俺たちは勢いよく走り出し、見張りを素早く倒して10個の門を通り抜けた。ムルルが着いた瞬間、ガチャンと門が閉まった。かなりギリギリだったようだ。
「あ、危なかった。こんなのに挟まれたら僕は即死だよ…」
「ここは前、私とエムルが捕まっとった所やな。多分、相手も強くなっとるから気をつけた方が良さそうやな」
スインがそう言って先へ行こうとする時、後ろの閉まった門が破壊された。しかし、相手ではないようだ。
「さっき、僕の名前呼んでくれたの?」
「ただ言っただけやし。あと、門壊したらセキュリティが作動しやんの?」
「それが狙いなんだ。こっちに人を引き付けて、誰か1人が牢の鍵を開ければいいでしょ?そして、合鍵を作れるのはこの中で僕1人!そんじゃ、あとはよろしくね!」
かなりまずいことになった。無情にもセキュリティは作動し、数分で100人くらい集まった。支部にしては少ない気もするけれど、キシュウまでは行かなくてもそれこそミレイレベルの奴らが100人だ。1人倒すだけでも大変なのに。当然ながら、一斉に攻撃を仕掛けて来た。すると、もはやごちゃ混ぜの大混戦となった。だけど、これなら相手同士でも攻撃が当たり、体力を削ることができるかもしれない。もちろん、俺たちが攻撃を全てかわしきれればの話だが。ムルルのシールドを頼りに、攻撃しようとしたその時、ドオンと床が割れた。何かと思ったら、スインが相手を蹴った時勢い余っただけだった。確かに、ホワイトボードを壊した時も違和感を感じてたけど。俺はある事を閃いた。まずムルルのところに行き、できるかどうか確認する。次に、フウワのところに行き、テールハンドの性能の確認をし、相手のいる範囲全体に広がるように伸ばしてもらった。
「よし!ムルル!頼む!」
フウワ本体だけ、シールドがより一層強くなった。伸ばされたテールハンドに、俺は電流を思い切り流した。すると、相手は次々に感電していき、よく効いたものは気絶した。ムルルのシールドがあるみんなは感電しなかった。まだ耐えたものやそもそも電気技が効かない者はいたが、かなり数は減った。これでだいぶやりやすくなったはずだ。最も、俺の妖力はほとんど残っていない。あとは、みんなに任せるしかない。
「人を電線みたいに…。まあ、助かったからいいんだけどよ」
フウワはスタスタ歩いていき、みんなに加勢した。俺はエントの妖石をポケットからすっと奪い取った。
「うおっ!?」
「悪いな。ちょっと余裕がないんだ」
「別にいいけどよ…。後で返してくれよ?」
「ああ。今日中に絶対返すからな!」
「ん?別に今日中じゃなくてもいいぞ?」
どうやら、全然意味が伝わっていなかったようだ。
「つまり、お互い無事でいような、って事だ!」
「あ、ああ」
エントは勢いよく反対側に行った。何か嫌なことでも言っただろうか?まあ、妖石を奪ったのは事実なので、気にしないことにしよう。その時、どこからか笑い声がした。
「ダメじゃない!こんなに簡単にやられちゃあ!全くもう、使えないんだから!」
不機嫌だったのは小さい子供だった。しかし、相手達は怯えているようだ。
「も、申し訳ございません!奴らが想像以上に強くて…」
「もういいから。そういうの」
少女は相手全員を爪で引っ掻いた。すると、相手は全員パタリと倒れて行った。ムルルもまた、少し怯えているようだった。
「彼女は、ブラックスのNo.3、毒殺少女へルンだ。気をつけて。彼女の爪と牙には毒がある。当たったら即死だ」
つまり、へルンは仲間を殺したということだ。やはり、ブラックスのNo.3なだけあって、相当強そうだ。見た目はどこにでもいそうなワンピースの少女なのに。ちなみに、これは決して悪口ではない。
「あら。ムルル君。久しぶりね。残念だな、味方同士だったら、あなたは助かったのかもしれないのに。ま、味方でも役立たずは切り捨てるけど。さ、選びなよ、君たち。普通は2択だけど、君たち使えそうだから3択にしてあげる。じゃあ、行くね!私に殺されるか、この場で自分から死ぬか、ブラックスに入るか!もし、私に殺されたら10分くらい苦しむからおすすめしないな!まあ、正義感が捨てられないのなら自殺もありだろうけど、1番おすすめはやっぱりブラックスに入ること!いじめたりしないから大丈夫だよ!むしろ、私が可愛がってあげる!あ、そうそう。君たちがどの選択肢を選んでも、そこの透明さんは生け取りにしなきゃだから、安心しなよ!」
やっぱり、スインの居場所はバレてしまうようだ。それにしても、とんでもない3択だ。だけど、答えは決まっている。




