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フォニックス 運命の始まり(年明けより大幅改稿予定)  作者: ことこん
第二十一章 ブラックス対策部隊
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第四部 別の意思

 僕は必死で走り、ソウマさんのいる所に行った。

「大丈夫?ソウマさん。こんなに重かったら、僕じゃあとても持ち上げられないよ。他の人、呼ばないと…」

「結構重いんだね。こう言う木の幹って。骨折れてないといいんだけど」

「さらっとそんな怖いこと言わないでよ!どうしよう…。宮殿に戻れば、誰かいるかな?力のある人」

「早く戻った方がいいよ。2人の戦いに巻き込まれるといけないから」

「なるべく早く来てもらえるようにするから!」

僕は出来る限り速く走った。


 ムルル君が去り、2人の技の音が激しく聞こえた。ただそこにいることしか出来ず、ムルル君の帰りを待っていたが、誰かが近づいてくるのを妖気で感じた。

「誰?分かってるよ、こっちに近づいて来てるのは」

「バレたか。でも、今のあなたは動けやしない。どうせ一緒だし、気にすることは無いか。選ばせてあげる。今ここで降参して大人しく捕まるか、ボコボコにされて気絶してから捕まるか。その2択しかない。今すぐ選んで。じゃないと、後者を選んだことと一緒になるよ」

その時、自分の意思に何かが流れ込んでくる感覚がした。そして、馬鹿馬鹿しいという感情が、あるはずもないのに不思議と感じられた。まるで、自分が自分ではないみたいだ。今までもあった。レッドの時はもちろん、ギルド様と話していた時の記憶がほとんどない。どんどん流れ込んでくる意思に、抗うこともできず、身を委ねるしかなかった。…なんだ。なぜ、俺はこんなチビになって木の幹の下敷きになっているのだ。前方に敵。そして戦闘中の2人。大体状況は把握した。おおよそ、この体の人間は戦闘中に敵に嵌められて木の幹の下敷きになったのだろう。だが、こんな木をへし折ることなど造作もない。

「お前はこの俺、ソウマ様を舐めているのか?こんな木で俺様が止まるとでも思ったか!」

おれは足技で木の幹をへし折り、立ち上がった。なるほど、確かにチビだがずいぶんと打たれ強い体のようだ。まともに下敷きになって骨の一つも折れていない。いや、折れたが回復技でくっつけたのかもしれない。もしそんな強力な回復技が有れば欲しい所だが。それはともかく、前方の敵が不思議そうにこちらを見ていた。急に敵の性格がガラリと変わって驚かない奴はいないだろう。

「ふん!驚くことは無い。なんにせよ、お前が捕まるのには変わりはないからな」

「急に偉そうになって。フロストサイクロン」

「悪く無い技だ。だが」

俺は技を破壊した。

「俺に通用するレベルでは無いな」

敵が怯んだのを確認すると、強力な攻撃で倒した。次に、先ほどからずっと戦い続けている2人を見やった。勝負は五分五分と言った所だ。一見かなり残酷な攻撃を使っている岩狐が悪人に見えるが、どうやら妖気から感じるに悪人はもう1人の方らしい。

「加勢するぞ!岩狐!このまま戦い続けてもただ辺りを破壊するだけの無意味な戦いだ!」

「君、そんな感じだったけ?」

「そんなこと気にするな!じきに戻る!今この状況において関係のないことだ!口より手を動かせ!」

この体、案外身軽に動けていいかもしれない。おかげで、敵に確実にダメージを与えられる。

「2対1とは、ずいぶんと卑怯なことをするね。ちょっと失望したよ。キセキ」

「そんなこと言われても、こいつが勝手に入って来ただけだしねえ。それに…」

「ここまで来て負け惜しみか?なんとでも言うといい。勝負の世界にルールはない。だから、不利な状況というものが出来上がる。それは集団行動によるものだ。つまり、そんなことは日常茶飯事に起こるという訳だ。それで負けても、文句は言えんぞ?」

「自分のしていることを正当化しているだけじゃ、何も始まらないよ」

その刹那、キセキはトドメを刺した。俺の戦闘意識が薄れると共に、この体とは離れた。あれ、何が起こったのだろう。さっきまで上にあったはずの木の幹はへし折れ、相手2人は倒れている。そして、キセキさんが相手2人を縛り上げようと縄を取り出していた。立ちあがろうとしても、痛みで無理だった。記憶にないが、せっかくグラスヒールでくっつけた骨を無理して動かしてまた折れていた。またグラスヒールを発動させようにも、なぜか妖力が減っていてもう無理そうだ。少しして、ムルル君がフォニックスのみんなを連れてやって来て驚いていた。エント君がこちらに走って来たような気がするが疲れでだんだん眠くなって来て、うっかり眠ってしまった。


 「また無理をしたのか?ソウマは」

「うーん、そんなとこ」

ソウマさんはライトさんに運ばれていき、キセキさんは2人を縛り上げて連れて行った。

「まあ、優しさなんやろうけど。それを自己犠牲にしてしまうのが、ちょっとあれやけど」

フウワさんは、心配そうにライトさんが走って行った方を見つめていた。とりあえず、ここにいても仕方ないので、僕たちも帰ることになった。

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