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「TOKIの世界譚 」宇宙の神秘と日本神話な物語  作者: ごぼうかえる
五話

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アマテラスの謎3

 あれは僕だ。

 トケイはそう思った。ここは真っ白でなにもない空間。多数の神がここに集まっていた。その中にトケイもいた。


 当時のトケイは興味深そうに神々を上から見ているだけだった。


 「これは一体……」

 トケイは意識を保っていた。アヤが暴走し、トケイの存在をなくしてしまう前のこと。トケイはアヤの心を安定させるために弐の世界でアヤに作られた。まだその役割を果たしている時期。


 時代はプラズマが壊れた直後か。


 この白い空間はリカが、「伍の世界に帰してあげる」とメグに連れてこられた場所だ。


 この空間にアマテラス、スサノオ、ツクヨミの三貴神がおり、他にも特殊な能力を持つ芸術神や、歴史神ナオ、ワダツミのメグなどがいた。


 歴史神ナオが何やら説明をしている。


 「オモイカネ様が世界改変についてアマノミナカヌシ様と合意、改変システムを制作しました。芸術神達は人間の心に作用し、弐の世界からアマテラス様、ツクヨミ様、スサノオ様を消却しています。そして、わたくしと歴史神ヒメが人間と神からあなた達を完全に消します。これでよろしいですか?」


 「ええ、お願いします」

 アマテラスが静かにそう言った。日本の最高神は目に涙を浮かべ、小さく肩を震わせていた。


 「民がそれで争いをやめるのならば……」

 「あなたがいなくなってしまったら、世界はどうなってしまうのでしょうか」


 「しばらくは太陽の頭は出てこないでしょう。ですが、私の力を持った者を残してきました。そのうち自覚し、安定することと思います。こちらは私がいなくなり戦のない国へ、向こうは神のいない世界へいずれなり、戦はなくなります」


 「アマテラス様……」

 歴史神ナオはアマテラスを悲しげに見つめた。


 「ようやく、世界(ワールドシステム)に理解させることができました。想像しない世界と想像する世界にわけ、戦がなくなるか確かめる。


 記録をとり続けさせないと世界は動かないです。やっと、世界が改変に動きました。このまま観測し、双方に戦のない世界を目指します。


 神がいるから人間は戦争をする。神がいるから人間は善意から戦争をしない。これの均衡が保たれれば世界は双方、平和になります。


 アマノミナカヌシ様、オモイカネ様がこの条件を世界に提出し、世界が観測を始めました。これから、世界は新たな世界として歩き出します。変えてしまったことへの後悔はありますが、日本はその先駆けとなるでしょう」


 アマテラスは常に平和を求めていた。

 アマテラス自身が今の日本のあり方をよく思っていなかった。今回の戦はアマテラスを持ち上げた戦。アマテラスは戦を求めていない。


 だからアマテラスは人間達から存在を変えられる前に消えてしまおうと考えたのだった。


 そう、自分が消えるためには……。

 今の世界と分離した、想像しない世界、伍へ行くこと。


 アマノミナカヌシやオモイカネなどが会議を重ね、世界(ワールドシステム)に理解させ、世界を分断し産まれた壱と伍。その片方、伍の世界もアマテラスは守ると言った。


 「では、私達は行きます。私達がこの空間の結界を抜けたら……すぐに記憶消却を漏れなくおこなってください。おそらく、矛盾になり、世界も修正に動きますから」

 アマテラスはナオの頭を優しく撫でた。


 「アマテラス様……私は……」

 ナオがひき止めようとしたが口を閉ざした。ここまでやっておいて、今、ひとりだけ反対して場を困らせるのは良くないとナオは思った。


 「では。後のことは頼みます」

 アマテラスがそう言い、こちらに残る神々が頭を下げた。


 「私は……私達が作ったあちらの世界でも……皆を守ります」

 アマテラスが先に白い空間の先へと足を踏み出した。五芒星が広がり、白い空間の先が見えた。


 宇宙空間だった。


 アマテラスは電子数字となり宇宙空間に消えた。続いてスサノオ、ツクヨミも歩きだし、ツクヨミは振り向いてメグに一言だけ言葉を残した。


 「こちらの海原と想像を頼むね」

 「ツクヨミ様……必ず、こちらを守ると意識ではないところへ刻みます」

 メグの言葉に笑顔になったツクヨミはアマテラス同様に分解されて消えた。


 スサノオは一緒に来ていたタケミカヅチやニニギやクシナダヒメ、コノハナサクヤヒメ達に手を振り、消えた。


 富士の山をしっかり守りますと神々は頭を下げた。


 「……では……やります」

 ナオは三柱が消えた後、神々に偽の記憶を転写し、元々三柱はいないものとした。しかし、ナオはそこまで記憶を消却できなかった。だから、存在を消せず、『概念』といったぼやけた記憶を植え付けることになってしまう。


 タケミカヅチやオモイカネは記憶を持ったまま、こちらの世界である壱の観測の神となり、三柱を忘れてしまった者達を元の高天原へと帰した。


 トケイはこの場面を不思議そうに見ていた。トケイはこの世界にいる神を知らない。


 「一体何事なんだろう?」

 トケイはそうつぶやくと、再びウィングを広げて白い空間をあとにした。


 そんな昔の自分を見たトケイは驚いた。こんな記憶を自分は知らない。


 「僕は世界改変を遠くから見ていたんだ……」

 トケイは小さくつぶやいた。

 トケイは弐の世界の観測が主な仕事だった。だからここにも様子を見に来たのだろう。


 この「世界改変」がきっかけでナオは時神現代神の一柱だった「立花こばると」をこの世界から消している。トケイは意味を失い、ただ飛び回る何かとなってしまうのだ。この「世界改変」はナオのロストクロッカーシステムの先駆けとなった「記憶置換」のやり方だ。


 この時はうまくいった。

 協力してくれた神がナオだけではなかったからだ。だが、ロストクロッカーシステムの時はナオの独断だった。

 だからあんな事故が起きた(アヤ編)。


 「……僕は……ちゃんと見ていたんだ。だけど、世界改変でこの脅威を忘れてしまった。だから、ナオを止められなかったんだ」

 トケイは記憶を思い出した。


 次はまた、プラズマの記憶に戻ってきた。プラズマは泣いていたわけを忘れていた。ただ、戦はもう終わってほしかった。世界改変で時空が歪み始める。


 プラズマが辺りを見回していると、目の前に時空神ゲンが現れた。


 緑の髪にメガネをかけた羽織袴の青年。名を天光御柱屋 (てんこうみはしらや)幻ノ(げんのしん)と言う。

 プラズマよりも神力が上の神だ。


 ルナが問題を起こし、時空を歪ませた時に一度出てきている。


 「拙者は時空神でござる。紅雷王殿、そんなにお泣きなさるな。戦は終わるはずでござる」

 「ゲンさん……なぜ、時空が歪んだのですか?」

 「ああ、色々とあるみたいで……ところで、アマテラス様がどこに行かれたかご存知か?」

 ゲンさんにそう尋ねられたプラズマはすぐに答えた。


 「アマテラス様は実際にはいないはずでは? 本当にいらっしゃるのですか?」

 プラズマの返答にゲンさんは満足そうに頷いた。

 「それでよい……。少し時空は歪むが戦は終わる。安心しろ」

 プラズマにそう言ったゲンさんはプラズマの前から姿を消した。


 プラズマの瞳に未来が映る。平和に暮らす人々の顔。壊滅的な状態の大地から敵国だった国と手をとりあい、復興に熱心になる強い人々の様子、神社が再建され、歴史的建造物も修復された。食べ物も支給された。人々は立ち上がる。


 「……本当に終わる……。この悲惨な戦いが……」

 プラズマはよろけながら立ち上がった。


 「終わるのか……」

 時空の歪みから高天原北の主、冷林が現れた。元々、北はアマテラスが統治していたが、北は現地で作用する神が多いため、軍はほぼないに等しい。冷林は困っていた。


 「ああ、冷林……。なぜか時空が歪んでいる。あんたは……元の姿なのか今」

 プラズマは冷林を視界に入れ、そう言った。冷林は現在、人型をしている。


 安徳帝だ。


 冷林は久々の人の姿に目を見開いていた。ただ、声は持たないので言葉はない。


 「戦は終わるらしい。なんだか、急に日が傾いている。太陽がからっぽだ。なんだか変な感じだな」

 プラズマは沈む夕日を眺め、太陽がからっぽだと言った。からっぽだと思った理由はわからない。


 冷林も眉を寄せたまま頷いていた。


 「なんだか、大切なものを失くしたみたいだ。なんだろうか」

 プラズマの頬に風が当たる。

 冷林とプラズマはやたらと静かな地と太陽をただ、眺めていた。


 「世界改変」が完了した。


 これがプラズマが持つアマテラスの記憶である。

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