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「TOKIの世界譚 」宇宙の神秘と日本神話な物語  作者: ごぼうかえる
四話

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アマテラスを忘れる3

 カイリ国上空を飛行機が飛び、爆弾を落としてきた。

 「なんだ、あれは?」

 「飛行機だよ。僕はいやだよ、もう」

 更夜の言葉にトケイが答えた。


 「飛行機……」

 「戦争はそんな簡単には勝てないってことだよ」

 「ふむ。……まあ、天守閣を狙ったところで誰もいないがな」

 更夜達は最初の拠点である遊廓のような町の屋敷にいた。


 「ヒコウキとやらを落とすには……大砲だ。ここは高台。遠くを飛ぶヒコウキは撃墜できる」

 更夜は外に出て指揮をし始めた。


 「高さを合わせろ。今だ」

 兵が大砲に点火し、高台から直接飛行機を狙うという無謀な戦法に出る。

 球はやや上を弧を描いて飛び、飛行機にぶつかった。飛行機は炎を上げて下に墜落した。


 「今だ」

 更夜は容赦なく指示をする。二機目も翼に当たり、そのまま火を吹いて落下した。


 「待て……今だ」

 更夜の指示は的確で三機目も爆発して落ちた。カイリに飛んできていた飛行機は全部落下した。

 崖下に広がる町は燃えたが市民は崖上の天守閣下の城下町に避難していたため、爆撃にはあわなかった。


 「多少の犠牲は出たが……撃墜完了だな。便利な資源は敵からなくすのがいい。飛行機は便利だな。うちもほしいものだ。戦艦がソラマを攻撃しているが、効果が出てきたか。


 そろそろソラマは陥落。ヤマトは伏兵が町に入り込んで弱いものからカイリにひきいれている。強いものはソラマに復讐という名目でソラマを攻撃するカイリに入ってくる。不安なんだ。安定して強い国に行きたいだろう……」


 更夜は空を眺めていた。後ろにいたリカは蒼白のまま更夜に言う。


 「あの、更夜さん……これ、全部人間なんですよ……」

 「そうだ。これが人間だ」

 「そうじゃなくて……今、飛行機で飛んできた人達も人なんですよ……」

 「あれは憎しみを持って殺される覚悟で来ているんだ。あんなのに容赦していたら戦が終わらん」

 更夜は淡々と答えた。


 「……そんな、物みたいに……」

 「物だとは思っていない。ヤマトはぬるすぎる、ソラマは決断ができず曖昧に戦争放棄。指導者として失格だろう。……まるで……ヤマトは栄次、ソラマはプラズマだな。俺はそれを利用するんだ」


 「更夜さん、ひどいですよ……。私は耐えられません」

 リカは顔を手で覆った。


 「リカは部屋に戻っていていい。カイリはもうすぐ勝てる、ここから出られる」


 「やっぱり戦争は間違っています。私は更夜さんを止めます。ルナが怖がってる。その意味はわかるでしょう?」

 ルナは正義の味方になりたがっていたが、戦いを見ている内に怖くなり部屋の隅で頭を抱えて震えるようになってしまった。


 「……わかっている。だから……早く終わらせたいんだ」

 更夜はなんだかイラつきながらリカを睨んだ。


 「気持ちはわかるんですけど、これではクリアをしても誰も笑顔にはなりません」


 「綺麗事を並べているようだが、戦をどう終わらせるつもりだ? 策がないのなら戦うしかないだろう」


 「更夜さん、戦わない方法もあります! ヤマトもソラマも戦いたくなさそう。カイリが攻撃を止め、ソラマとヤマトの衝突を逆に止めるんですよ!」

 リカは更夜の肩を掴み揺すった。


 「俺はもう、勝つためにここまで来てしまった。そんなことをしたら市民から兵から反発がくる。戦を進めるしかない。カイリは優勢なんだ」


 「更夜さん、ルナを大切に思うなら……ルナに寄り添ってあげてください。ルナがかわいそうです。更夜さんは本当は優しくて、争いなんてできる人じゃなかったはずですよ!」

 リカは必死に更夜を揺する。


 「……俺は戦国の人間だ」


 「そうですけど、時代が違うじゃないですか! きっと……私にはわからないですが、きっと、戦国時代の子供達は今のルナのようにどうしようもない気持ちを抱え、恐怖と戦っていたのではないでしょうか……。子供の精神って……簡単に病むんですよ……。ルナは現代の子供です……。戦が身近にないんですよ!」


 リカは涙ながらに訴えた。


 「……わかっている。わかってはいるんだ。……戦を……やめる方向でうまく動いてみる。ゲームだが本当に人を殺している気分になる。ルナには厳しいよな。リカ、お前も病んでしまう」

 更夜はリカの肩に優しく手を置いた。


 「私、許せませんよ。時神を傷つけてこんなゲームをやらせている神が。なんのためにこんなこと……」


 「何か目的があるんだろうな。本当の人間の感情を使っているくらいなんだからな。言っていることは……『あなたが正しい』、リカ」


 更夜はリカの背中を押し、ルナの元へと向かった。

 

※※


 栄次はヤマト国の天守閣前で渋い顔をしていた。使者がカイリの戦艦の爆撃で行方がわからないとのことだった。


 「……栄次、ソラマに手紙、届いてないよね、これ」

 スズが少し不安げに栄次を仰いだ。


 「……届いてないと見て良い」

 「これからどうなるの?」

 こばるとが不安げに尋ねてきた。


 「できるならば、戦いたくはない。最善の策を出さねば」


 「ソラマにもう一回、使者を送る?」

 「やはりそうするしか……」

 こばるとの言葉に栄次は頷く。栄次がこばるととスズを連れてソラマに入るのは難しい。逆に二人を置いていくのも怖い。


 考えていると、遠くから見覚えのある二人が走ってきていた。


 「ん……?」

 栄次はこちらに手を振る二人組をよく見る。


 「プラズマとアヤだ!」

 「え? マジ!」

 スズが叫び、こばるとが喜びの声を上げた。

 こちらに走ってきているのはプラズマとアヤだった。


 「栄次だ! 栄次がいた! こばるととスズもいる!」

 プラズマの顔がいくらか明るくなった。


 「やっぱり、他の時神も犠牲に……スズはなぜ?」

 「スズは霊だよな、確かに」

 ヤマトの国境付近はかなり危なかったが、拠点は穏やかだ。


 「プラズマ、アヤ! やはりソラマを指揮していたのは……」


 「俺だったよ。逆にヤマトはあんただったのか。そんな気がしていたよ……。あ、ちゃんと手紙来たぞ。それで確信して来たんだよ」


 「……そうか。使いはもう生きてはいないだろう?」

 栄次の言葉にプラズマは目を伏せた。


 「俺達が使者を殺したわけじゃない。カイリの爆撃に運悪く当たった。嫌だったよ……」

 「ああ、そうだろうな」

 栄次は隣でアヤに抱きつくこばるとを見て複雑な気持ちになった。


 「まま! 早くここから出たいよ……」

 いままで地図ばかり見ていて感情をあまり出してこなかったこばるとはアヤに初めて感情を話した。

 彼も心を徐々に壊されてしまっているようだ。


 「無事で良かったわ……。そうね、出たいわよね……。プラズマ……神はすべてのものに加担しない、これが主よね?」


 「……? あ、ああ、そうだな」

 アヤは突然にプラズマに話を振った。


 「この人形のような人達に人間の過去の感情を貼り付けて、基本平和主義、傍観姿勢の私達時神に許可なく戦争ゲームをやらせるって、戦犯級の犯罪なんじゃないのかしら?」


 「そうだ。これは違法行為。だから……高天原に見つからないところでやっているんだろうな。俺達の存在を認知しているということは、この犯人はやはり『どこぞの神』だよ」


 「……目星はつかないの?」

 アヤの言葉にプラズマは眉を寄せた。


 「こないだ……望月家の子の事件でルナを使ってスサノオまでいった神達の中で同じようなことをした神がいたんだよ。ナオに乗っかった神だな。もしかしたら、あの神も世界改変時代の謎を解明したかったのかもしれない。だが、あの神だけではこんなことできないんだよ」


 「あの神?」

 アヤは首を傾げた。プラズマはアヤにだけに聞こえるように耳元で言う。


 「芸術神、ライだ。東のワイズ軍、絵括神(えくくりのかみ)ライ。他に仲間がいる可能性がある。アヤ、言わせるな、非常に失礼だ」


 「ご、ごめんなさい」


 「予想で犯神にするのは良くないと思う。このゲーム内にいるうちは会話が筒抜けだろうから、俺が無罪かもしれない神のことを話すのは組織的にまずい」

 「あ……ええ、そうよね。ごめんなさい」


 アヤはプラズマに頭を下げ、あやまった。


 「どうやってここから出る?」

 栄次はプラズマに小声で尋ねた。


 「……カイリと接触しようと思う」

 「ああ……そうか。やはりそう思うはずだ」

 「カイリは……更夜だ」

 プラズマの言葉に栄次もスズも頷いた。


 「だろうと思ったよ。こんな戦争だとわりきってやってくるのは更夜くらいしか思い付かないもん、私」

 「まあ、それは置いといて、まずはヤマトとソラマの和平が先だ。その後にカイリに接触する」


 プラズマは栄次を見る。栄次は真剣な顔で頷いた。


 「停戦だ。とりあえず」

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