リアルゲーム4
時間は少し巻き戻り、遊廓のような場所に入り込んでしまった更夜は謎の廓言葉を話す女達の声を聞きつつ、案内された部屋に入った。
料金は後払い。後々に設定された額を払う仕組みか。先ほど、払えなかった男が袋叩きにされ、借金を背負わされているところを見た。
「……さて、どうするか……」
更夜は連れ去られたリカ、ルナ、トケイを指名していたが、先に来たのは上部にいるであろう女だった。
更夜が身分の高い武家であると伝えていたため、上層の女が来たのか。
ここは武家がお忍びで来る場所であり、先程の話によると城と繋がっているらしいので、更夜はこれを利用することにした。
「お武家様、最初はわたくしでもよろしいでしょうか? あの娘達はまだ、作法が……」
女がそう言うので更夜はどう行くか瞬時に考え、態度をえらそうに変えた。
「作法、作法と何を言うか。固められた世界で生きるのはきつくないか? なあ、お前さんもそうなんじゃないか? かわいそうに」
「え、あの……」
女は少し戸惑っていた。
更夜は女に近づき、優しい顔を向ける。
「辛かったんじゃないのか? 顔が強ばっている。大丈夫か?」
「あの……私は……」
女が頬を赤らめて目線を外した。
更夜はこの女は愛されたことがないと気がつき、さらに優しい言葉を並べた。
「辛かった内容を話すのはよいことだ。何が辛かった? 言えないことか? 言えないならば無理に言わなくて良いが」
「あの、私……暴力的な武家様が少し苦手でして、その……お仕事ですから仕方ないのですが……」
「まあ、仕事だからな……。しかし、暴力的な武家とはあきれる。働いている男どもは止めないのか」
更夜はあくまで女より上という立場で話しつつ、女の気持ちに寄り添っていく。
「止めてくれません。相手様はお武家様なので、ここはお城からのお金で成り立っている部分もあるみたい」
「……男に知識がないな……」
更夜は女の髪を自然に触りながら耳元で小さくつぶやいた。
女は顔を赤らめて更夜の顔を見ている。
「違う違う。止めに入らん男らは経営の知識がないのだろうと言っている。こういう場面では女を助けなければな」
「……ええ、彼らは……ここで産まれた男児達ですから……」
女の発言で更夜は眉を少し寄せた。
……なるほど。ここしか知らない男達なわけか。
母親は遊女、父は知らない男で客。
知識がないのか、なるほど。
更夜はこの遊廓まがいの場所を丸々乗っ取ろうと考えた。
この女は武家の上層、もしくは殿と繋がったかもしれない。
……まずは上層の武家を取り込もうか。
久々の忍らしい活動に更夜は少しだけ悪そうに口角を上げた。
「ところで……」
更夜はさらに話を聞き出そうと声を上げた。ルナ達は心配だが、顔には出さずに余裕のある男を演じる。
「はい、では、舞いでも……」
「舞いの前に……一つ……私は殿のご命令で内部調査をしに来ている。見たところ、あなたは殿の相手をしたようだな?」
「え……そ、それは守秘義務で……」
女の顔色を見た更夜は確信した。
そしてこの女は先程、名簿に書いてあった最上級の位にいる女「お千代」であることもわかってしまった。
「気にするな……。お千代だろう? 殿から話は聞いている。たいそう酷い態度をとったそうじゃないか」
更夜はお千代を悪者にし、感情を揺さぶることにする。
「え、え……あの……あの時は……大変ご迷惑をおかけしました。も、申し訳ありません!」
お千代はやってしまったことを思い出し、更夜にひれ伏した。
そもそもお千代は何も失敗はしていないかもしれない。彼女が勝手に反応しただけだ。
「心配するな。咎めに来たわけではない。殿はやはり、ここの管理から雰囲気まで直すべきだとおっしゃっていた」
「……そうなのですか……」
「ああ、私は初めてこちらに派遣されてきたので、勝手がわからんが……内部調査だ。一日の仕事などを詳しく話せ」
「は、はい!」
更夜はお千代を責めることはなく、むしろ協力させることで緊張をといた。
人は誰かを悪く言うと仲間意識を生み、ついてくる。一度、相手を落とし、実は別のが原因だとした時、相手は自分ではなかった安堵感から仲間になろうとしてきたりする。
「改善点を見つけ、全員がうまく行くように努力してみようか」
更夜は偉そうにそう言った。




