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「TOKIの世界譚 」宇宙の神秘と日本神話な物語  作者: ごぼうかえる
TOKI の世界譚 プラズマ編

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302/320

夢の世界に戦火の日5

 月がやたらと大きい夜の海辺で戦いが起こっていた。

 「これで何体目だ……」

 刀を抜いた侍姿の青年、栄次がため息をつく。


 「また来た!」

 忍装束を着た幼い少女と黒髪の少年こばるとは走ってくる同じ顔の甲冑姿の男達を見据えていた。

 「スズ、大丈夫か?」

 「大丈夫! また手裏剣で……」

 忍装束の少女スズを栄次は気遣うが、スズはすぐに手裏剣を構えた。


 「僕はえーと、時間停止を!」

 こばるとが手から時神神力の鎖を出すと何も話さない同じ顔の甲冑姿の男性達に巻いた。

 「食らえ!」

 動きが鈍くなった男達にスズの手裏剣が刺さる。もう容赦がない。

 実は最初は相手を心配していた。


 しかし、毎回、倒されるとホログラムのように消える。人間ではないと気付き、この定期的に出てくる人形のようなものをどう対処するのかを現在は考えている。栄次が残りを仕留め、一息をついた。


 「なんなのだ……これは……」

 「ゲームみたい。僕がやってるゲームみたいだよ。プラズマが言ってたけど、昔のターン性バトルでRPGって言うんだってさ。絵もなんかレトロだし」

 戸惑う栄次にこばるとは答えた。


 「数歩歩いたらまた出てきたんだけど……」

 スズがあきれた声で前を指差す。

 同じ顔の甲冑姿の男が再び現れた。


 「なんだっけな、エンカウントって言うってプラズマが……」

 「……よくわからぬが……また倒すのが正しいのか?」

 栄次は冷や汗を拭いながら男達を再び倒した。何度も同じ顔の男達が同じ人数でやってくる。普通に気味が悪い。


 栄次、スズ、こばるとは最初、海辺に倒れていた。そこからあまり動くこともなく、同じ敵に何回も襲われている。

 すべて甲冑を着た若いとも年がいっているとも言えない男だ。


 「この人形のようなもの達がいない場所はないのか……」

 「町とか近くにないのかな? RPGなら町の中は襲われないよね」

 「よくわかんないけど、町を探してみる? 海辺なら漁師町とかありそう」

 こばるととスズがそう言ったので栄次はやはり歩いて探すしかないかとため息をついた。


 同じ顔の人形に何回も襲われつつ、海辺にあった村にたどり着いた。場所はそう遠くはない。浜辺を歩いていたらいきなり村に入った。人形に襲われなくなったが、浜辺に粗末な家が建っているだけの村だ。そこまで内外があるようには見えない。夜だが家々にはまだ灯りが灯っていた。


 「やっぱりなんか、ゲームっぽいんだよなあ……」

 こばるとがつぶやき、栄次は眉を寄せる。昨夜はプラズマにこばるとの風呂を頼み、なんだか疲れていた栄次は身支度をした後に布団で寝たはずだ。


 こばるとも同様、プラズマに寝かしつけられ、素直に寝たはず。

 スズはわからないが、海辺で寝ている状態ではなかったと思われる。


 「もし、この世界がまやかしならば、ここに俺達を入れた者がいるはずだ。誰か全くわからんが」

 「調べてみるしかないんじゃないかな……。他の時神さんも来てるかもしれないし、忍の諜報力で!」


 スズはどこか楽しそうに栄次に言ってきた。栄次は冷や冷やしていた。スズに何かあったら更夜に叱られる。

 単純に怖い。


 「しかし、俺以外、いるのが子供なのだ……。頭を抱える」

 栄次はため息をついた。

 とりあえず、村の中にいる人に話を聞いてみることにする。横を歩いていた年のいった男性に話しかけてみた。


 「失礼。ここは……どこなのでしょうか? 迷ってしまったようで」

 「ああ、ここは名もない漁村ですよ。このヤマトの城下町のために魚をとっています」

 年配の男性は笑顔で答えてくれたが、ヤマトとは何なのか。


 「ヤマト……大和?」

 「お侍さん、どっから来たんで? ヤマトの国を知らない? この辺はヤマトの国。他にカイリの国、ソラマの国が隣接してありますよ。知ってますでしょ?」

 「あ……いや……」

 栄次が素直に知らないと言おうとしたところ、スズが止めた。


 「あのさ、ヤマトの国の城下町って近いの? 漁村なら城まですぐじゃないとお魚腐っちゃうよね? あたし、この辺詳しくないんだ」


 「あー、そうかい。そうだよ、保存状態がね。ヤマトの城下町は近くに海があるんでこうやって魚を運べる。裏から山に入って、山を登れば城下町だ」


 「城下町ってさ、なにか手形とかいるの? 通行手形みたいなさ?」

 「そうだね、一応、ワシらは魚を運ぶんで手形を持ってるよ」

 年配の男性は笑顔でスズの質問に答えてくれた。こういう知ったかぶりな雰囲気で話をするのに慣れている感じが忍なんだなと栄次は感心した。


 「あたし、城下町に行ってみたいな! 手形はないんだけど……。おじちゃん、お魚運ぶの手伝うから城下町に入れないかな?」

 「城下町に入りたいのか? まあ、魚を運んでくれんならついてきてもいいぜ」

 「やった! ありがとう!」

 スズは栄次とこばるとを見てウィンクをした。


 「スズ、すげー……」

 こばるとは手がかりになりそうな城下町へ行くという話を簡単に達成したスズに驚きの声をもらした。


 「じゃ、明日朝は早いんで、近くの空き家で一晩過ごしな。宿はないんでね。布団も用意はできないんだが……」

 「かまわないよ、おじちゃん。ありがとう」

 スズは笑顔で手を振ると、素早く集合場所を聞き出した。


 「スズ……お前はやはり忍だな……。子供が疑われにくいことを知っている」

 「まーね。いっぱいやってきたからね」

 「すっげぇ! かっこよかった!」

 こばるとは興奮しながらスズを尊敬の目で見ていた。


 「こばるともできるって。簡単だよ」

 スズは照れながら軽く舌を出した。

 三人は城下町へ行けることになったので、今日は休むことにする。


 ただ夜中だが、三人は眠くない。

 現実の夜中とは違うようだ。

 とりあえず三人は不思議を抱えつつ、近くにあった粗末な空き家に入った。


 先程まで甲冑姿の人形に襲われていたことがやや気にはなる。この漁村は当たり前のように襲われていないが、あの甲冑姿の男達はなんのために三人を襲ってきたのだろうか。


 立ち位置が謎である。 

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