イリン村を出発した。
イリン村を出発する時、村長の娘たちが、自分たちも行きたいとごねて、騒ぎになった。
すると、他の子供たちも行きたいと言い出して、なかなか出発できなかった。
…ようやく落ち着いて、出発する頃には、なんだか疲れてしまっていた。
「すまないな。私のせいで」
村が見えなくなってから、ユリアさんが謝ってくれた。けれど、彼女のせいじゃない。村長の娘たちのせいだ。
「あの娘たちがわがまま言うから、他の子まで騒ぎ出したんだよ」
アルディクが怒っている。彼女たちはアルディクにも遠慮なく、耳を触ったりしていたから、やはり嫌だったらしい。
「まぁとにかく、一緒に来なかったんだし。もういいじゃない?」
カーチス村までは、あと二日。それまでに、アルディクの今後のことを聞いておきたい。
アルディクとユリアさんは、クーちゃんに餌をやっている。何でも食べるから、与え甲斐があるようだ。
「ねえ、アルは、私たちの村で暮らしたい?」
私が訊くと、ちょっと考えて、言った。
「ティンは、ずっと村で暮らすの?」
「私は、また旅に出るよ」
父が反対しそうだけど、絶対、旅に出るんだと決めている。
「じゃあ、俺も、ティンと行く」
アルディクが言った。
「旅がしたいの?」
「ティンと一緒がいい」
迷いのない目で見つめてくる。
「…また、魔獣が出るかもしれないよ」
「…それでも、一緒に行く」
そう言いながら、耳がヘタレている。
「男の子だねえ」
ユリアさんがそう言って、アルディクの肩を叩いた。褒めているようだ。
こうして、アルディクが旅の道連れに決まり、これからずっと一緒にいることになった。
私とアルディクとクーちゃんと。――旅は、続いていく。
これで、一旦、終了です。
この後は恋愛方向に進む予定なので、雰囲気はだいぶ変わると思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。




