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その十
ある日のことだ。
日本の総理大臣は種子島宇宙センターを視察していた。
「間もなく作戦を開始します」
プロジェクトチームのリーダーが言う。
ついに、この日が訪れたのだ。
「それでは、かねてからの手はず通り、アメリカとソ連に緊急連絡を」
総理の指示で、両国との回線を開く。
――ハロー、アメリカ。こちら日本。今から三分間、月面をお借りします。
――ズドラーストヴィチェ、ソ連。こちら日本。今から三分間、月面をお借りします。
日本からの奇妙な連絡。
通信オペレーターからの報告を受けて、米ソはすぐさま月に注視する。人工衛星を経由して、両国の宇宙センターに月面の映像が届いた。
そこにあった光景は・・・・・・
「どうなっているんだ!」
月面に並んでいたミニチュアが、次々と合体していき、その形を変えていく。
一分ほどして完成したのは、日本のお城だ。
「あれは熊本城です!」
「日本め、いつの間に」
「しかし、信じられない。こんな仕掛けを、こっそり組み込んでいたなんて」