↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/38

第六節 棒の勇者、街をゆく(下)

 人々によって連行されたカヨと泥棒は街の外れにある留置所に拘束された。


「ここにでも入ってろこの腐れ犯罪者プラス変態勇者め!!」


「何で私まで捕まるんだよ! 仮に変態だとしても誰にも迷惑かけてないからいいじゃん別に!」


 もはや変態を否定している余裕などない。このままでは早くも警察のご厄介になってしまい、そうなれば無論魔王討伐など出来なくなってしまう。


「貴様ら勇者共がどれだけ我々に迷惑をかけたか考えてみればいい……!」


 そう怒った様子で中年の男は言い捨てて留置所から出ていってしまった。次々と街の人々がそれに続く。





「ちくしょう……、何だってんだよ……」


 カヨは突然過ぎる展開に頭を抱えた。隣には泥棒がいる。


「元はと言えばお前のせいなんだからなこのこそ泥め」


 カヨはかび臭い上にこの上なく汚い牢に入れられた怒りを泥棒に向けた。


「すまん……、それでさっきの返事は……っ!」


「んなもん無理に決まってるだろうが!」


「がーん!!」


 泥棒はショックの余りベタ過ぎる効果音を口にした。


「やれやれ……、もしかしてこのまんま捕まりっぱなしなのか……?」


 カヨの言葉に落ち込んだ様子の泥棒が返答する。


「……まあ仕方ないだろうな。勇者は大概一般市民から嫌われてるだろうからなぁ」


「……どういうことだ?」


 泥棒は一息つくと、更に言葉を続けた。


「勇者はいっつも魔物の返り血で血みどろで臭いし、そのまま平気で人ん家のタンスの中とか漁ったり壺割ったりするもんな。

 なまじ実力がある分俺みたいな泥棒よりもよっぽど嫌われる存在だよ」


「そうなのか……! 勇者は魔王を倒す正義の戦士って思ってたのに……」


 カヨは驚愕した。他の勇者達の素行の悪さに。確かに先程会った『剣』の勇者もかなり非常識な感じではあったが……。


「そう言えばまだ名前言ってなかったな。

 俺はピーター、知っての通りちんけな盗賊だよ」


 そう言うと笑みを浮かべて泥棒ピーターは手を差し出してきた。豚箱仲間になるかもしれないのでカヨはしぶしぶ握手を交わした。


「私はカヨ。近くのカイナ村出身で一昨日『棒』の勇者になったばかりの新米勇者だ。……よろしくな」


 二人はそのまま牢の中で他愛の無い話をしばらくした。

 ピーターは出会って一時間も経っていない女性にいきなり告白するような変な所はあったが、カイナ村の人々に比べたらずっとまともだった。


「さて、話はこれくらいにしてそろそろ出ようか」


「出る? 何処にだ?」


「決まってるだろ。この牢からだ」


 そう言ってピーターは靴から針金を取り出した。


「おお! お前そんなもん隠し持ってたのか」


 牢に入る際、カヨとピーターは持ち物を全て没収されてしまった。無論血でかぴかぴになった棍棒も短刀も、風呂敷も全てである。


「ここをこうすればすぐに……」


 カチャカチャ、カチャカチャ。


 …………カチャカチャ、カチャカチャカチャ。


 ……………………カチャカチャ、カチッ、……ベキッ!!


「あんれ、おっかしいなぁ……?」


「いや今明らか鍵穴の中で針金折れただろ!?

 ああもぅ、どうすんだよ!!」


「…………、お手上げかな?」


 ピーターはペロッと舌を出して茶目っ気たっぷりに──


 「ふざけんな!!」


 ──その前に殴られた。




 カヨはしばらくうなだれていたが突然何かを決心したかのように言った。


「仕方ない。この手はあんまり使いたくは無かったがな……」


 カヨは浮かない顔をして溜息混じりに鉄格子に手を掛けた。


「何か秘策があるのか?」


「まあな…………、よっと」


 バキッ。


「こんなもんかな、はふぅ」


「はふぅじゃねぇよ! 素手で鉄格子を折った!?」


 カヨはまんま力押しで牢を破った。ひん曲がった鉄格子の片が無残に床に散らばっている。


「いやあ、これやったら手痛くなるからやりたくなかったんだよな」


「あんたやっぱ凄過ぎるよ……」


 二人はこっそりと牢を抜け出そうとした……、が。


「貴様らぁ! 脱走するとは何事だぁぁ!!」


 その後を早速警官達が追い掛けてきた。


「何だ!? 何で脱走がばれたんだ!?」


「絶対カヨが鉄格子折った時の音だろ!!」


 二人は必死で留置所の中を駆け出した。


「どこかに私達の所持品が保管されてるはずだ! それを取り戻してずらかるぞ!!」


 カヨは追い掛ける警官達をちらちら見ながらピーターに言った。


「よし、じゃあ二手に分かれよう!」


 ピーターはそう言うとすぐに分かれ道を右に曲がった。カヨは頷くと左に曲がっていった。





「何で私の方に警官が来るんだよ!」


 運悪く警官はカヨに的を絞って追い掛けてきた。カヨも体力に自信が無い訳ではないが余りにも数が多すぎる。


「さっさと止まれぇ! ぶん殴るぞぉ!!」


 警官は真っ赤な顔で警棒をかざしながら追い掛けている。


「何か本当にこんなシチュエーションばっかりだな……、と」


 カヨはそう呟きながら急に進行方向を変えて警官の一人にタックルした。

 警官がバランスを崩すと同時に振りかざしていた警棒が手から落ちる。

 カヨは目にも止まらぬような速さでそれを拾い上げると後ろに転がり、そして警官達にと向かい合った。


「何だ貴様……脱走をして更に警官に暴力まで振るうつもりか!」


「頼むから聞いてくれ。

 前にこの街に来た勇者がお前らに何をしたかは知らないが私は決してお前らに危害を加えるつもりはないんだ。

 私はただこの街で準備を整えていただけだ、頼むから解放してくれ!」


 カヨは警官達全員がたじろぐ程の迫力でそうまくし立てた。熱が入りすぎる余り口からは唾が飛び散っている。


「私達とて信じたいが……。しかし私達は前にこの街に来た勇者達によってひどい目に合わされたんだ。

 盗難、器物破損で街中をめちゃくちゃにしていったんだ!

 それが二件も続いたんだぞ。貴様ら勇者など信じられるか! おとなしくお縄につけ!」


 しかし警官達も負けてはいなかった。どうやらこのイナチャゴの街の人々は他の勇者達によってひどい目に合わされたようだ。


「ここまでなのか……」


 カヨは仕方なく諦めて降伏する事にした。この場で暴れたら余計に信頼を失うだけだ。

 そして警官達へとカヨが歩み寄ろうとしたその時だった。


 ズシンッ……、ズシンッ……!


「な、何なんだ……!?」


 外からか大きな足音のような物が聞こえてきた。警官達はとりあえずカヨを放置し街へと駆け出す。

 カヨも警棒を拾ってそれを持って警官達の後に続いた。


 警官達を追って留置所を出たカヨを待ち受けていたのは想像を絶する光景だった。


「何なんだあの魔物は!?」


「……に、逃げろぉぉ! 急いで市民達を皆避難させるんだぁ!」


 警官達はいきなり現れた魔物に驚きつつも冷静に対処に掛かる。

 現れた魔物はサイクロプスだった。サイクロプスとは巨人の一種であり、邪悪な一つ目に緑色っぽい巨体を持っている。無論このような穏やかな街の近くに生息するような魔物ではない。


「でけぇ……」


 余りにもの巨体を目の前にカヨの口からは感嘆の声さえ漏れる。


「ン"ォォォォ…………」


 サイクロプスは唸りをあげると街の建物を破壊し始めた。


「まずい! 早くあいつを倒さないと……!」


 そう言うとすぐにカヨはサイクロプスに飛び掛かった。


「ムォォォ……」


 しかしサイクロプスはそんなカヨをあっさりと蝿を払うかのごとく吹き飛ばした。


「うわぁっ!」


 カヨは強い痛みとともに酒場の壁に衝突した。脊椎はやられていないようだが打撲で内出血をしているようだ。


「くそっ、あんな化け物に勝てんのかよ……」


 サイクロプスはデーモンビギナーを遥かに凌ぐ強さと生命力を持っている。

 デーモンビギナーと直接戦った訳ではないがきっとそれでもカヨと強さは五分五分くらいだろう。

 一人では、勝てない。カヨが下した決断はそれだった。


「おいショウ! 何処にいるんだ?」


「あ、ごめんなさーいカヨさん。やっぱ僕命が惜しいですわ」


 ショウは既にイナチャゴの街を後にしていた。後ろの方にぞろぞろと市民が続いてきている。


「予想はしてたけどよ…………。

 ショオオオ!! 覚えてろよォォォォ!!」


 やはりショウは頼りにはならなかった。

 仕方なくカヨはサイクロプスの方へと向き直す。

 こんなやりとりをしてる間にもサイクロプスは街をどんどん破壊していっている。


「やるしかねぇな……!」


 カヨはそう呟くと決意を固めて再びサイクロプスへ飛び掛かる。

 飛び掛かる蝿を払うかのようにサイクロプスの手が飛んでくる……が、


「同じ手を二度も食らうかよ!」


 カヨはその攻撃を躱すと一気に飛び上がり、サイクロプスの胴体に警棒で必殺の一撃を叩き込んだ。


「ン"アァァ!!」


 確実に攻撃は効いている。だがしかしカヨの攻撃は決定打には遠く及ばない。


「ヌァァァァア!!」


 怒ったサイクロプスの拳がカヨへと襲い掛かる。さっきまでの緩慢な動作はどこへ行ったのか、拳は風と一体化したかのように速かった。


「ぐぅぅ……っ」 


 カヨは構えてその攻撃を何とか防御しきった。だがサイクロプスの拳は次々と飛んでくる。


「はぁっ、はぁっ…………、こんな攻撃躱しきれるかよ!!」


 カヨは気力で何とか拳を避け続けている。

 しかしこのままではいずれサイクロプスの拳の餌食になってしまうだろう。


「一体どうすればいいんだよ……」


 カヨの体力がどんどん削られていく。攻撃をしようにも拳や足が余りにも速く途切れる事なく飛んでくるので隙を突く事が出来ないのだ。


 「やばい! 避けきれない!!」


 そしてついにカヨはバランスを崩してこけてしまった。そこに容赦なくサイクロプスの硬い拳が飛んでくる。


「──っ!」


 終わりを感じたカヨは目を瞑った。






「…………あれ?」


 しかしいくら経っても拳が直撃しない。カヨが恐る恐る目を開けると近くの地面にサイクロプスの拳がめり込んでいた。


「どういうことだ?」


「大丈夫か、カヨ」


 カヨを呼ぶ声が聞こえる。顔を向けるとそこにはサイクロプスの目を唐笠模様の風呂敷で隠しながら必死に振り落とされないようにしがみついているピーターがいた。

「そこにお前の装備がある。今の内に早く装備するんだ!」


 ピーターはサイクロプスにしがみつきつつカヨの見ている真逆の方向を指差した。

 カヨがピーターの指し示す方向に目を向ければ懐かしの血でパサパサになった棍棒が転がっていた。


「やっぱこれじゃねえとな……」


 警棒は軽くて扱いやすいが威力に欠ける。重くて威力の高い棍棒の方がよっぽどサイクロプスには効果的だろう。

 カヨは手早く棍棒を拾うと再びサイクロプスと対峙した。先程までとは違ってその表情はずっと引き締まっている。


「カヨッ! こいつの弱点は目だ!

 主に頭部を狙えば簡単に倒せわぁぁぁれれれぇ!!」


 最後まで言い終わる前にピーターは思いっきり吹き飛ばされた。


「よし、アドバイスも貰ったしここは勇者の腕の見せ所だな!」


 カヨには確実に勇者としての自覚が芽生え始めていた。そしてその姿は安全な場所に避難している人々に影響を与えた。


「いいぞいいぞ! あのでかいのを倒せ!」


「勇者は皆が皆最低のゲス野郎じゃないのかもな……」


「よく見たらあの勇者そこそこタイプじゃねぇか! おっぱい見せろや!」


 街の人々の声援がカヨに力を与える。 暴れ回るサイクロプスの猛攻でさえも今のカヨには止まって見える。


「遅すぎんぞデカブツがぁぁ!!」


 カヨはあっという間にサイクロプスの肩まで飛び移り、ここぞとばかりに棍棒で頭部を殴りまくった。


「おらおらおらららぁ!」


 「ムガッ……ン"アァァー……」


 サイクロプスの声色がどんどん弱くなってゆく。


 「とどめだっ」


 カヨの必殺の一撃はサイクロプスの目に直撃した。




「ンガアァァァァァァァア!!」


 耳に残る強烈な断末魔の叫びをあげるとサイクロプスは倒れ、そして全く動かなくなった。


「勝った……完璧に勝った……!」


 カヨは息絶え絶えになりながらも顔を綻ばせた。


「やったな、カヨ!」


 ピーターが近くに寄ってきた。遠くからは街の人々も向かって来ている。


「何とか誤解は解けたようだな……」


 カヨは安堵して溜息をつくと街の人々に手を振った。


「いやあぁ、いい飲みっぷりですなあ! ささ、勇者様もっと飲んで!」


「ぷはぁぁ……、おっ、悪いね市長さん」


 サイクロプスを倒したカヨは街を救った英雄として人々の支持を得た。そして何とか壊されずに残されていた酒場でカヨのための宴が開かれているのである。


「ああ、肉なんて食ったのなんて何年振りだろう……」


 隣にはピーターがひたすら飯をかき込んでいる。彼の罪は街をカヨと共に守ったという事で放免になった。そうしてこのように宴を一緒に楽しんでいるという訳である。


「おい酒足んねぇぞ!! さっさと持って来いや!!」


「お前は調子に乗るな! つうかまず酒を飲むな!!」


「もふっ!!」


 ショウは堂々と宴に参加し酒を飲んでいた。今さっきカヨに右腕と左腕をへし折られたのにぴんぴんしているのは流石と言えよう。


「まあまあカヨさん、酒でも飲んで落ち着きましょうや」


「お前はさっき私が市長に注いでもらったのをもう忘れたのかよ……」


「よして下さいよ~。照れるじゃないですかあ」


「何処に照れる要素があるんだよ……」


 ショウはわっはっはっと笑うと再び酒を飲み始めた。やはり彼も男衆の血を引いているようだ。


「なあカヨ……」


「ん?」


 図太過ぎるショウに呆れつつも酒を飲んでいたカヨにピーターが話し掛ける。


「俺もさ……、お前らの旅に同行させてくれよ」


「えぇ!? ……マジかよ」


 カヨは露骨に嫌な表情をした。仕方ないのでカヨはピーターを何とか傷つけないように言葉を選んで断る事にした。


「やっぱ泥棒がパーティーにいるってのは勇者的に印象が悪いんじゃ……」

「いいよ!」


 ……ショウが大声で叫んだ。


「あざーす! ショウさんあざーす!!」


「何勝手に許可してんだ!?」


「まあまあ旅は道連れといいますし、雑用係は一人くらい居た方がね……」


「ていうかこの三人だったらお前がどう見ても雑用だろうが!」


「──はっ!」


 ショウは身の程をわきまえていなかった。


「まあまあカヨさんもショウさんもピーターさんもみんな飲んで飲んで……」


 市長が三人に酒を注ぐ。透明なコップの中で上等なビールが泡立つ。


「おうすまんな」


「ありがとうございます」


「久し振りだこんな良いビールを飲んだのは……」


 三人は一気にビールに口を付けた。飲み干すと乾いた喉がビールの爽快な喉越しで潤った。


「ぷはぁー! うめぇ!」


「ささ、英雄さん達もう一杯」


 コップが空になったのを見ると直ぐに市長が三人にビールを注いだ。


「す、すまんな」


「ありがとうございます♪♪」


「うまい……、ヒクッ」


 三人はビールをまた飲み干した。中々二杯も立て続けに飲むのは辛い。


「さあさあ皆さん一気にいっちゃって下さい」


 市長は笑いながら空になったコップにこれでもかとビールを注ぐ。


「うぷっ……、ありがと……」


「あざーす!」


「もう俺無理かも…………おろおろおろおろ……」


 ピーターがついにダウン(嘔吐)して、二人はビールを飲み干した。


「いい飲みっぷりだ! もう一杯いっちゃいな」


 市長はハイテンションで空になったコップにビールを、


 「って、飲ませすぎだろぅがぁ! 死んでまうわあ!」


「そうですかな? これでも私地元では注ぎ上手と言われてましてな。今まで酔い潰した人数は数知れずでして……」


「いやダウンさせたら注ぎ上手でも何でもねぇだろ!?」


 カヨがそう言っていると傍らで聞いていたショウがくすりと笑った。


「あれ、カヨさんもしかしてもうギブですかぁ?」


「何…………?」


 そんなショウの一言がカヨの魂に火を点けた。


「こんぐらいまだまだのめるがぼばぁぁぁぁあ!!」


 カヨは半分くらいこぼしつつも何とかコップを空にした。


「へぇ、中々やりますなぁ。…………飲み比べでもしちゃいましょうか?」


 ショウはそう言うと余裕でビールを一気飲みした。それを見た市長は嬉しそうにビールを注いだ。


「勇者VS少年の飲み比べだあっ!!」


「く……っ、やってやるぜ!」


 カヨは酔いで震える手でビールが注がれたコップに手を伸ばした。


 カヨが気が付くと外は明るくなっていた。


「あれ、私……」


 辺りを見渡せばそれは酷い有様だった。机や椅子はあちらこちらに倒れており、ビール瓶やご馳走の残りが散乱している。街の人々はみんな眠りについていた。


「そういやショウとの飲み比べは?」


 ショウは隅っこのテーブルで未だに酒を飲んでいた。周りには一晩で築かれたビール瓶の山がある。


「いやぁ、アルコールは最高だなぁ!」


「お前いつまで飲んでんだよ!?」


 カヨがショウからビール瓶を取り上げる。


「やめろ、おでから酒を奪わないでくでぇ!!」


「お前キャラまで変わってんじゃねぇか!」


 ショウの目は虚ろでまさにアルコール中毒者のそれと同じだった。


「いやいや全然大丈夫ですよ~。

 ほら、酒は呑んでも呑まれるなっていうじゃないですかぁ……、うげっ」


「いや完全に酒に呑まれてるじゃねぇか!」


「参ったなこりゃ」


 カヨはへらへら笑うショウを殴り飛ばすとそのまま引きずって酒場を後にした。






「うーん、スッキリ♪」


「本当に世話のかかる奴だな……」


 ショウはカヨにサンドバッグにされて何とか正気に戻っていた。


「しかし街の人々に何も言わないで行っちゃっていいんですか?」


「いいんだよ。のんびり出発するとあいつが来るし……」


「あいつって誰ですか?」


 ショウの問いにカヨが答える前に遠くから声が聞こえた。


「カヨー! 俺を置いていくなんて酷いじゃないかぁ」


「やっぱり来たか……」


 カヨはため息をついた。どうやらあまりピーターと同行したくなかったらしい。


「まあ、仕方ないか。

 おいピーター、足手纏いになるんじゃねぇぞ」


「そうだそうだ」


「いやお前は言うなよ」


 カヨはショウに冷静に突っ込みを入れると街の外へと一歩を踏み出した。


「なあカヨ……俺達早速何か忘れてないか?」


 ピーターはやっとの思いでカヨ達に追い付くと急に思い出したかのようにそう言った。


「……? まあ大丈夫だろ、それより早く次の町に行こうぜ」


「そんな事よりさっさと行きましょうや」


「ああ……」


 パーティーにいる誰もが気付いていなかった。新たな装備を買い忘れているという事に……。未だに彼らの装備は布の服だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。