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海老フライの尻尾物語  作者: 紙彌成
冴えない尻尾
8/8

揚げ物同盟

 俺は若いころ、志を立て、スペシャルランチのメニュー作りに、青春を描けていた。そう、あの不況、健康ブームが来るまでは。

 高級な揚げ物の地位を確立しようと、エビフライ、とんかつ、コロッケの三人で三銃士のように、大活躍するのを夢見て仕事に励んだんだ。やっと三人で大皿に乗せてもらえることになった時などは、みんなで健闘を称えあった。だが栄光のときはそう長くは続かなかった。そう、世はまさに健康時代、メタボに対する締め上げは想像を絶するものだった。次に来たのが糖尿病、ダメ押しで高血圧。脂肪に砂糖、塩がとりすぎちゃだめってどうゆうことなんや。仮に健康は大事っても、減らしすぎじゃないか。


 若者がミイラのように細腕になっているではないか。そんな時に現れた救世主たちが、ヘルシー油さんたちだった。それに支援者たちの健康食品開発が功を奏し、カロリーを気にせず食べてもらえるようになった。

 だが、もうその時には遅かった、若者たちの生活スタイルも変わり、痩せていることがあたかも美徳のように尊ばれている。

「嘆かわしい限りだ。食べ物を粗末にしてはいけないといわれて育ったが、今の世の中は何だ。」

身体測定では、体脂肪率やBMIなど多くの指標が軒を連ねている。

「私たちのうるわしさとは、鍛え上げられた筋肉。」

「ふくよかな体こそ裕福な証。」という信念が否定されたようだ。

それどころか、鍛えることよりも食事制限ダイエットのほうが手法として取られている見えない闇。

細マッチョという幻想に抱かれた世界。

「そんな世界に、庶民のためにおいしいエビフライを届けようと1匹頑張ってやってきたんだよ。」

脱線しつつも揚げ物同盟の話を居酒屋のエビしんじょう君に話した。


 酔っていない時ならもっと、とんかつがヒレカツにとってかわられた話もできただろうが、そこまで深く話はできなかった。

「ヒレカツに負けるとは、実に情けない。」

コロッケはコロッケで具のじゃがいもとひき肉、チーズとクリーム、野菜

のどれにするかで係争中だ。

「仲身割れとは見苦しい。」

「かつての仲間の悪口になってしまったな。」

「でも、みんなに仲良くしてもらいたいと、本心では思っているよ。」

話しが長すぎて、エビの尻尾らしからぬが、潮に乗り遅れてタクシーで帰るはめになった。

帰ってからすぐに習慣のメール確認をせずに、酔いに任せて寝てしまった。ケチャップさんとブラックタイガーそれぞれから、重要なメールが届いていたのだった。そのことを知ったのは翌朝、二日酔いに苦しみながらメールチェックをした時だった。

「なんだってー。」私は叫んだのだった。

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