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俺は簡単な検査を受けて退院になった。
母親が支払いをしている最中、ロビーでぼーっと座っていると俺の前にスーツの男が立ち止まった。
「あ、旭山……」
「品川君。この度は迷惑をかけた」
「デウス……」
その後ろから更に見覚えのある少女が顔をのぞかせる。
「え?ヘヴンさん?帰ったんじゃ!?」
ヘヴンさんは、当たり前だが燃やした服と違う、新たなロリータ服を着ていた。
「バスの日にち、間違えてたの」
「どうせだから一緒に仙台まで帰ろうと思ってね」
「え?それでいいの?」
ヘヴンさんは頷いた。
「この服も朝日山さんに買ってもらったの。だから……」
まじで?
俺のした事って何だったの?
「か、勘違いしないでよね!”組織”に入る訳じゃないんだからね!新幹線代だしてくれるっていうから……それで……」
「心配しないでもいい、saiは、”組織”はもう解散だよ」
旭山は自嘲した。
「あ、あと火事の件は僕のタバコの火の不始末という事にしてあるから、くれぐれもボロを出さないようにしていてくれたまえ」
それから俺にだけ聞こえるようにこう言った。
「咲子のグループがフレイムヘヴンを狙っているかもしれないからね。もちろん僕もだが……。彼女を護衛するためにも一緒に帰らせてもらうよ。仙台なら、連休ももうじき終わるし、しばらくは安全だろう」
そしてヘヴンさんを連れて出口へ向かう。なんだか納得いかないが、まあ仕方ないのだろう。俺は病み上がりでまともに動けないしな。
「あ、デウス!」
少し進んだところでヘヴンさんが振り返った。
「きょう帰ったらピコ生やるから、ちゃんと見てね!」
そして、大きく手を振って笑った。
抗生物質とやらを大量に流し込み、俺はパソコンの電源をつける。まだ体中が痛く、帰ってからは寝てばかりだった。
ヘヴンさんから送られてきたメールに沿って、指定された時間に指定されたURLにアクセスすると、会員登録やらコミュニティー登録やらを求められ、動画を見れるようになったのは十五分程オーバーしてしまった。
「そのときだったわ、私は魔力を全て注ぎ込んで特大魔法を打ち込んだの」
「おおっやっと映った」
読み込みにも少し時間がかかってしまった。
「そしたら組織の連中は吹っ飛んでいったのよ!私との力の差が歴然としたわ」
画面には〈www〉〈絶好調だなw〉〈prprprpr〉などに混じって〈hへゔんどのすてき〉という文字が見えた。鳥羽だろうと思って苦笑してしまった。
楽しそうに身振り手振りを交えてトーキョー魔法戦争(ヘヴンさん命名)について話しているヘヴンさんに対し、見ている側も盛り上がっているみたいだ。俺が起こした放送事故が彼女の生活に影響を与えていないみたいで安心した。
俺も何か書き込もうと思ってコメント欄にカーソルを合わせるが何を書けばいいのか分からない。
何度も書いては消し、を繰り返していたらあっという間に放送終了の時間が迫ってきた。
困った。
「今日も見てくれてありがとう。おつかれさま。あなた達にもソウルメイトとの出会いがあらん事を」
もうヘヴンさんは締めの挨拶に入ってしまった。
「次枠?……いいえ、やめとくわ。今日はこれで終わる」
ええい、もうどうとでもなれ!
俺はエンターキーを力強く押し込んだ。
画面に文字が流れる。
〈ヘヴン愛してるよ〉
完全な悪のりだった。
他の人達も似たようなコメントをしていたのでこれでいいと思ったのだ。送ってから後悔したが、もうしょうがない。俺は顔を真っ赤にながら放送終了をまった。
「デウス」
ヘヴンさんがこちらに向いて笑いかけてきた。
「私もよ、デウス」
まるで俺に話しかけるように、満面の笑みで画面に映るヘブンさん。
俺の部屋に花が舞った。
もちろん錯覚だ。
分かっているけれど、そう感じた。
放送が終わり、画面が真っ暗になっても、俺はしばらくパソコンの前から動けなかった。




