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「ちっ」

 篁が飛びかかり、旭山の背中に蹴りを食らわせた。

 呻きながら旭山は前へと這い出す。

「篁ぁ!押さえつけといて!」

 篁が命令によって体をびくんと動かした。

 咲子が小走りで近づいてくる。

 篁が跳ぶ。

 旭山が振り返る。

 空中の篁と、地を這う旭山の目が合った。

 旭山が笑う。

 俺は、諦めの笑いかと思った。

「ファンクション・ジャンクション!」

 旭山が手を振るうと、篁が空中で動きを止めた。そのまま床に落ち、足から着地した。

「ああ、皇が……」

「てめえ!」

「悪かったな、篁。お前が皇をそんなに想っていたなんて……」

「何を言ってるんだ!?」

「言っただろう、ファンクション・ジャンクションは本来人を探す能力だったと。このように糸を使って攻撃なり拘束なりするのはあくまで副次的な能力なんだよ」

 旭山は疲れたように言う。

「本来の力は、繋がった者の居場所などの情報が分かるものだった」

「くそっ」

 篁は巻き付いた紐を引きはがそうと必死にもがく。しかし、紐は伸びも千切れもしないようだった。

「今はお前の考えている事がよく分かるよ。これは今までにない事だ。ああ、きっと皇の力が伝播したんだな。そういうことか……」

「お前が皇の力を……だと!?」

「俺が、いや、皇が最近俺の事を気にしていたから引きはがすために咲子達と組んだんだな。それに、咲子の力で俺の能力を消せば皇も俺から離れると思ったのか。そうか」

「ぐ……」

 篁は黙った。旭山は咲子に聞かせるように続ける。

「小さい頃から、超能力者として育てられたお前達はお互いでテレパスが使えた。しかし、ある日から皇だけが他の者の心まで読めるようになってしまう。能力に差が出ると二人は引きはがされてしまうと思い、テレパスを使って二人ともが読心術を覚えた振りをしたのか、なるほどな」

「うるさい!」

 スパン!と音を立て、二本めの注射器が旭山に刺さった。

 ファンクションジャンクションが消える。

 解放された篁は大きく飛び退いて旭山から距離を取った。

「喋りすぎよ」

 咲子が言う。

「ああ、君の注射器は時間制限があるみたいだな」

「それがどうしたって言うの」

「それと、本当に能力を消すためには直接触れなきゃならないらしい」

「だから?」

 咲子が一歩踏み出す。

「あなたに直接触れればいいだけでしょ?」


 咲子と旭山が争っている間、俺たちはヘヴンさんの救出に向かっていた。気絶しているヘヴンさんを抱き起こす。

「ねえ、大丈夫?」

 抱えたときに、何かが服の上から転がり落ちた。拾い上げる。スタンガンだ。漫画でしか見た事が無かったが、これを使われたのだろうか。

「ヘヴン殿、すまぬ」

 鳥羽が思いっきりヘヴンさんの頬をはたいた。

 スパァンといい音がして、ヘヴンさんのまぶたが少し動く。

「……ふぇ?」

 ヘヴンさんが目を覚ました。

「篁!あいつら逃げるわよ!」

 しかし、咲子達に気付かれてしまった。

 旭山を突き飛ばして咲子がこちらに走ってくる。篁も、我に返って咲子の後に付いてきた。

 鳥羽が竹刀を構えた。

「デウス殿!ここは拙者に任せて!」

 俺はヘヴンさんの腕を掴んで立ち上げ、出口の方へ追いやった。

「食らえ!」

 鳥羽が竹刀を振るう。唸りを上げて風が咲子を襲う。

「こんなに早く物にするなんて!」

 腕で風をガードしながら、咲子が驚愕の声を上げる。

「やっぱ鳥羽君才能あるわよ!悪いようにしないわ、私たちと」

「断るでござる!」

 鳥羽が再び空を斬った。咲子の前に篁が飛び出して風を防いだ。

「師匠殿には感謝しているでござる。でも、目的がなんであれヘヴン殿を傷つけた者に加担するわけにはいかないでござる!それが拙者の正義!」

 鳥羽が前に走った。そのまま袈裟切り。篁に斬撃がぶつかる。次の動きを封じるように更に斬り上げる。篁は防御しか出来ず、一歩も動けない。

 鳥羽が懐に入り込んで突きを一撃。篁がそれを避け、後ろに回り込んで鳥羽に肘を食らわせた。

「くっ」

「きゃあ!」

 後ろから声がする。振り向くと、意識を取り戻した皇がヘヴンさんの足を掴んでいた。

「皇!やめろ!」

 俺は我を忘れて皇に飛びかかった。

「うおおおおおおおおおお!」

 篁の咆哮。

 俺は皇に馬乗りになって、スタンガンを押し付けた。

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