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 鳥羽の叫び声と、ヘヴンさんの叫び声、唸る糸の音、更にそれをかき消すような豪風が俺を襲った。

 旭山の体が倒れ込んで来たのでとっさにそれを受け止め、そのまま尻餅をついた。そして、彼の肩越しに鳥羽の姿を見た。

 大きく足を開き、肩で息をしている。

 その手には、柄だけになった竹刀が握られていた。

 一瞬の間。

「はっ!デウス殿?無事でござるか?」

 鳥羽は、俺たちに駆け寄った。

「あ、ああ、なんとか」

 俺は旭山を体から離した。

「うわっ」

 旭山の白いシャツには点々と血が付いている。

「鳥羽!旭山が!」

 鳥羽が旭山を受け取り、ゆっくりと床に寝かせた。

「デウス殿……その血……」

「へ?」

 鳥羽が俺を見て息をのんだ。俺は自分の体を見る。服は破け、裂傷がいくつも出来、そこから血が垂れ流されている。

 不意に顔に不快感を感じ手で拭った。その掌にも、血がべっとりと着いた。

「デウス……」

 ヘヴンさんが近づいて来て、ハンカチで顔を拭ってくれる。レースの着いた真っ白なハンカチが一瞬で真っ赤に染まった。

 もはや血染めになってしまった可愛らしいハンカチを見つめ、ヘヴンさんは泣き出した。

「ごめんなさい……私が……私がいつまでも優柔不断だったから……何もせずにあなたにすべてを任せていたから……ごめんなさい……」

「大丈夫、このくらいの傷、大した事ないよ」

 驚く事に、出血量に対してあまり痛みは感じなかった。俺はヘヴンさんの肩に手を置いてなぐさめようとしたが、血まみれの手では彼女に触れないと思い直し、手を引っ込めた。

「う……うう……」

 うめき声が聞こえた。旭山が意識を取り戻したのだ。

「逃げるぞ!」

 俺は立ち上がった。ヘヴンさんの手を取り、出口へと走った。

 引き戸を開け、真っ直ぐな廊下をひた走る。

 玄関まで後もう少しというところで、ドアが開いた。

「!」

 声にならない叫び声を上げて、急ブレーキを掛ける。

 ヘヴンさんが俺の背中にぶつかり、更にその後ろに鳥羽がぶつかったようだ。

 俺は身構える。

 ドアが開き、白いおかっぱ頭が入り込んで来た。

「篁!」

 篁にエスコートされながら皇も入って来た。

「皇殿!無事でござったか!」

 篁と皇は怪訝そうな顔で俺たちを見た。

「お前ら、血まみれで何やってんの?」

 篁が問う。皇は俺の後ろのヘヴンさんを見て、はっとした顔をして叫んだ。

「旭山!!!」

 それから篁を、そして俺たちを押しのけて奥の部屋へと走っていく。

 篁も後に続くかと思ったが、その場に留まり玄関を守っていた。

「お前らが何をしたか知らんが、ここから帰すわけにはいかなそうだな……」

「ちっ」

 俺の舌打ちをかき消すように皇の絶叫が響いた。

「旭山!!!!無事か!!!!!!」

「ほら、さっさとお前らも進め」

 靴を脱いだ篁が、俺の方を掴んで逆向きに軌道修正した。悔しいが力が強すぎて全く抵抗出来ない。足を蹴られ、少しづつ前に進んでしまう。ヘヴンさんと繋いでいた手も離してしまった。

「別になんにもしねーよ、俺は。今逃げたらまたおっかけ回して嫌がらせして、めんどくせーことになるだろ?今日で終わりにしようぜ。お互いさ」

 篁の説得(?)に飲まれ、渋々もといた部屋に戻る。

 開け放された引き戸からは、ソファーに座らされた旭山と、その横で全身から怒りを立ち上らせている皇がのぞいていた。

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