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「しかし、この町、本当に何もないわね」
俺の地元を歩きながら、ヘヴンさんは失礼なことを言った。
「そんなことないでござるよ。ほら、あそこにバッティングセンターがあるでござろう?あそこにはよく通ったものでござる。拙者の動体視力はあそこで鍛えられたと言ってもいいでござるよ」
鳥羽も昔からここに住んでいるらしい。
「バッティングセンターくらい私の街にだってあるわよ……」
「どうでござるかヘヴン殿、一発打っていくでござるか?」
「興味ないわ」
仲良く話しながら歩く二人の後ろを、俺は会話に参加せずについていく。
「あら」
「なんと」
追いついた俺が目にしたものは、廃業の旨を伝える看板だった。
ヘヴンさんの身支度が整うとすぐに、俺たちは例のコンビニに向かった。
中にはお客さんは一人もおらず、若い女の店員がだるそうにレジにいるだけだった。
そのまま帰ろうとしていると、鳥羽が周辺も見回らないと行けないと強くいい、それにヘヴンさんも同意する。
俺は仕方なく生まれ育った街の観光案内ツアーのようなものに参加しているのだった。
「なんか結構潰れてる店多いわね。人も全然いないし」
「うーん、昔はもっとにぎわっていた気がするんでござるが……」
確かに子供のころはもっと店もやっていたし、買い物をする地元の人で溢れていた気がする。昔からの店が一軒潰れ、一軒潰れ、で気付いたら商店街はコンビニくらいしかまともに営業している店が無くなっていた。少しづつの変化だったので気付かなかったが、俺の町の商店街もニュースで見たようなシャッターストリートになっていた。にぎわっているのは駅前のチェーン店のスーパーくらいだ。
町を一通りみたものの、特にこれと言った発見はなかった。すれ違う人は子供かおばあちゃんか主婦ばっかりで、“組織”の人と思われる若い男の人はいなかったのだ。
俺たちは俺んちの前の公園、つまりヘヴンさんと鳥羽と初めてあった場所に落ち着いていた。
「結局犯人は見つからなかったでござるな」
竹刀で素振りをしながら、鳥羽が言った。鳥羽は今日一日中竹刀を握っていた。持っていないと落ち着かないんだそうだ。
「きっと私たちの力に恐れを成して逃げていったんだわ」
ベンチに座りドーナツを食べながらヘヴンさんが言う。
「まあ、何もないのはいいことじゃん?」
俺は適当にそんなことを言った。
五時のチャイムが鳴る。
公園で遊んでいた数人の子供達が、一斉に家に帰っていった。チャイムが鳴ると同時に一目散に自転車にまたがる。一人だけ徒歩で来たらしく、何か叫びながらみんなのあとを走って付いていっていた。
「ヘヴン殿、上段の構えはこうでござる!」
「こう?」
「もっと腰を低くして、足を拳一つ分開いて、こう!」
「こんな感じ?」
「いいでござるなあー上段は攻撃特化の構え、ヘヴン殿、万が一襲われたときにはタイミングを見て思いっきり振り下ろすのでござるよ。脳天を貫くでござる」
鳥羽はヘヴンさんに剣道を教え始めた。
「おーい、俺は先帰るからなー?」
俺は一声掛け、すぐそばにある家に戻った。
いつもの習慣でメールボックスをチェックした。
「ん?なんだこれ?」
大きめの白い封筒が一通入っていた。ダイレクトメールやチラシなどの一番上に乗っているのでよく目立つ。ひっくり返してみたが、どこにも何も書いていなかった。
とりあえず全て抱え家に入り、玄関先に乱雑に置いた。
どうしても気になり、靴も脱がずに白い封筒だけを手に取る。透かして見るが何が入っているのかは分からない。振るとカサカサと音がした。
誰宛かは分からないが、宛名も差出人も書かない方が悪いのだ。俺は開き直った。玄関に腰掛けるとゆっくりと封をはがす。のり付けが思ったよりしっかりしていて、二センチも行かずに縦に破れてしまった。
「ああっ!もう」
そこからはもう綺麗に開けることなどどうでも良くなってしまって、指を突っ込んで乱暴に紙を引き裂いていった。中身には遜色ないだろう。
中をのぞくと、数枚の写真が入っているだけだった。
一枚を取り出す。
「うわっ……‥」
バッティングセンターの前に立つ鳥羽とヘヴンさん、そして俺の姿が映っていた。




