ep9 儲けたぞ!買い食いパーティーと恩返し
「……休もう」
布団の中で私はそう決意した。
異世界に来て、メンズエステ春香を開業してから1ヶ月。
最初の1週間は暇すぎて、開店休業状態だった。
けれど、その後は怒涛の3週間。
冒険者たちに魔法と勘違いされ、毎日毎日、施術、施術、施術。
気がつけば朝から晩まで手を動かしっぱなし。
指も肩も腰も、そろそろ限界だった。
だから今日は休む。
何も考えず、体を休める日にする。
そして——
「まずは家賃と借金返済だ!」
私は机に向かい、帳簿を開いた。
◆1日の平均客数:6~7人(平均6.5人で計算)
◆通常コース45分9000エルマ
→ 1日の売上:58,500エルマ
→ 3週間(21日間)の売上:1,228,500エルマ
「……ひゃ、122万エルマ!?」
思わず声が漏れた。
あ適当な神に飛ばされた時はどうなるかと思ったけど、
1ヶ月目にして、私、異世界で小金持ちになってる。
「オキノに借りた分も返せる!」
家賃3万エルマと、開業時に借りた1万エルマ。
合わせて4万エルマ払っても、まだ118万8500エルマ残る。
「う、うひゃひゃひゃひゃ!」
ニヤニヤが止まらない。
風俗時代も結構稼いでたけど、ここまで一気にまとまることはそうそうなかった。
「よし! 街に繰り出そう!」
思い切り休むと決めた今日は、買い食いパーティーにしよう。
美味しいものを食べまくって、オキノに恩返しもする。
ルンルン歩いて街へと向かった。
市場は人で賑わっていた。
「串焼きください!」
「甘い焼き菓子も!」
「揚げパン追加!」
見るもの全部食べてやる勢いで、片っ端から食べ歩いた。
炭火で焼いた肉串は、塩とスパイスが絶妙で、ジュワッと肉汁が溢れる。
焼き菓子は甘さ控えめで、素朴だけど優しい味。
揚げパンなんて、もう油と砂糖の暴力だ。
「あ~幸せぇ……」
1ヶ月働き詰めだった分、染みる。
通りを歩きながら、ふと目に入ったのは革製品の店。
冒険者用の手袋や靴、ベルトなんかが並んでいる。
(あ、オキノ、手袋ボロかったな……)
店に入り、丈夫そうな革の手袋を選んだ。
「これください!」
オキノへのプレゼントだ。
借金も返して、お礼もしたい。
「あと、これも!」
ついでに、自分用に柔らかいクッションも購入。
最近、床で座るのが地味にきつかったから。
満腹、買い物、そしてちょっとした贅沢。
心が満たされていくのを感じながら、町へ戻った。
夕方、オキノの家。
「オキノさん!」
玄関先で呼ぶと、オキノが顔を出した。
「おぉ、夏希か。今日は休みか?」
「はい! これ、借りてた分と家賃です!」
そう言って、4万エルマを差し出す。
「おぉ、もういいのに……」
「いえ、ほんと助かりましたから! それと、これ!」
オキノに皮の手袋を差し出す。
「いつも色々ありがとうございます! 手袋、前に見たらボロボロだったんで」
「あ……おいおい、悪いって!」
照れくさそうに笑うオキノ。
「いや、ほんとにありがとう!」
私は頭を下げた。
異世界に来たばかりの、何も分からなかった私を助けてくれた人。
家だって、「払える時でいいよ」と貸してくれた。
オキノがいなかったら、私はここまで来られなかった。
「夏希、無理すんなよ」
「はい! でも、もうちょっと頑張ります!」
オキノは笑って「しょうがねぇな」と言った。
家に戻る。
クッションに座り込むと、ふかふかで最高だった。
「……よし、また頑張ろ」
太陽は沈み、空は赤く染まっていた。
異世界生活、1ヶ月。
まだまだ大変だけど
私はここで、生きていける気がする。
そう思いながら、私は目を閉じた。




