731.ある意味、予想通りなのだけれど?
お迎えしたのは予想通りのお二人だった。ハンナ様とオイゲン、どちらも表情は暗い。客間を用意したフランクに誘導され、足を踏み入れた。先にお二人を通し、私も向かいに腰かける。ここでユリアーナを呼びに行かせた。
最初から顔を合わせたら、挨拶の前に説明を始めそうな気がしたの。アンネを連れたユリアーナが入ってきて、オイゲンを見て眉根を寄せる。不快に思ったというより、泣きそうなのを耐えているのね。手招きして隣に座らせた。
オイゲンと正面から向かい合うのは、お互い気まずいでしょう。だから、斜めになるように工夫している。私がオイゲンの正面に座る形よ。ハンナ様の正面にユリアーナが腰かけ、手に持つハンカチを強く握った。
「では、説明させていただくわね」
私が先に切り出す。ユリアーナがこういった場面を目にして、悲しんでいること。その理由を聞きたいと伝えた。あまり深く、泣いていた時の様子は話さない。だって、嫌でしょう? 姉とはいえ、誰かの口から「こんなに泣いたのよ」なんて言われたら、私だったら恥ずかしくて顔が上げられなくなる。
「それですぐにお手紙をいただいたのですか。ありがとうございます」
口を開こうとしたオイゲンを制して、先にハンナ様が軽く頭を下げた。ティール侯爵家のほうがシュミット伯爵家より上だけれど、フォンの称号があるから同格と見做される。そのうえ、姉の私が公爵夫人だからユリアーナの立場は強くなってしまうの。
一方的に婚約を解消すると通達される可能性もあったのだと、ハンナ様は匂わせた。落ち着いた対応をするよう、息子に釘を刺し直したのね。おそらく、ハンナ様ならお屋敷でも言い聞かせたはず。それでも勢いで話しそうになるのは、若さね。未熟と表現したら可哀想だわ。
「悲しませて、ごめん。あの日一緒に出掛けたのは、クラネルト子爵令嬢で従妹です」
答えから切り出したのは素晴らしいわ。長々と言い訳をした挙句、最後に「実は親戚でした」は悪手だもの。それをやられたら、女性側は「言い訳でしょう」と疑ってしまう。真っすぐに親戚の子と伝え、そのうえでどうして一緒だったのか、この順番で話してくれたほうが聞きやすいの。
「クラネルト子爵夫人は私の妹で、令嬢の名はレギーナと申します。実は……買い物を頼んだのが私なのです」
申し訳なさそうにハンナ様が付け足した。そこからまたオイゲンが説明を始める。少しだけユリアーナの顔が上がった。
「母上に、子爵夫人である叔母上へのプレゼントを買ってくるよう頼まれて、色や好みを相談するために同行してもらった。手を繋いでいたのを見たと聞いたけれど、俺は触れていない」
きっぱりと疑惑を否定した。親戚の令嬢であっても、婚約者がいるからと手を取らなかった。彼女もそれでいいと納得していたとか。なら、どうしてユリアーナは手を繋いでいたと思ったのかしら?




