696.命の授業にぴったりの教材
気の利くフランクが、猫の世話の係を変更してくれた。疲れから子供達と一緒にお昼寝をしてしまい、猫のトイレ掃除を忘れたの。今後はレオンのお勉強も始まるので、使用人に世話を任せてはどうかと提案された。
「ダメよ、最初に飼うときに約束したでしょう? 命は最後まで責任をもって面倒を見るべきだわ」
生きている間の面倒も、別れの時も、すべてにおいて猫達はレオンの成長を促す。ローズもラルフも同じよ。弟妹のように平民と育ったなら、人の痛みを知る機会が多い。でも貴族として守られた生活を送るこの子達には、成長の機会が必要だった。
説明に一礼したフランクは、どこか誇らしい表情をしていた。そんないいこと言ってないわよ?
私達がお昼寝している間に、ヘンリック様は王宮へ向かった。どうしても判断が必要な書類が入ったんですって。カールハインツ様に頼りにされるのは、ヘンリック様も嬉しいみたい。
家庭菜園と呼ぶことにした離れの庭は、水やりと草抜きを私達が自ら行う。庭師のティム達は虫の駆除や肥料の追加をお願いした。それと、私達の世話の仕方で問題があれば教えてもらう。
忖度する使用人なら、枯れたら引っこ抜いて別の苗を植えてしまうでしょうね。それは禁止した。大事に育てるつもりだけれど、枯れてもそこから学ぶこともある。ほかの苗や翌年の家庭菜園につながる知識を得られるわ。
脇芽摘みも、レオン達に体験させてあげたい。私の意見に、ティムは困ったような顔で「ありゃ、繊細な作業ですでな」と反論した。子供にはまだ早いの? そうね、レオンが今のラルフの年齢なら大丈夫かしら? あと二年は様子見して、庭師に任せましょう。
細かな部分が決まり、レオン達に水やりのお仕事を伝える。ティム達が網をかけて、若い芽を動物から守ってくれる話もした。目を丸くして「たべちゃう?」と不思議そうにレオンが呟いた。こういった内容の絵本ってあるかしら?
フランクとイルゼが調べてくれたけれど、さすがになかった。絵本を作るのは大変なので、紙芝居を思いつく。よく保育園とかで読み聞かせしている紙芝居なら、なんとかなりそう。夕方にヘンリック様が戻るまで、大急ぎで下絵を仕上げて裏に物語を書く。
受け取ったイルゼの進言で、絵の得意な侍女が紙芝居を仕上げることが決まった。
数日後、受け取った紙芝居は私の絵の片鱗もなくて……でも可愛らしい絵で纏まっている。下絵は下絵、仕方ない。子供達に紙芝居を読み聞かせたところ、大喜びだった。あまりに評判がいいので、同じものをもう一セット作ってもらう。
お茶会の際、ルイーゼ様にお渡しする手土産にしましょうね。




