689.レオンのお兄ちゃんの振る舞い
真ん中に寝ていたディは、サビーネに左側へ押しやられる。嫌がって泣くかと思ったけれど、もふもふに負けたのかしら。手を動かした後、サビーネの手を握って目を閉じた。寝ている向きからして、左前脚ね。
乳母が近くに控えているので、任せることにした。
「……あたちも、こりぇ、ちたぁ」
首を傾げて少し考え「私もこれしたい」かも、と気づく。ローズは指を咥えて、じっと見つめている。
「ローズはお姉ちゃんじゃなくて、赤ちゃんだったの?」
「ちあう!」
否定してぷんと顔を背ける。可愛い仕草にふふっと笑ってしまった。並んで腰かけたユリアーナも、くすくすと笑う。私達の様子に、ローズはさらに臍を曲げた。
「やっ! やぁあああ!」
近くに並ぶ鉢を転がそうとして、想像以上の重さに諦める。そんな仕草さえ可愛くて、頑張って真顔を作ろうとするのに口元がひくりと動いてしまう。目敏く見つけるのよね、小さい子って。
「やあっ、やっ!」
吐き捨てるように怒るから、申し訳ない気分になってくる。ごめんなさいねと謝りながら手を伸ばすも、ぱしんと叩かれてしまった。本当に怒らせちゃったかしら?
「ろじぃ、お母様はぼくの」
よくわからないけれど、駆け戻ったレオンが私に突撃する。膝に抱き着くレオンを受け止めれば、嬉しそうに膝によじ登る。ラルフはソファーベッドの隣に腰かけた。手が届く距離だったので、手招きして真横に呼ぶ。おずおずと距離を詰めたラルフを腕で閉じ込めるように引き寄せた。
「らるふと、おなじ」
レオンが嬉しそうに笑う。額や頬が触れそうな距離で、二人が笑顔になった。腕の中が幸せ過ぎるわ。ミアはとてとてと歩いて、アイの隣で丸くなった。柄の違う猫が絡み合うと、不思議な模様ができる。木の上のシロはいつの間にか鳴くのをやめた。
「やっ!」
イヤイヤを連発するローズへ、レオンは手を差し伸べた。
「おいで、ろじぃ……」
これ、私の真似? 何度も「おいで、レオン」と呼びかけた記憶が蘇る。懐かしいような恥ずかしいような、こういう感情が甘酸っぱいと表現されるのかしらね。愚図るローズも素直に歩いて近づき、ぽすんとソファーに抱き着く。
ひょいっと抱き上げたユリアーナが頬を摺り寄せ、可愛いと呟けば機嫌は上向いた。うちの薔薇姫様がちょろくて助かるわ。
「お野菜の手入れ、ちゃんとできるかしら? 猫ちゃんの時と同じで、当番制にしますよ」
「はぁい!」
「できます」
男児二人は元気よく決意表明し、ローズはこてんと首を傾げた。
「ローズちゃんは私と一緒に水やりしようか。草抜きもきっと楽しめるわ」
「あい」
レオンに対してローズが素直なのはわかるけれど、ユリアーナに対してもイヤイヤしないのね。母親なのに、たくさんイヤイヤ発動される私が切ないわ。そんな私の指を、ぺろりと白猫が舐める。
シロ、あなた……やっぱり自分で降りられたのね。




