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【書籍重版】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
第五章

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685.家族で決めるなら、末っ子も

 朝食が終わったのに、ヘンリック様が仕事に出かけない。


「あなた、出かけなくて大丈夫?」


「問題ない」


 きっぱり言い切ったので、視線をベルントに向けた。ヘンリック様のカバンを持つ彼は、ゆっくり首を横に振る。どうやら出勤日みたいね。


「お仕事を放りだす人は嫌いですよ」


「……っ、だが……いや、行ってくる」


 咄嗟に反論しようとして呑みこむから、なんとなく勘づいてしまった。植える野菜決めに参加したかったのね? ならば、妥協案を考えるのが妻の仕事でしょう。


「こうしましょう。まず野菜の種類を決める。それからヘンリック様はお仕事に行きます。私達はどこへ植えるかを決めて、帰ってきたら報告するわ。どう?」


「ありがとう」


 美形の満面の笑みって、もう凶器よね。私の心臓を止める気かしら? 惚れた欲目もあるとして、仕方ないけれど。どきどきしちゃったわ。胸元を押さえて、ゆっくり深呼吸した。


「では学習室へ移動しましょうか」


 ヘンリック様が隣に立って、当然のように手を差し伸べる。腕を組んだら、ローズが「やっ!」と叫んだ。ヘンリック様の抱っこがいいの? イヤイヤ期だから別の理由かも。


「ローズ、お父様の抱っこがいいの?」


 首を横に振る。違うらしい。


「私の抱っこ?」


「やぁああああ!」


 叫ぶローズが仰け反り、抱いていたマーサが「あらあら」と慣れた様子で支える。慌てない、落とさない。完璧な対応ね。ローズの叫びに賛否を示さないのもいいわ。


「ろじぃ、あるく」


 レオンがスカートの裾を引っ張って、訴えてきた。お兄ちゃんにはわかるの? 


「ローズ、お兄ちゃんと手を繋いで歩きましょうか」


 鼻水を垂らしたまま、大きく頷いた。その勢いで、今度は頭から落ちそうになる。これまた慣れた手つきで、マーサが支えた。


「そうだわ。せっかく家族で相談するのなら……ディも呼びましょうね」


 仲間外れはダメだわ。私の提案で、マーサが迎えに行った。降ろされたローズはラルフとレオンの間で手を繋ぎ、ご機嫌で笑う。でも鼻水が……と思ったら、イルゼがさっと拭いた。本当に出来た使用人ばかりで助かるわ。


「ローズちゃんはレオンが大好きね」


 やり取りを見守ったユリアーナが、くすくすと笑った。にぱっと笑うローズが繋いだ手を揺らす。先に歩き出したレオン達を追って、私とヘンリック様も学習室へ踏み込んだ。


 お父様が教師をしてくれた時から、少しだけ部屋の内装を変えた。部屋の半分を絨毯敷きに変更し、残りはテーブルや椅子が置かれている。壁際の書棚は、下のほうに絵本が並んだ。レオンの好きなお絵描きの道具や粘土も一緒に。積み木は窓際の籠に放り込む方式だ。


「ディルク様をお連れしました」


 我が家の末っ子ディルクの到着で、思い思いの場所に腰を落ち着ける。


 いけない! 肝心の庭師さんを呼び忘れたわ。

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