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【書籍重版】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
第五章

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676.広い廊下を目いっぱい使う

 お帰りなさいと出迎えて、無事な姿にほっとする。ベルントが書類の入った箱を執務室へ運び、ヘンリック様も着替えに向かった。


「先に食堂で待っていましょうね」


「あい!」


 元気なローズが真っ先に手を挙げた。ここではイヤイヤの発動はないのね。子供の「いやっ」が出てくるタイミングがわからないわ。突然口にするし、平気な時もあるし。まったく関係ないところで泣くこともあった。それが子育てなのだとしても、理不尽に感じてしまう。


 窓の外は暗くなり始めで、まだ明るさが残っていた。日が暮れるまでの時間が長くなり、また暑い季節が訪れる。その前の春は、花や木々が色づいて華やかになるわ。


「お母様、僕……手つなぐ」


 以前は言えなくて「ちゅなぐ」になっていたのに、いつの間にか上手に言えるようになった。たまに言い間違えたり失敗したり、それが可愛いの。少しゆっくりめに、丁寧に発音したレオンへ頷いた。


「そうね、手を繋いでいきましょう。ローズは誰と繋ぐの?」


「にぃ!」


「ろじぃ、手」


 差し出して繋ぎ、空いている手を私と繋ぐ。ラルフが遠慮する前に、私が彼の手を取った。見上げてくる視線に迷いが滲む。この子は何でも頑張れる子よ。一生懸命だし、レオンのことも弟として大切にしている。なのに自分を大切にすることに慣れなかった。


 公爵家の次男に生まれ、もっと自己肯定感が高くてもいいのに。


「ヘンリック様に遅れたら格好がつかないわ。急ぎましょうね」


 はっとした顔で歩き出すレオン、空いた手をぶらぶら揺らすローズ。遠慮がちなラルフの握り方に、ちょっとした悪戯を思いつく。指を絡めるようにしっかりと握り直した。


 驚いた顔をするラルフに笑顔を向ける。歩き出せば早い。広い廊下を進んで、食堂の扉の前で止まった。公爵邸は複数人が歩いてもぶつからない広さがある。平民の家の部屋なら、この廊下の幅でも十分足りるほどよ。


 せっかく広いのなら、目いっぱい使ってもいいわよね。以前にそう口にしたら「使用人と距離を置くための幅でございます」と叱られたことを思い出す。イルゼも慣れてしまい、もう注意しなくなった。


「お父様、ここ」


 僕がこっちで……レオンは椅子を指さしながら、席順を決めていく。お菓子の塔が正面から見られる位置が、ヘンリック様ね。ローズとレオンで挟んで。ラルフはローズの隣? ヘンリック様が拗ねるわよ。わいわいと話しながら、降りてきたユリアーナと合流する。


 読書に夢中で、お迎えできなくてごめんなさい? 私ではなく、ヘンリック様に言いなさいね。

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