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【書籍重版】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
第五章

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675.お菓子の塔を作ってお迎え

 お絵描きの成果である紙を見せてもらい、たくさん褒めた。レオンのは、たぶん……猫だと思うの。ちょっとツノみたいなのが生えているけれど。ラルフはすごく上手だった。模写するタイプのしっかりした風景画に感心する。


 ローズの絵は、何かしら? 質問したら「ぃやぁ!」と怒られてしまったわ。レオンによれば「ぐるぐる」らしい。ぐるぐるって何? 渦巻き模様だとしたら、そうは見えないし。こてりと首を傾げた私は、理解を諦めた。絵は心で感じるのよ、と言い訳してみる。


「この色が好きよ」


 形は理解できないため、色で褒めておく。ローズはにこにこしながら「こりぇ、かたむりゅぃ」と指さした。その瞬間、ぱっと脳裏で文字が並び変えられる。カタツムリ? なるほど、確かにぐるぐるだわ。子供の表現力は侮れないわね。


 お手本で絵を描こうとしたら、全力でイルゼに阻止された。もうすぐヘンリック様が戻るから、準備を? でも着替えはしなくてもいいし、何を準備するのか。困惑した私の手を掴んだレオンが「お菓子……」と

促した。


「お菓子を並べて、お迎えしましょうか。食堂に置いて、びっくりしてもらうのはどう?」


 レオンの提案を受けて、お菓子の盛り付けを始める。シフォンケーキを中央に置いて、周りを焼き菓子で飾るの。生クリームは間に合わないので、ジャムで張り付けた。すごい見た目だけれど、大丈夫かしらね。ヘンリック様は喜んでくれると思うけれど。


 ふと、お菓子の家が思い浮かんだ。前世のあれに似ているわ。クリスマス前後の時期に販売されていたの。焼き菓子を組み立てて……おかしいわね、食べた記憶がないわ。でも楽しかったのは覚えている。


 食べ物で遊ぶのは悪いことだけれど、飾りつけなら許されるはずよ。今度、よそのお子様も誘って作ってみましょう。お祭りの話に加えて、こちらの相談もしたいわ。


「できた!」


 喜ぶレオンの隣で、ローズが真剣な顔で焼き菓子を見つめている。貼り付けていたお菓子が余ったのね。一人で食べてしまうのか、皆と分けようとするか。気になって見守った。


「にぃ、ぶんこ! ちて」


「ろじぃ、半分こ?」


 黒髪を傾けたレオンが、受け取った焼き菓子を見つめる。半分に割ろうとするのかしら?


「らるふ、これ、半分この半分こ、できる?」


 なるほど。半分にしたらレオンとローズで終わってしまう。だからさらに半分にして、ラルフとも分け合うつもりね。優しい子で嬉しいわ。微笑んで見守っていたら、イルゼが手を貸してくれた。半分を半分にして……あら? 四つになったわ。


「お母様、これ。ろじぃはこっち。僕とらるふの」


 割ったお菓子は微妙に大きさが違う。ナッツの入った部分が私で、大きいのをローズ。最後に二人で仲良く残りを食べた。レオンの嬉しそうな顔にお礼を言って、貰ったお菓子を口に入れる。二人に割って返したら、喜ぶより泣かせてしまいそう。


 出来上がったお菓子の塔を前に、レオンが笑顔で肘をつく。ラルフが振り返り、窓のほうをじっと見つめた。ヘンリック様がお帰りみたい。馬車の音がするわ。

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