667.得意分野で広がる繋がり
お話している間に知ったのだけれど、この世界では娯楽が少ないのね。といっても貴族の間の話みたい。物心つく年齢から、剣術やダンスなどの習い事を始めるのが一般的だった。家を継ぐ嫡子は勉強もあり、嫡子以外の子女も最低点の礼儀作法やルールを覚える。
伯爵家以上の家柄なら、語学なども学ぶみたい。他家に嫁ぐ令嬢であっても、高位貴族に望まれる可能性があるから領地経営も齧るとか。当然、ケンプフェルト公爵家も学ばせる高位貴族なのだけれど。まだもう少し……と思ってしまう。
将来のために学ぶべきなのは理解するし、必要な知識であり技術なのも確かよ。ただ、幼い頃に自由に世界を広げる経験をしないと、もったいないわ。子供だから許される悪戯もあるでしょう? そういった経験をしたうえで、大人になってほしかった。
この考えは前世に引きずられていると思う。この世界では異端な考えなのはわかっている。ヘンリック様が強く言わない間は、レオンやローズを守ってあげたいわ。我が家に滞在する以上、ラルフも対象よ。ディは赤ちゃんだから、心配も先ね。
「疲れたぁ」
最初に列を離れたのは、親ドラゴンだった。ローレンツ様が休憩を口にしたため、次はラルフが声をかける。遊びに夢中な子供達を休憩させたくて、ローレンツ様は離脱したみたい。
「休もうか」
「うん」
レオンが素直に頷き、ちょっと不満そうなローズも誘う。ルイーゼ様がマルレーネ様に飛びつき、飲み物を強請った。笑顔で受け止めるマルレーネ様は、巻きスカートを外してルイーゼ様の首元に巻く。いわゆる子供用のエプロンね。
ルイーゼ様も慣れているのか、巻いてもらったスカーフを気にせずジュースを飲んだ。見ていたローズが「あたちも」と訴える。私、巻きスカートしてこなかったのよね。代わりになるもの、あったかしら?
「ローズちゃん、これどうぞ」
ユリアーナは、自らのウエストに巻いていたスカーフを外して差し出した。ベルトのように使っていたスカーフをエプロンにして「あんと」とお礼を言う。やっぱり外へ出たら、イヤイヤ期は消えるんだわ。
「ありがとう、ユリアーナ。助かったわ」
「飾りで巻いたベルトだから、平気よ」
微笑む妹に、ローレンツ様が話しかけた。
「ティール侯爵令息と婚約しているんだよね? 実は彼に頼みたいことがある」
気になる話に、カールハインツ様やフィーネ様も身を乗り出す。
「何でしょう?」
「経営学の成績がイマイチで、教えてほしいんだ。その……実は教師が同じ人で」
教師からオイゲンの話を聞いた。教えるのも上手だから、一緒に予習復習をしてみてはどうか。そんな提案を受けたのね。少し考えて、ユリアーナは「伝えておきます」と微笑んだ。その場で適当な返事をしないところが偉いわ。同じ年齢だった頃の私より、賢いわね。




