668.お姫様同士は仲良くなれそう
ローレンツ様と話し始めたユリアーナは、オイゲンのことをあれこれ聞かれたらしい。マルレーネ様やベッティーナ夫人と盛り上がり、眠くなったローズに促されて気づいた。もう遅い時間だわ。お昼寝させていないから、ローズが愚図り始めた。
レオンが何か言っても「やっ」と短く拗ねた声を出すだけ。首を振って拒否する余裕もなかった。これはまずいと話を切り上げ、困ったような顔のレオンに「帰る支度をしましょうね」と伝える。ドラゴンごっこの紐はラルフの手で、侍女に返された。
レオンはローズの金髪を撫でて、手を繋ぐ。これで準備完了ね。
「では、すぐにお茶会の予定をご連絡しますわ」
「ええ、楽しみにしています」
カールハインツ様は難しいでしょうが、フィーネ様はお誘いしたいと話した。頷くカールハインツ様の表情は柔らかい。いろいろと心配しておられたのかも。
「うぅ……」
目元を擦って唸るローズは、限界寸前。子育て経験のあるマルレーネ様が「あら大変」と心配そうに呟いた。ベッティーナ夫人も「難しい年齢ですものね」と苦笑いした。
会釈してローズを抱き上げたら、エビ反りで「やぁああああ!」と大声で叫ぶ。ああ、やってしまった。がくりと肩を落とす私に、レオンが袖を引いた。
「あのね、ろじぃは歩きたいの」
「でもお眠なのよ?」
「歩きたいの」
同じ言葉を繰り返すレオンに頷き、ローズを下した。ぐずぐずと洟を啜り、レオンと手を繋ぐ。でもラルフの手はダメみたい。お断りされたラルフはレオンと手を繋いだ。真ん中がレオンなのね。人気者だわ。
「またね」
言葉だけで挨拶するレオンに、ルイーゼ様は「うん」と素直に頷いた。ひらひらと手を振る。その手に反応したのが、ローズだった。たぶんレオンに振ったのだと思うけれど……。
きょとんとしたルイーゼ様が、にっこりと笑う。やはり可愛いお顔をしているわ。笑顔でまた大きく手を振ってくれたので、ローズも全身で大きく腕を揺らした。ルイーゼ様も、年下のローズ相手にお姉さん気分になったのかも。
許可を得られたら、お姉さんと呼べるかもしれないわね。微笑ましい気分で見送りを受け、部屋を出た。ふらふらと歩くローズが転びそうで心配になる。さり気なくリリーが斜め後ろに控えて、助ける態勢に入った。
「帰りか? ちょうどよかった。迎えに行こうと思ったのだ」
向かいからヘンリック様が大股で近づき、手前で止まった。
「ローズが眠そうだな。ラルフとレオンはまだ平気か?」
「はい」
「平気」
ラルフとレオンの元気な返事に、膝をついたヘンリック様は笑顔で両手を広げた。
「ローズ、俺と手を繋いでほしいんだが?」
以前に私がレオンへした行動を覚えていたのね。真似するヘンリック様をじっと見て、ローズはこくんと首を縦に振った。斜めに傾いたままよ? 子供って器用よね。
レオンの手を離さないまま歩いたローズが、ぽすんとヘンリック様に飛びつく。馬車に乗るまで手を解かなくて、レオンは背伸びしながら……ヘンリック様もやや屈んで王宮の廊下を抜けた。後で腰が痛くなりそうだわ。




