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手に入れた力

 体中が痛む。俺は一体、何を……。そうだ、虎!!


「うっ」


 勢いよく体を起こすと、俺はがれきの中にいた。


 ……なんで生きてるんだ? 俺。腹部を見ると、切り裂かれた跡がある。どうやら傷が浅かったらしく、治りかけだ。


 ここまで勢いよく吹き飛ばされたのにか。まぁ今はラッキーだと思って、流そう。


 問題はこれからだ。俺はかなり下の方まで下ってきた。今の俺ではどうあがいても勝てない魔物が跋扈する場所までだ。どうやって上に戻ったものか。


 茜の安否も気になる。それに家族も心配するだろう。特に妹が。できるだけ早く戻りたい。


 そもそもここがどこかだよな。


 俺の記憶が正しければ、俺はダンジョンの壁に激突して貫通したはず。


 ダンジョンの壁を貫通とかマジで意味が分からない。常識として、ダンジョンの壁は破壊不可だ。


 日本最強の探索者、久留米 亮さんもそう明言してる。


 んー……。とりあえずこの辺見て回ってみるか。幸いにして、魔物の気配は感じない。立ち上がって回りを見るとここはどうやら部屋のようだ。


 暗くて見えずらいが、中央に台座のようなものがある。周りには何も見えないな。ただの壁だ。


 とりあえず台座を調べてみよう。何かあるかもしれない。トラップか何かだった時はもう潔く諦めるしかない。


 どうせこのまま部屋から出たら死ぬんだしな。


 台座を調べてみると、魔法陣のような物の中央に何かが置かれていることに気が付いた。


 水晶か? この暗闇の中でも透き通っていることがわかる。人間ってそこそこ夜目が効くんだな。透明でも輪郭が分かるなんて。


 まぁそんなことはどうでもいいか。高く売れそうではあるし、一応持ち帰るか。いや、生きて帰れるかは別だけどな。


 水晶に触れたその瞬間、何かが俺の頭の中に流れ込んできた。これは、記憶?


『そんなに自分の魔力をいじくりまわして何をしたいんじゃお主は……』


 ゴスロリの用な物を来た幼女がこの記憶の主に向かって語りかけている。よく見ると幼女には角のようなものが付いている。


『俺のこの力を分けて、あの世界においておくんですよ。この空間を操る力を』


 記憶の主がそう語る。空間を操る力……。


『全く、どういう意図をもってそんなことをするのか……。儂には理解できんのう』


 幼女はかなり大げさに肩をすくめる。


『二つの世界は一度つながってしまったわけですから、理に干渉する力をどちらか一方に偏らせるのは危険です。最悪二つの世界が同時に崩壊する恐れすらある。この力を持つ俺だからわかるんです』


『なるほどのう。クローネとヴィオレはいいのか?』


 少し考え込んだ幼女からの質問が記憶の主に浴びせられる。一体誰の話なのだろうか。


『彼女たち力を分けてますよ。あの世界のどこに置くのかは不明ですけどね。理の力が誰かの手に渡るのであれば、正しい事ができる人の手に渡って欲しいと俺は思いますよ』


 記憶はここまでだった。


 理の力とはいったい何なのだろうか。まぁいいだろう、とりあえずは水晶の回収を……。


 あれ、水晶が消えてる。


 なるほど。俺の予想が正しければ。


「ステータス」


 こう唱えることによって、目の前にステータスウィンドウが展開され、ステータスが表示される。


◆◆◆

ステータス:空 隼人

レベル:4

攻撃:E

守備:F

魔力:B

知力:B

抵抗:B

速度:E

スキル:<空間魔法>

◆◆◆


 やっぱりスキルが追加されてる。ってんん?


 なんか魔法系のステータスめっちゃ強化されてないか? なるほど、察するにあの水晶は魔力の塊かなにかだったのだろう。


 俺はそれを吸収した。多分そういう解釈だ。


 つまり、俺は理の力の持ち主となったわけだ。どうやって力を使うのかはわからないけど。


『空間操作・削ぎ』


 技の記憶、だな。どうやらこの力を分けてくれた人物は相当心優しい人だったらしい。これの記憶があれば俺も空間魔法を扱える。


 この力があれば、地上に戻れる!


 急いで戻ろう。上の状況が気になる。


 この部屋から出てダンジョンに戻る。おそらくはかなり時間が経過しているので、俺がふきとばされた場所にはもちろんあの虎はいなかった。あいつは一体どうなったのだろう。


 それを知るためにもまずは上に向かわなければならない。急ごう。


 俺は記憶と勘を頼りに逃げてきた道をたどっていく。あの時は死に物狂いだった。正直正確な道は覚えていない。


 あの虎の影響か、いまだ他に魔物は見られない。結構なペースで10層ほどは上に上がれた。途中ゴブリンリーダーの一派と遭遇したが、空間操作・削ぎで一撃で全滅させることができた。


 この魔法は空間を削りとる力らしい。一撃で全員の胴体を削り取る事ができた。よし、見覚えのある、まだ記憶のある辺りまできたぞ。


 ここまできたらもうすぐだ。


 そして俺はついに茜が吹き飛ばされた場所まで戻ってきた。


 そこには血痕が残っているだけで、他には何もなかった。


 それもそうか。きっと茜も上に戻っているはずだ。


 俺は急いでダンジョンから出るために上に向かった。そうしてすぐに5層から駆け上がってダンジョンから出た。


 入り口付近にはたくさんの人がいて、俺がダンジョンから出てきたその瞬間、一斉に何やら言いはじめて騒がしくなった。すると人ごみの中から1人が飛び出してきて、俺に抱き着いてきた。


 ここねだ。無事にダンジョンから出ることができていたらしい。


「無事でよかった……。本当に……」


「俺はなんとか無事だったよ。茜は、大丈夫だったか?」


 きっと救援に来てくれた探索者が地上に連れてきてくれてるはずだ。


「茜……一緒じゃ、ないの?」


 ……は? 茜は間違いなくあの傷では動くことができなかったはず。救援の探索者に連れ戻されたものと思っていたのだが。そうではなかったと?


「戻ってきてないのか……?」


 最悪の事態かもしれない。あの虎に連れ去られたか、それとも、命が尽きていてダンジョンに吸収されたのか。いや、血痕が残っていたということはその線はないな。


 ……殺気? 先ほど俺が出てきたダンジョンから殺気の波動を感じる。あの虎! 出てくる気だな!?


「お前ら!! ダンジョンから離れろ!!」


 人だかりの中から1人の男性が前に出る。彼は札幌で有名な探索者、有馬 猛。Aクラスだ。彼の言葉に一斉に人だかりが散っていく。だが、このままじゃ皆が逃げるのが間に合わない。


「ここね、皆と共に逃げてくれ」


「隼人も一緒に逃げようよ!! 危ないんでしょ!?」


 ここねは涙目で俺に向かってそう叫ぶ。


「いや、俺はここであいつを止めるよ。下で手に入れた力もある。大丈夫、死にはしないさ」


『空間操作・断壁』


 空間を断絶させる防御系空間魔法。この使い方も記憶にある。これを使えればおそらくあいつ相手でも死なない。猛さんもいることだしな。


「じゃあ私も残る。回復役、必要でしょ?」


 涙をぬぐったここねがそういったとき、アイツはダンジョンから飛び出してきた。その瞬間に猛さんが剣を抜き目にも止まらぬ速さで斬りかかった。


「お前、流星はどうしたんだよ!」


 あの虎は猛さんの攻撃を上に跳躍して躱し、近くに着地した。そして、前足を掲げ振り下ろした。


 あの前足の爪、魔力が集中している。おそらくは魔法!


「『断壁』」


 俺が断壁を展開すると同時に、虎から風の刃が放たれる。しかし、その風の刃は断絶された空間に激突し消滅した。


「坊主! いい魔法を使うな! 助かった!」


「はい!」


 猛さんにお褒めいただいた。このままサポートしてあの虎を討伐してもらおう。俺が現状使える空間魔法だと虎を倒す決定打に欠けるからな。


「隼人、いつの間にそんな力……」


 ここねは驚いた様子だ。まぁ戻ってくる前は何の能力もなかったし驚くよな。


「話は後だ。今はあいつだけに集中しよう」


 この街人、そしてここねを守るために。


 


 

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