浅照間島
チャリンチャリン…。
母さんの経営しているカフェ。
今日はいつもよりも人も多く、賑わう日。
アルバイトのあずみさんも忙しそうに汗を流している。
「いやあ、この前はこっぴどく怒られてよー。あのジジィなんか、まだ怒ってるんだぜ?」
「優希、本当にごめん。完全に僕のせいだよ」
「まあ、あたしは結構楽しかったお祭りだったけどねえ、そうそう!ぬいぐるみ三個ゲットしたのよ!」
「あかねぇ、そんなにいらねーだろお…」
「んふふ、私もいい思い出になった日だったかな…」
僕らの変わりようもない会話。
祭りの事や、僕と進藤で悪さを行ったその夜のこと、進藤も二ノ宮も、君も覚えている。
おそらく、進藤家も母さんもこの島の皆んなの記憶に新しく残っている。
そして、あの洞窟も残っている。
「うえーい、餓鬼どもお待たせしやしたあー」
「そうそう、洞窟のことで怒られてた時なんだけどよ、ジジィが一個教えてくれたんだよ」
僕らが注文した飲み物があずみさんによって運ばれてくると同時、向かいに座る進藤が口を開いていた。
「ごゆっくりねえー」
飲み物を配り終えたあずみさんに僕らが礼を言った後、あずみさんが僕らの窓際の席から離れていく。
そして僕は、次に進藤の口から溢れる言葉を待ち侘びていた。
「あのさ、あの洞窟は夏樹の親父さんが高校生の時に見つけたみたいだぜ?あんな見つけやすい場所にあるのに、夏樹の親父さんが初めて見つけたとか、先祖代々何やってんだよって話だよなあ、頭悪いんかな?」
「あんたよりは頭悪くないだろうよ。て言うか、あの洞窟って何があるの?別に、興味ないけど」
興味もなさそうに進藤の話をあしらい、飲み物を飲みながら、スマホを弄りながら。
でも僕は、進藤が父さんのことを話した時に感じた引っ掛かり。
釣り針に心臓を引っ掛けられ、主の場所へと導かれているような。苦しくて痛い感覚。
足元も気にせず引きずられているような。
何か大切な事を忘れてしまっている様な気がしている。
だから、助けを求めるように、隣にいる君の顔へと目を向けた。
「おいしぃ〜」
暑い今日に店内の涼しさ、甘い飲み物を呑気に味わうヘナヘナになっている君が可愛かった。




