第46話
弾き飛ばされた俺は空中にいる。それに加え無防備。
ベルゴールがそれを逃すはずがない。
「くらえ!」
真上から大男の大剣を振り下ろす。
真上からなら、真剣白刃取りで……。
「って出来るかぁぁぁ!」
セルフボケとツッコミを虚しく決めながらも、俺は退避の方法を考える。
いや、どーやっても無理だろこれ。
しゃーねぇ。
俺は袖口から新たに札を取り出し、大男の剣に向かって放る。
「爆ぜろ」
投げた魔符は大剣に触れた瞬間に小規模の爆発を起こす。
起爆符ってやつだ。
「ぐ……」
至近距離からの爆発なので俺も食らうことになるが、背に腹は変えられないわけで、その衝撃を利用して俺は何とか大剣からの攻撃を逃れた。
「がっ!」
地面に強く体を打ち付けるも、すぐに体を起こしてベルゴールを視界にいれる。
追撃されたらかなわねえからな。
奴は既に次の攻撃体勢に入っていた。
大剣を切っ先を俺に向けて笑っている。
「よけることをオススメするよ。【スーパーゴールデンソード】」
そう言うと黄金の剣が何本も俺に飛んでくる。
大男サイズの剣が。
これはデカイな。
いや、というかそれよりも……
「名前だせぇよっ!!」
何回つっこんだだろうか?
技自体は多分強いんだが、いかんせん名前がダサい。
はっ!
これは名前がダサいからって油断させる作戦か。
ベルゴール、お前はただのナルシストじゃないんだな……。
「ってんなわけあるかぁぁぁぁぁぁ!!」
そんなことしてる間に俺の身の丈くらいの剣が何本も……、食らったら確実に死にますね。
「しゃらくせぇっ!!」
俺は剣の僅かな隙間をぬってギリギリのところでかわしていく。
「なっ!?」
ベルゴールは目を見開く。
ふふ……、驚いたみたいだな。
だが、遅いぜ!
剣を全てよけきった俺は完璧に奴の間合いに入った。
ベルゴールは慌てて剣を構え直そうとするが、明らかに俺の方が早い。
「だっしゃぁぁぁ!」
「しまった!」
慌てるベルゴールをよそに思い切り奴の脇腹に蹴りをいれた。
「なんてね」
「ぐっ……」
ベルゴールがニヤリ……と笑った瞬間に俺の足に痛みがはしる。
かってぇ!
なんて硬い甲冑だよこれ。
「体術には少しばかり自信があるようだけど、その程度じゃ僕の鎧は砕けないよ」
誇らしげに笑うベルゴール。
迂闊だった。
魔力で出来ていても何とかなると思ってたぜ。
それにあいつを吹っ飛ばすくらいは出来るかと思ったんだが、ビクともしねぇ。
「ならその空いてる顔面もらうぜ!」
甲冑の構造上、顔はある程度空いているためそこに蹴りを叩き込む。
が、奴は持っていた盾でそれを防いだ。
「そうくるのは予想済みさ」
「ですよね」
皮肉たっぷりに同意してみる。
「さて、今度は僕の番だ」
ベルゴールそう言うと、奴の持っていた盾が輝き出す。
やば……。
「吹き飛びなよ」
ゼロ距離なのでよける暇なんてない。
そこに奴の盾から黄金の光が放たれた。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
それをまともに食らった俺は文字通り吹っ飛び、コロシアムの壁に叩きつけられた。
「ぐっ……」
勢いよく壁に打ち付けられたので、まともに声を出すこともできない。
俺はゆっくりと地面に倒れた。
「フッ…この僕に勝てるわけないじゃないか。まぁ、よくやった方だけどね」
どこか遠くから奴の嫌味が聞こえてくる。
しかし俺はそれを何を思うこともなく仰向けに倒れている。
俺の視界に入ってくるのは雲一つない青空。
あぁ、こんな綺麗な青空を見ながら終わるってのも悪くない。
「おい、リオード!! 何寝てんだよ!! 立ち上がれよ!!!」
どこからかシンの声が聞こえてくる。
いつもいつも元気な奴だ。
いい意味でウザい奴だよな。ベルゴールとは全然違う。
「リオードくんっ!!」
これはテトラか……。
マイペースだけど、とても優しくてみんなの事を考えてくれるよな。
俺の耳には聞こえてこないけど、多分グランも何か言ってるんだろうか。
そして、リリーも。
あいつは普段から無口だから声は出してないだろうが、あんだけ大口叩いた俺の事をどう思ってるんだろうか。
たった一ヶ月だけど、この4人とクラスメートになれて本当に良かったと思えるぜ。
おっと、誰かが俺に近づいてくる足音が聞こえる。
多分審判担当の先生だろうな。
恐らくこの後コールするんだろう……俺の負けを……。
『兄さん……?』




