第44話
ベルゴールはその光景に驚きを隠せない様子だった。
得意の魔法剣が直撃したはずなのに、目の前の男は無傷で立っているのだ。
「いや~、危ねえ危ねえ……」
目の前の男、俺は服に着いた埃を軽く払う。
「何故だっ! 何故君はこうも平然と立っていられる!!」
声を荒げてしまわずにはいられないようだ。
それほどまでに信じられないのだろう。
「いやいや、平気じゃなかったよ? 中々際どかったし」
でも……と言葉を区切り、イタズラな笑みを浮かべる。
「咄嗟にコイツを展開したから助かったのさ」
そう言って3枚の魔符を広げて見せる。
「そんな物で僕の魔法剣を打ち破れるものか!!」
「いや、実際に破ってんだから仕方なくね?」
あくまでも冷静な態度。
そこから幾らかの余裕をチラつかせる。
「そんなわけ……そんなわけあるかぁぁぁ!!」
コロシアム全体に響き渡るくらいの大声。
目の前の現実を否定するかのように叫んだベルゴールは自身の周りに再度魔法剣を創り出す。
「今度は10本だ、10本同時に防げるはずなんてないっ!!」
自らを鼓舞するように笑い、創り出した10本の魔法剣の先を全て俺に向ける。
「防げるものなら防いでみなよ。【シャイニング・ソード・ブレイカー】っ!!!」
「何か聞いたことあるっ!!」
思わずツッコんでしまったじゃねーか。
だが初動こそ遅れたものの、動揺を見せることはない。
(これは3枚じゃ無理か……!)
あくまで冷静に、すぐ様和服の袖口から6枚の魔符を取り出しそれを目の前に放る。
「符術……六芒結界」
小さな声で紡がれた言葉に答えるかのように放たれた魔符は動きだし、六芒星の形へと展開される。
俺の結界が完成したと同時に、ベルゴールの放った魔法剣がそれを直撃する。
ぶつかった瞬間、爆発のような凄まじい轟音が辺りを襲う。
しかし、その後は一方的なものだった。
ベルゴールの魔法剣は俺の結界を壊そうとしたが、ヒビすらもいれることなくチリのように消えてしまった。
「そ、そんな……」
ベルゴールはゆっくりと剣を持っていた手を下ろした。
「ふぅ……」
俺が小さく息を吐くと同時に展開されていた結界は消え去った。
六芒結界は俺が使う結界の中でも5本の指に入る防御力をもつ。
ただ6枚の魔符を使うだけでなく、それ専用の魔符と6枚に均等に魔力を込め、キチンとした手順を踏まないと発動しない。
まぁ、あくまで対人用の中で……だけどな。
『これは何という事でしょうかっ!! リオード選手、キース選手の技を次々と破っていきます!! 誰がこんな展開を予想したでしょうか!!』
「あー、うっせーな」
ちょいちょい大きな声でナレーションするもんだから煩くて煩くて。
まあそれよりも……ベルゴールは強いな。
今んとこ比較的互角に進めることができているが、まさか六芒結界まで使うことになるとは。
9位でこれってことはファウストやミラはどんだけ強いんすか。
でもまあ、これなら勝てるな。
と安易な考えが俺の頭に浮かんでいた。
「ふふ……」
「ん?」
空耳か?
今、ベルゴールが笑ったような気がしたんだが。
「ふふふ……ふは……ふはは……ふはははははは!!」
え、何こいつ……急に笑い出したんですけど。
気でもふれたのかしら。
「いやはや、ここまでやってくれるとは思わなかったよ。君は強いね、それは認めざるをえないよ」
「へ? あ、いや……あざっす」
今度は褒め出したよ!!
何か変なもんでも食べたのかしら。
「だから、僕も本気を出すことにするよ」
本気……だと?
「まさか1年生如きにこれを使うことになるとはね」
楽しそうに笑っているベルゴールだったが、俺は気づいていた。奴が放つ魔力が桁違いに跳ね上がっている事を。
「さぁ、君はどこまであがけるかな?」
ニヤリ……と笑みを浮かべるとベルゴール更に大きな魔力を放出した。
「くっ……」
予想外の魔力の大きさと圧力に俺は顔をしかめる。
ベルゴールの放っている魔力はある程度の大きさになると、そこから凝縮されていった。
身体中を鎧のように覆っていき、それは奴の持つ剣にまで及んだ。
「さぁ僕の力の前に跪けぇぇぇぇっ!!」
そう叫ぶベルゴールの魔力は金色となり、俺はその眩しさに思わず目を瞑ってしまった。




