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バカと天才は"神"一重  作者: 抹茶
入学編
30/88

第22話 


 辺りを照らしていた眩い光が徐々に収まっていく。


「何っ!?」


 刮目したベルドはその光景に目を疑う。


「は!?」

「なっ!!」

「えぇっ!」

「……!!」


 それは周りで見ていた4人も同じだった。

 先程まで輝きを放っていた簪が消えたと思えば、そこには1人の女性が立っていたからだ。

 見た目は20代くらいに見える。長い黒髪にパッチリとした目、白ベースで帯は翡翠色の和服に身を包んだ綺麗で妖艶な女性だった。


「リオくん久しぶりですね」


 透き通るような声で女性はニコリと笑いながらそう言った。


「あぁ、久しぶりだな雪」


 リオードも微笑みながらそう返した。


「あの~リオードさん?」


 遠慮がちにシンがリオードに声をかける。

 見るとシンを含めグラン達も唖然とした表情でリオードを見ていた。


「ん?」

「そちらの綺麗なお姉さんは誰ですか?」

「あら、私?」


 指名された雪と呼ばれた女性は自身を指差す。


「あぁ、コイツ? コイツは俺の──」

「──どうも、リオくんの妻の雪といいます──」

「──ってんだ。」


 シンの質問に答えるリオードの言葉を見事に被せて自己紹介をする雪。


「「「「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」

「いや、違うわ。お前もなに言ってんだ」


 リオードは後頭部を掻きながら否定する。


「コイツは雪、遥か昔に武神として名を馳せた女だ」


 余りにもざっくばらんな説明だったが、ベルドには引っ掛かることがあった。


「武神……だと?」

「ああ~、武神というかローランドのには崇められている様々な神がいるだろ? コイツはちょっとそいつらと違って、武器に魂が宿り、そして神として存在しているってとこかな? ま、今は俺の大事な相棒ってとこだな」

「あらあら、嬉しいこと言ってくれますね~」


 相棒と言うところに雪は言葉通り嬉しそうに反応した。


(武神って聞いたことねえぞ!? というか何だよあの巨乳! 羨ましい……)


 ベルドだけは雪の体をジロジロ見ながらやましいことを考えていた。


「ねぇ、リオくん。あの人何かヤラシイ目で私見てません?」


 雪はこちらをジロジロと見てくるベルドを苦笑いしながら指差す。


「おぉ、それで今からあの人駆逐するんだよ」

「何だ~、なら早くやりましょう?」

「ちょっと待て、オメーら言い過ぎだろ」


 言われたことがショックだったのか、地面に膝をついて落ち込む……が、直ぐに立ち上がる。


「というかお前はこの美人を戦わせるのか!?」


 そう言ってリオードを睨むベルド。

 まるで男のくせに何て野郎だ……とでも言いたげな感じであった。


「いや、戦うのは俺よ? コイツは役立たずな俺に力を貸してくれるだけよ。」

「役立たずだなんてそんな……リオくんは天才じゃないですか~」


 雪は笑いながらそう言うとリオードに抱きついた。


(((う、羨ましい……!)))


 それを見ていた男3人は素直にそう思った。

 特にベルドはリオードを殺すのではないかというくらいに、目をギラギラさせていた。

 テトラとリリネットは男達を呆れたような目で見ていた。


「何か私達注目を浴びてませんか?」

「確信犯だろうが……さて、お喋りはここまでにしてそろそろ続きといこーぜ?」


 男達からの視《死》線と雪の言葉を華麗にスルーしつつ、リオードはベルドにそう告げた。

 ベルドは未だにリオードを睨んではいたが、戦う気はあるようで身体中から魔力が溢れていた。


(リオード……ぜってぇ潰す……)


 リオードはそんなベルドを見て苦笑を浮かべた。


「いけるよな雪?」

「えぇ、いつでも」


 視線を交わすことは無かったが、リオードも雪も表情は自信に満ち溢れていた。


「んじゃまあ……“武神化”」


 リオードが小さく且つ力強く言葉を紡ぐと、雪の体が白く光だす。

 それは淡く儚げだが、どこか荒々しさを感じる……矛盾した光だった。

 そしてその光が収まると雪の姿は消えており、代わりにリオードの左手には白と翡翠色の2色に輝く鉄扇が握られていた。


「何だそれは……?」


 ベルドはリオードの鉄扇を見て訝しげな顔をする。


「これは神楽……さっきの雪が武神化した姿ってやつだ」


 ニヤリ……と笑みを浮かべ神楽を口元に添えるリオード。

 男であるリオードだが、その姿はとてつもなく妖艶に見える。


「……!」


 そんなリオードに何かを感じ取ったのかベルドは対抗するかのように銀を構えた。

 先手を打ったのはリオード。

 一足跳びでベルドの懐に飛び込む。その速さはあ番始めに見せたのと同じもの。


(これはさっきの……!)


 見るのが2回目ということもあってかベルドの反応は速かった。

 横薙ぎに振られた鉄扇……神楽を銀で受ける。


 金属同士がぶつかる特有の音が響き、次の瞬間には2人は既に体勢を変えていた。

 銀でリオードの首元を切りつけようとするが、頭を下げてそれを回避。

 その下げた頭を狙い逆の手に発生させた銀を飛ばす。

 しかしリオードは慌てることなく神楽でそれを弾く。

 肉弾戦では埒があかないと判断したのか、ベルドはリオードから距離をとる。


「シッ!」


 短い息と共に銀を五本投擲する。

 しかも今度は雷の付加された銀だった。


(ただの鉄扇なら感電するが……どうする?)


 リオードは銀に雷が付加されている事に気づくと、神楽を広げそのまま腕を振るった。

 するとそこから一瞬強い風が巻き起こり銀の勢いを殺してしまった。


「なっ!」


 予想していなかった行動にベルドは一瞬動きを止める。


「余所見してんなよ?」


 そのベルドの後ろからリオードの声が聞こえる。

 振り向くといつの間にかベルドの背後にいたリオード、そして既に神楽を振るっていた。

 ヒュン……と小気味のいい音の後から発生した風がベルドを襲う。


 鋭いそれは鎌鼬のごとくベルドに向かってきた。


「しゃらくせぇ!」


 強くそう叫んだベルドは自身の右手から雷を起こし、それを鎌鼬に向かって翳した。

 そこから放たれた雷は網目状に広がりリオードの放った鎌鼬と衝突する。

 不気味な音をたてて拮抗した鎌鼬と雷は辺りに爆風と砂煙を撒き散らしながら姿を消していった。


 その中で2人はお互いに距離をとる。


『あの人中々やりますね~』


 ふと神楽から雪の声が聞こえてくる。

 どうやら武神化し、鉄扇となっても意思はあり話すことは出来るようだ。


「だよな……だからこそテンション上がんだよ」


 嬉しそうに唇を舐め、雪に答えるリオード。

 その視線の先ではベルドが魔力を練り上げているのが見えていた。

 先程の比ではない魔力の上昇、そしてベルドを纏う雷はその質を増したのか尋常ではないほど輝きを放っていた。


『リオくん、アレは結構ヤバイですよ』

「……らしいな」


 雪のアドバイスを素直に聞き入れるリオード。

 それとも自身から見てもその異常さに気づいたのか……。


「ちょっと遊びすぎたな、もう時間がねぇや。俺延長はしない派なんで」

「いや、娼館に行くおっさんか」


 ベルドのボケに軽く突っ込む。


「いや~まさか一生徒……しかも新入生にここまで手こずるなんてな」

「いやいや気のせいでしょ。俺なんてホント凡人ですって」

「謙遜はよせよ、たかが凡人がここまでやったら世の中は大変な事になっちまう。というかお前差が激しすぎてわからん」

「あぁ、だから俺は大変だわ。だって仕方ないじゃない思春期だもの」

『何を言ってるんですか。リオくんはこの前も素晴らしい活躍だったじゃないですか』

「お前はちょっと黙れ」


 突然口を挟んできた雪をたしなめる。


「というわけでだ、次で終いにしねえか?」

「いや、あの本当に止めてくれません? そんなの食らったら洒落にならないッス」


 今にも襲ってきそうな雷を見て体を震わせるリオード。


「バーロ、これの対処の仕方によって成績付けるんだよ」

「この……鬼畜!」

「ハッ……美女をたぶらかした罪は重いぜ」

「まだ気にしてたのかよ!」


 ベルドはリオードの制止を聞くことなく腕を構えた。


「さて、防げよ~……雷狼ラルフ

「って聞いてえぇぇぇっ!」


 ベルドの体全体を覆っていた雷が右腕に集約され、一気に放たれる。

 それは身の丈がベルドの5倍ほどもある狼の形となっていきリオードを襲う。


(さて、どうでるか)


 ベルドは一回の瞬きすらも惜しむようにリオードの挙動をチェックしていた。

 一方その対象となったリオードは何かしら慌てたように口をパクパクと動かしている。

 恐らく雪と会話をしているのだろう。


「流石に無理だったか?」


 そう独り言を呟きひとつ瞬きをしたとき、リオードが神楽を構えたのがわかり、声が小さく耳に届いた。














春雪しゅんせつの舞」



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