一話『階級とドライアード』
その日を境にギルドでの依頼と狩りを再開し、効率を上げていった。
目と体を強化して動体視力と回避能力等をあげ力に物を言わせ生活すればいつのまにか半月。
異世界転生してから1ヶ月の熊を倒した今になるということだ。
熊の血抜きから皮や肉を削ぎとりなどを行ってギルドで換金と報告などを行って一日が過ぎた。
次の依頼をこなすと階級が上がるらしい。
階級とは冒険者ギルドにての簡単な実力を示すものだ。
下からアイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナとなっている。
ブロンズから上にはまた別に階級が存在し階級の名前の後ろに付けられる。
それぞれ下から-《マイナス》、付けない、+《プラス》、++《ダブル》、+++《トリプル》
となっている。
ブロンズで言えばブロンズ-、ブロンズ、ブロンズ+、ブロンズ++、ブロンズ+++
という感じ。
アイアンに階級がないのはあくまで見習い。
冒険者研修生なのだ。
勿論、俺は卒業している。
今の階級はブロンズだ。
次の依頼達成でブロンズ+になる。
階級が上がると受けれる依頼が増える。
危険度が上がると必然的に報酬が増える。
取りあえずの目標が家の購入なのでできるだけお金がほしい。
今の報酬だけでは家を買うのに後数年はかかる。
多少危険でも今の俺なら最悪逃げることができる。
攻撃魔法をガンガン打ちまくって力技で逃げればいい。
油断は禁物だが魔力回復に関してはそこまで心配する必要はないし。
そうと決まれば早速冒険者ギルドで依頼をこなす。
内容は薬草採取。
比較的簡単な依頼だ。
早速魔物が蔓延る魔の森に入る。
地道に薬草や毒消しに使われる毒草、麻痺状態から回復するための薬品の元になる麻痺草などなど。
できるだけ虫食いが少なかったり痛みが少ないものを摘み取ってく。
薬草を刈り取っていると目の前に空飛ぶ20cmくらいの小さな羽の生えた女の子がピコピコと飛んでいた。
「ん?君は...妖精?」
そういうと妖精はウンウンと頷いた。
「こんなところで何しているんだ?他の人間にあったら捕まえられて売られちゃうぞ?」
フルフルと妖精は首を振る。
「とにかく早くここから去るんだ。俺は君を捕まえないから逃げるんだ。」
フルフルとまた妖精は首を振る。
「何がしたいんだ...ん?」
妖精は俺の摘んでいる薬草を指さしながら何かを訴えようとしている。
「もしかしてそれ摘んではいけなかったのか?」
フルフルを首を振る。
「違うのか。」
ウンウンと頷き、俺の袖をつかんで引っ張り始めた。
「なんだ?なんなんだよ。」
俺は妖精に引かれるまま森の中を歩いていく。
「どうしたんだ?この先に何かあるのか?」
しばらく歩くとまるでくり抜いたかのような周りを森に囲まれ中心に大きな一本の木、大木と言っていいほどの大きなの木が植えられている広い草原に出た。
というかこの森こういう広場が多いな。
秘密の湖みたいな場所とかこことか。
妖精はまだ俺の袖をひっぱりながら中央にある大木のそばまで連れてこられた。
「一体ここに何が...あるん...え?」
妖精は足元をクイクイと指さしながらエッヘン胸を張って自慢する。
足場には先ほど摘んでいた薬草よりより上位の薬草、上薬草が植えられていた。
中にはいまだに育つ環境や条件が解明されていない魔法草と呼ばれる魔法瓶の上位互換である上魔法瓶の元となる薬草や、先ほど述べた上薬草より更に上位の薬の花と呼ばれるこれまた栽培方法が確認されていない花があった。
ちなみに上薬草は少しだけ栽培方法が確認されているが成功率は150分の1程度でとても貴重だった。
薬草はポーションの素材に、上薬草はハイポーション、魔法草は上魔法瓶、薬の花はメガポーションとそれぞれ素材の元になっている。
もうひとつ魔法草にももう一段階あり上魔法草があり、これと薬の花を調合しとある特殊な処理を行うとエリクサーというどんな傷も疲労も魔力も状態異常でさえ完全回復する薬になるらしい。
残念ながら上魔法草は生えていなかったがこれだけの魔法草が育っているのがギルドなどにバレると相当大変な事になるのはバカな俺でも分かった。
「誰かいるのですか?」
この薬草の草原を秘匿するかどうか考えていると大木から綺麗な女性の声が聞こえてきた。
良く見ると先ほどここに連れて来てくれた妖精も大木の周りを楽しそうに飛び回っている。
「あら、貴方が連れてきたんですね?ダメですよ?ここにニンゲンを連れて来てはいずれ荒らされてしまいます。え?大丈夫だって?はぁ、貴方が言うなら。」
声の主の正体は分からないがどうやら妖精と会話しているようだ。
「えぇ、そうなんですか?!なら安心できますね!では私もキチンと挨拶をしなければ。」
すると大木の後ろからピョコっとまるでこの世の人間とは思えない絶世の美少女がいた。
正し、肌は緑と松の木のような茶色。
「君はドライアード?」
ドライアード
通称、森の番人とも呼ばれており容姿は先ほど述べたように緑と濃い茶色の肌をしたこの世の物とは思えないほどの美少女。
その容姿ゆえに妖精よりも価値が高値で貴族の間で取引されている。
それゆえに金欲しさにドライアード達が乱獲され数は激減しドライアード自身人間の前には姿を滅多に見せなくなってしまった魔物というか人種というか分からない境界線にいる生物。
ただ貴族などは大金を叩いてまで手に入れたいので魔物に分類されている。
「そうです。貴方は人間ですね?」
「そうだよ、本来ドライアードは人間の前に姿を現さないって聞いてたんだけど。」
「その通りです。」
「俺が人間と分かって姿を現したんなら早く隠れるんだ。金目当ての連中に見つかったら大変な事になるぞ!」
「分かっています。大丈夫です。この森自体が私の領域。すべて私の管理下です。なので人間が来ればある程度なら感知できますし、それにこの森自体には強力な幻術が施されています。」
「そうなのか、でも俺も人間だ。早く隠れたほうがいい。」
「貴方なら大丈夫です。この子がここに帰ってきたのが証拠です。」
「どういうことだ?」
「もし貴方が悪い人で浅はかな人ならこの子はここに居らず売られているでしょう。」
そう言いながら先ほどここまで俺を連れてきた妖精を指さした。
「そして訳は言いませんが思慮深い悪人ならここにはそもそも来れません。」
「結界か。だがそれを看破できる奴ならどうするんだよ。」
「それこそあり得ません。それ程頭が回る悪人ならもっと効率よく自分が汚れないように金を稼ぎますし。」
成程、だが万が一が無いわけじゃない。
「貴方が考えていることも分かります。万が一そんな状況に陥ったとしても助かります。そう言う人間に限ってその時に失敗を犯すのですから。」
因果応報ということか。
「それにそんな万が一を考えて生きていたら息苦しいですし。」
「それもそうだな。」
にしても先ほどから目に入る上位の薬草が気になる。
「この薬草は君が育てているのか?」
「えぇそうです。というか貴方方の言う上薬草などは私たちドライアード達が居ないと育たないんですよ?」
「能力と言うことか?」
「それに近いものがありますね。貴方方の同胞のキゾク?とか言われる人が連れていった私の仲間達は意図的にそれを隠していますけれど。」
つまり上薬草や魔法草はドライアード達にしか作れないと言うことなのだろ。
何かそれにまつわる固有能力的な物があるのだろう。
魔法があるわけだし。
「この子から話は聞きました。魔物から救ってくれたそうですね?」
は?一体なんの話だ?
「俺はその妖精を助けた覚えなんて無いぞ?」
先ほどの妖精はその場でホバリングしていて俺の言葉を聞いてガーンと効果音が聞こえるほど分かりやすくビックリして落ち込んでいた。
「違うのですか?この子はクマの魔物から助けて貰ったと言ってますけれど。」
ドライアードの横でホバリングしている妖精はブンブンと首がもげる勢いで激しく頷いている。
「クマ?それならこの前倒したけれど、あれは俺を見つけて俺に向かって襲いかかってきたから倒しただけなんだけれど。」
「そのクマは貴方を見つけるまでこの子を追いかけまわしていたようですよ。」
成程、魔物化すると動物たちは見境がなくなるからなぁ。
「あぁ、そのお礼で俺をここに連れてきたのか。」
妖精はウンウンと頷いている所を見るとあっているようだ。
「だがここの薬草は持っていけないな。」
「何故です?」
「俺の受けた依頼はあくまで薬草なんだ、それは上薬草を持って行けば買い取ってくれるだろうけど、その後間違いなく詰問されてここがバレて全てむしり取られたあげく君とその妖精は捕まって売られるだろう。それに...」
「それに?」
「ここはあくまで君の場所だ。妖精が許可しようが君の物である限り取っていくことは俺には無理だ。」
「誠実なんですね。ですが私は許可しますよ?唯一の話相手であるこの子を助けて貰ったのに何も渡さずに返すのは流石に心が痛みます。」
「それもたまたまだから気にしなくてもいい。」
俺もここから上薬草などを持ち帰って詰問にあうのは勘弁願う。
「そうですか、ではこれだけ受け取って貰えますか?」
ドライアードはそう言うとどこからともなく三つの瓶を取り出す。
「これは?」
俺は彼女に聞きつつ鑑定の魔法を発動する。
エリクサー
効果:即時回復(極大)、魔力完全回復、疲労回復、状態異常回復(極大)
と出ている。
「知っているかとは思いますがこれはエリクサーと呼ばれる作成できる回復アイテムの最上級の物です。」
「みたいだな。まさかそれをくれるのか?」
「えぇ、今は3つしかありませんがこれから幾らでも作ることが可能ですし。」
「お前、エリクサーまで作れるのか?!」
「材料さえあればレシピも知っていますので可能です。その材料も作れる訳ですし。」
確かにこれだけの薬草を作ることができるのだからエリクサーの元になる材料位、直ぐに集まるだろう。
「レシピは教えてくれないのか?」
「教えても構いませんが作ることは不可能ですよ?」
なんだと?
「どういうことだ?」
「エリクサーを作るためには種族適性が必要なんです。適正があるのは森の守護者と呼ばれるハイエルフか私達ドライアードのみです。」
ここでハイエルフについて説明しよう。
ハイエルフとは簡単に言えばエルフ達の中の貴族や王族に当たるものだ。
勿論、エルフと同じで人間が嫌いな傾向にありエルフより閉鎖的な種族である。
エルフの国は数あり、正式な手順さえ踏めば人間だろうと歓迎はされないが入国はできる。
だがハイエルフの国は1つしかなく、その国はエルフでさえ簡単に入国できるものではない。
人間なんて入れる人はいない。
一国の国王であろうと、それが獣人だろうと入ることはできない。
入れるのはハイエルフもしくは特別な許可を得たエルフのみである。
そんな閉鎖的な種族だが魔法適性は人種の中でトップだ。
様々な種類の魔法を使用し、使役し、敵を屠る。
更に回復アイテムの作成のレシピは全てハイエルフ達が作ったと言われている。
そんなハイエルフ達が何故頑なに鎖国をしているのかといえば、ハイエルフの住む森の奥にある国に正体がある。
その国の中心にはユグドラシルという神樹、別名世界樹と呼ばれるとてつもない巨大な木があり、それを守護しているらしい。
その木には色々伝説があり、例えば不老不死の実を宿らせるとか神樹の中に本物の神様が住んでいると言われたりするらしい。
だが神が住んでいると言われても不老不死の実を実らせると言われてもなんの不思議もないほどのサイズを誇っている。
なんせハイエルフの国から遠く離れた今いるこの国からその神樹が見えるのだから。
神樹の根付近に住みそれを守護し、魔法適性や回復アイテムを作らせると右に出る物はいない種族。
それがハイエルフだ。
では話を戻して。
「幾ら作れると言っても相当大変じゃないのか?」
「えぇ確かに作るには1週間に1個が限界です。それでも貴方にこれを差し上げたいんです。」
「3つ作るのに三週間・・・」
「どうしましたか?」
「いや、なんでもない。でも本当にいいのか?」
「構いません、どうせ暇ですし。これから幾らでも作れます。」
「そうか、ならありがたく頂こう。....ちなみになんだが毒とか無いよな?」
そうドライアードの彼女に聞くと
「失礼ですね、毒なんて入れてませんよ。」
プクゥと頬を膨らました。可愛いんだけど。
まぁもし毒など入っていても鑑定の魔法で見抜けるから気悠になるんだが。
「そうだよな、失礼した。それじゃこれで。」
「えぇ、よければまた来て私の話相手になってください。」
「分かった。必ずまた来るとしよう。」
そうして俺は、彼女の元を去る。
その時、俺のポーチにエリクサー3つ分より微かに重さが増えたことはまだ知らない。
連続で投稿させてもらいました。




