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銀翼の飛翔  作者: fey5
第6章 学園と仲間と ―2年度―
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92話 交流戦開始

新暦1348年 ガレリア大陸 アルゼン帝国南東部 コロムロ




開会セレモニーの翌日、早朝から抽選会が行われ、その後研究の部の発表会と魔法の部の演技が始まった。


研究の部だけは発表する順番の抽選で、魔法の部と戦闘の部はトーナメントの抽選だ。


魔法の部は闘技場で、研究の部は大講堂と呼ばれる室内で同時に開催され、トキはケオランたちと魔法の部の観戦に出かけることにした。


研究の部の発表内容を軽く聞いてみると、実用的な内容ではなかったので興味が失せてしまったのだ。


闘技場前の掲示板には(学生は賭けれないが)オッズ表が掲げられており、総合……アリジニステン:1.3倍、ヒッポフ:1.8倍、クロウリア:3.0倍、カルティア:3.3倍、タルム:4.1倍とあった。


この他に、部門毎でも賭けがされていて集まる観衆の熱気は凄まじいものになっている。


どの部門でも応援票が入っているのだろうか、アリジニステンの生徒は軒並み大人気のようだ。


トキは戦闘の部個人戦で2.1倍と2番人気で、個人についても情報が売り買いされているらしい。


ちなみに1番人気はアリジニステン生徒会長にしてエースと言われるアイシュタットだった。


抽選によって組み合わせも決まり個人戦、団体戦の組み合わせは以下のようになった。



挿絵(By みてみん)



団体戦出場者の名前を見ると、アリジニステンAはトラヒコ=アサクラ、キョウヘイ=ショウブ、カナコ=フジガサキ、オウカ=サカノウエ、チヅル=シラスカで、アリジニステンBはハルト=ムカイ、オサム=ヒガ、モモカ=マツザカ、サチエ=タケザト、ウメノ=キクオカとあった。


当然だが聞いたことのある名前は一人もいない。


ファエルたちが初戦から当たるので注意を呼びかけようとしたが、なんと言うべきかわからなかった。


ひとまず先に個人戦と団体戦でアリジニステンBチームが出てくるので、それを見てから考えることにした。



魔法の部は各学年10人ずつのトーナメント方式でそれぞれ1人の演技は1分間となっており、判定は出演者2名とは違う学園の代表者(教師)3名が行う。


同じ学園の生徒同士の場合は、勝ち残っている者が多い学園の判定者が外れる。


よって判定は2-1か3-0で勝敗が決まる。


判定者には公正な判断を期待したいところだ。


交流戦においても、魔闘技大会のように拡声の魔道具を用いての実況と解説がされていた。




「さぁいよいよ、史上初となる五カ国の魔法学園同士で争われる、魔法学園交流戦が開催されます。実況は私ナイザー=イェンガー、解説はなんと!このコロムロを治めるゲッサントゥ辺境伯様ご本人に来て頂いております。ゲッサントゥ辺境伯様、今日より3日間解説宜しくお願い致します」


「どうも、ギルバート=ゲッサントゥです。今回は若き才能を見るために一魔闘技ファンとして来ておりますので、堅苦しいことはなしでお願いします」


「わかりました。ゲッサントゥ様は魔闘技のファンということですが、どれくらい観戦してきたのでしょうか?」


「そうですね。かれこれ30年は見続けています」


「それは長い観戦歴ですね~。それに基づく観点から、この交流戦で注目している生徒はいらっしゃいますか?」


「各校とも前評判通りエースと言える有力な生徒がいますので、まずこの5人は要注目でしょう」


「と、なりますと……アリジニステンのアイシュタット=フォールセム君3年生、カルティアのトキニア=ゼペルルクス君2年生、クロウリアのシルエ=ストックフォードさん1年生、タルムのライ=エン君2年生、ヒッポフのフォート=ライレリック君3年生、この5人でしょうか?どの生徒も戦闘の部個人戦に出場していますね」


「はい、中でもカルティアのトキニア=ゼペルルクス君は史上最年少での剣魔十傑入りを果たした実力者です。暴風竜を討伐したとして知られており、何かと話題の尽きない生徒ですので今回も最有力候補と見て間違いないと思いますね」


「そうですか。総合的な力を見るとどうでしょう?」


「アリジニステンが一歩リードかと思っていますが、生徒の半数を直前になって入れ替えてきたという情報もあって、未知数であるという点もあります。何かと波乱が起きそうな気がしますね」


「わかりました。実況、解説は公正なものを心がけてまいります。皆さんもどうぞお楽しみください。では、いよいよ魔法の部の開催です」



帝国びいきなものかと思っていたので、この放送には少し驚いた。


ファンファーレが鳴って1年生の演技者が登場する。


どの生徒も緊張の色は隠せない様子で見ているこちらがハラハラしてしまう。


1年生に関してはドングリの背比べといったもので、魅せるというより魔法をただ放つという者が多かった。


中には緊張のあまり発動が不発してしまう哀れな子もいた。


その中で目立ったのはタルムのサッチ=メイという女の子とカルティアのウィリアムスだった。



「タルムのサッチ=メイさんは1年生にしては難しい並列型の水魔法を披露しました。二つの水を操作してまるで水が遊んでいるかのような演出で観客を魅了。カルティアのウィリアムス=リングバーグ君もまた並列型の魔法を使い、火を動かしながらその周りを水で螺旋運動させて同時に操作するという難しい魔法でした。ゲッサントゥ様、いかがだったでしょうか?」


「1年生にしてはこの2人が抜きんでていますね。2属性を操るリングバーグ君の方が難易度は高いですが、メイさんの魔法は魅せ方が素晴らしく甲乙つけがたいですね。おそらく決勝はこの2人ではないでしょうか」



ゲッサントゥ辺境伯の言うとおり、決勝はこの2人となったが、ウィリアムスは魔力切れで最後のフィニッシュを失敗してしまって準優勝におわった。


結果を見る前から相当悔しい表情をしており、彼には苦い思い出となってしまったようだ。


2年生になると並列や混合魔法を使う者も多く、演技と言えるだけの魅せ方をしていて、3年生にもなれば魔法規模も大きくなり混合魔法を並列で展開する者までいた。


(この部門じゃ俺なら1回戦負けだな)


自分の魔法がいかに演技には向かず、おもいっきり戦闘向きであると思い知らされた。


ちなみに、カルティア2年のクェーリは2回戦止まり、ナナテアは1回戦で優勝者と当たってしまい1回戦敗退という結果になった。



2日目を終えての結果は以下の通りだ。


魔法の部

3年

優勝:エナ=フィン(タ)、2位:インカリ=マニファー(ク)、3位:ミニミ=クレール(カ)


2年

優勝:オウグスト=コーナー(ア)、2位:ビットナーレ=スキジンフ(ヒ)、3位:リィン=カウ(タ)


1年

優勝:サッチ=メイ(タ)、2位:ウィリアムス=リングバーグ(カ)、3位:ツーネ=ホーイム(ヒ)


研究の部

優勝:クロウリア、2位:アリジニステン、3位:ヒッポフ、4位:カルティア、5位:タルム


総合順位

1位:クロウリア…280p、同1位:ヒッポフ…280p、3位:アリジニステン…260p、同3位:タルム…260p、5位:カルティア…180p



「4校がほぼ並び、カルティアだけが少し伸び悩む結果になりました。この結果はどう思われますか?」


「上々と言えるのはヒッポフではないかと思います。ヒッポフには戦闘に長けた生徒が多いので、優勝に食い込む可能性が高くなりましたね。次がアリジニステンで、クロウリアは1位とはいえ優勝するにはここでもっと差をつけたかったでしょう。タルムとカルティアは少し厳しい状況にはありますが、まだまだ明日からの結果次第ではわかりませんので頑張ってもらいたいものですね」


「なるほど、これは明日から始まる戦闘の部が楽しみになってきました。ゲッサントゥ様、本日は的確な解説をありがとうございました。また明日も宜しくお願いします。では、皆さんまた明日お会いしましょう」




その日の夜、カルティア魔法学園の出場生徒全員が出席しての会議が開かれた。


最下位という結果だが、首位と100p以内というエレスの想定をギリギリでマークしているらしい。


研究の部は妥当な線ではあったものの、魔法の部でベスト5以上に入ったのが2人だけだったのが痛い。



「これでトキ君には絶対に優勝してもらわなくてはならなくなりました。他にベスト16以上を3人は欲しいところです。有力な生徒がいないCブロックに組まれたシュトゥーム君、インテリーア君、マッキス君には特に頑張ってもらわないといけません」


「始まる前から言ってるだろ?個人戦の優勝は任せておけ」


「個人戦で200p、団体戦で60pあれば優勝争いできる可能性がありますね」



しめて440pとなり、残り420pを各校で散らばってくれればまだわからないはずだとファエルが分析する。


(それだけポイントを確保してもどっか1校が稼いでしまっては優勝はできねーんだよな。だとすれば、問題は……)


トキはひとついいか、と挙手して皆に告げる。



「今言うべきか迷ったんですが、一応注意して見てほしい連中がいるんで先に言っときます。明日ですが、コクハルン先輩、初戦の相手に気をつけてください。それとこいつとこいつとこいつ、あと団体戦に出てくるアリジニステンの生徒全員は注意が必要だと思う」


「それはなぜだ?彼らを知ってるのかい?全員聞いたことが無いような名だが」



トーナメント表を指さすトキにルウが問いかける。



「知らないけど、知ってるってとこですかね。この中の1人、もしくはこいつら全員、俺並に高い魔力量を持ってる可能性があります」


「「「なっ!!?」」」



その場にいる全員が驚愕し息をのんだ。



「あくまで可能性であって確信はありません。熟練度はそう高くない可能性もありますので、できれば短期決戦に持ち込む方がいいでしょう。戦術の基本ではありますが、相手に力を発揮させずに勝つことをお勧めします。特に全く情報が無い初戦で当たるコクハルン先輩は慎重にいきたいでしょうが、そういう可能性も視野に入れて戦い方を考えてみてください。もし、先に出てくるジュウゾウ=オグマ、ゴンタ=ザマ、イブキ=アキミヤの実力が3人とも高いなら、今言った連中は全員同じくらい実力があると思った方がいいです」



元々アリジニステンは優勝候補ではあったが、皆そこまで差はないと思っていた。


しかし、トキの言葉で否応もなく明日はアリジニステンに注目することになると誰もが考えていた。


トキだけは窓の外の星を見ながら笑っている。


(さて、鬼が出るか蛇が出るか。どうなりますかね)


明日はいよいよ戦闘の部前半戦が始まる。

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