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銀翼の飛翔  作者: fey5
第2章 後悔と決意
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5話 新たなる生、新たなる世界

新暦1334年 ガレリア大陸 カルティア王国 ファウスタイン侯爵領 パイオニル村




前世で俺は大切な人たちを守れなかった。


あの時のことを思いだすと気分が悪くなる。


あんなことはもう懲り懲りだった。


理不尽さや自分の不甲斐なさ、そして味わった絶望。


それを思い出した俺は泣き出し、次第に俺の中で何かが爆発しそうになった。


しかし、すかさず扉を開けて入ってきた母親が俺を抱き上げる。


暖かく包まれる感覚に脱力し、俺は気持ちの落ち着きを感じた。


(母親か……)


この包まれる感じは「愛」とでも呼べばいいのだろうか。


そう思うと、少しの恥ずかしさと笑いがこみ上げてくる。


正直、「愛(笑)」と思ってしまうのだ。


でも、もしこの人が死んだりしてしまえば、また前の家族や彼女を失ったときのような感覚に襲われる、そんな確信が持てた。


(家族か……)


前世では守れなかったが、今世では守ろう。


守れるくらいの強さを身に付けよう。


後悔に苛まれる過去があったからこその決意。


それを胸に秘めながら、俺は母親の腕の中で眠りに落ちた。





俺、トキニア=ゼペルルクスがこの世界で生まれてもうすぐ3年になろうとしていた。


話すのは辿たどしいといったカンジだが、だいぶこの世界の言葉も聞き取れるようになっている。


地域によって方言が混じったりするが、この世界では1000年以上前からデヴィンツ語という言語が共通語となっているらしい。


そんな長い間変化がなかったことには驚きであり、新たな言葉を覚えるのはなかなか難しかったが、徐々には理解でき始めている。


ただ、3歳児な体のせいで指先はまだまだ不器用だし、舌はうまく回らず流暢な会話はできない。


まぁ、できても騒がれそうなので年相応に振舞おうと思う。



ドテドテとだが歩けるようになったので周囲の様子もわかってきた。


ここはガレリア大陸のカルティア王国ファウスタイン侯爵領のパイオニル村という結構な辺境らしい。


どういった地理なのかはまだよくわからないが、とりあえず貴族様はいるとのこと。


パイオニル村にはおよそ100人弱ほどが暮らしており、農作物と狩猟、時折くる行商との取引によって生活が成り立っている小さな村だ。


文明としては前世よりも遥かに劣っているが、静かで長閑ないい村といえる。


父ロクスは、昔は剣士として旅をしていた経験があり、今では警護隊長兼狩人として家を支えている。


髪は濃い茶色で瞳が黒く、なかなか整った顔立ちと無駄のない体つきをしているのだが、抱かれると痛いので髭は毎日剃ってほしいと常々思っている。


母に弱く、息子に弱く、同じ警護隊で一番下っ端のコニーには強い。


トランプの大富豪でいうところの7か10。


ローカルルールの7渡し、10捨てがあったら使えるってカンジ、かな?



母リリーは村では薬師をしていていろんなことを知っている。


髪はさらさらとした銀髪で瞳は薄い碧だ。


そして、息子の俺から見ても美人だと言える。


椅子に座って遠く外を眺める姿勢は、薄幸の姫君と言えるくらいに一児の母と感じさせない美しさを持つ。


父との様子から薄幸とは縁遠いわけだが……見えないとこでお願いします。



そして、俺トキニア=ゼペルルクスは髪がリリーに似た銀髪、瞳はロクス寄りで薄い黒をした女っぽい顔つきをしている。


というより、この年齢ではまだまだ外見からは判別しにくいものだと信じたい。


それも、髪を生まれてから一度もまだ切ってないせいか、男の子とはわかりにくくなってしまっているのだ。


村に鏡はないので、桶の水で初めて自分の顔を見たときは驚いた。


きっと切ったら漢とは言わずとも男にはなるはず、と思いたいのだが、綺麗なんだから切るな、と両親に止められて後ろで縛っている状態だ。


強くなるにもまず形から入ってもいいはずなのに頑として頷かれない。




形以外の話をしよう。


この村でずっと長閑に暮らしていくかもしれないが、強さを身につけるために今は世情などの勉強と体力作り(ランニングのみ)と魔法の練習をしている。


そう、この世界には魔法が存在したのだ。



『魔法』


この世の理に魔力を用いて介入(放出)し、改変し、固定または運動させることによって発動される。

このとき、明確に発動させる魔法をイメージする必要がある。

様々な魔法が確認されているが、基本的には6つの属性に帰属した現象が多い。

解明されていないことの方が多いとも言われている。



ちなみに、魔法を発動させるのに必要な魔力の量は生まれつき決まっており、少ないと発動しなかったり現象や効果が小さかったりする。


そういう人は魔力自体を認識できないことが多いそうだ。


そのため、少しでも魔法を使える人はおよそ100人に1人といったところらしい。


実際、この村ではリリー以外には2つ隣のおばあちゃんが使えるくらいだ。



限られた魔力を効率よく運用するには、明確なイメージを思い浮かべ、必要分のみの魔力を介入(放出)に費やし、自分の適正に合った魔法属性に改変するのがよいとされる。


魔法属性には火・水・風・土・闇・光の6属性があり、俺が憧れる氷魔法などは水の派生系統に当たり、使える人はほとんどいないらしい。


発動する魔法は個々人で必要魔力量が異なるため、そこは手探りで修練するしかない。


魔法の練習でまず最初にするのが魔力を認識することだったが、それについて俺はヤツのことに思い当たった。


この世界に生まれてから感じられていた体の中の異物。


今となっては表に出てきてモヤモヤすることもなく、感情とともに無意識にコントロールできている。


さらに、意識してしまえば自由にその形を操作できるようにもなっていた。


そうリリーに伝えると、美人が台無しの顔をして驚いた。



現在、勉強も魔法も母リリーに教えてもらっている。


もう少し大きくなったら剣術を教えてやるからなと、父ロクスは息子と一緒にいられない現状を悲しげにしていた。


今では村で薬師をしているリリーだが、魔法使いとしての才能もあり、旅をしている途中でロクスと出会ってこの村にやってきたらしい。



魔力操作ができた俺を見て喜んだリリーが「今日はお祝いだわ!」と狂喜乱舞しながら家へと駆け出した。



「ちょっ!?か、母さん!走らないで!」


「あ、そうだった!うれしくてつい、ね。ロクスが帰ってきたら報告しなくっちゃ!」



母リリーは今、2人目の子供を妊娠している。


それを忘れて走り出すものだからかなり焦った。


弟か妹か、それが問題だ。


前は弟で随分と可愛がったものだ。


初めてとなる妹もいいし、かと言って弟も捨てがたい。


兄か姉というのにも憧れもするが、今更言っても仕方がない。


今は兄としてのできるだけの準備をする他ないだろう。


いざ、強く頼れる兄を目指して!



俺、ツンデレな妹に「お兄様って冷たいですよね」って言われた後に「アイスマンだからな」っていうあの名ゼリフを言うんだ。

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