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銀翼の飛翔  作者: fey5
第5章 学園と仲間と ―初年度―
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50話 フェレアルート突入?

新暦1347年 ガレリア大陸 カルティア王国 王都 カルティア魔法学園




ギルド活動が開始されてからトキの周りは忙しさを増していた。


特に商業部が大変で、報告と予算計算、物品購入と駆けずり回り、本部で数字と格闘している姿が見られるようになった。


商業ギルドと職人ギルドに問い合わせ、現在では急ピッチで炉と釜が同時進行で建設されていた。


作り方を職人ギルドで教えを請おうとしたのだが、本職の人が無償で指導してくれることになったのだ。


学園側に新たに申請して、畑の隣が建設予定地となった。


現在では周囲が整備され、耐火性レンガを積み上げる段階になっていた。


会計のジャクエルの予想どおり、この釜と炉、屋根付き小屋だけで前期予算は溶けてしまっていた。


屋根や小屋に関してはチーグルが陣頭指揮をとっている。


今後の施設増設も考えた配置で作れられており、新たに職人のための作業部屋を建設予定だ。


学園から提供された作業部屋の方では皮・細工・織物・石工職人たちが学園祭に向けて作品作りに励んでいる。




学園ギルドが学園祭で催すものは4つ。


料理、集団演武、模擬戦、弓技大会だ。



料理は(トキの要望もあって)ピザ、ジュース、デザートと種類は絞ることにした。


ピザに関しては、チーズの買取を商業ギルドに依頼した。


ベースとなるソース作りは料理職人が釜完成までに試行錯誤を繰り返している。


ソースを含めた野菜は農園で作っているものを使うようにしており、釜が完成すれば自家製の燻製肉も作れるようになるのでそれもトッピング材料となる。


ジュースも同じようになるが、4種の組み合わせに頭を悩ましているようだ。


デザートに関して、この世界には砂糖は存在しているが、そこそこ高価なものであり、富裕層の嗜好品といった位置にあるようだ。


それも焼き菓子が主流でクッキーやパン菓子などレパートリーは少ない。


しかし、おそらく作ったことがないであろうものをトキは考えていたので、そのレシピを譲渡することで商業ギルドから格安で売ってっもらうことになった。


そのデザートとはクレープだ。


決してトキがたんに食べたかったわけではない。


そもそも、乳製品があまり流通していないため、生クリームというものがない。


トキは片っ端から市場まで乳を出す家畜を見に行き、脂肪分が多そうなものを探した。


そして、探し当てたのがクレウスという頭に1本の角が上に生えた黒牛だった。


このクレウスも骨や皮、肉として牧畜されているもので、乳を飲んでみたトキは吐き出すことになった。


味は牛乳っぽいが、飲めないほど濃厚で水分が少なくドロッとしていた。


トキの朧げな記憶では、生クリームは生乳を放置して上澄みするものだったような気がしたので、数時間放置してみた。


すると出るわ出るわ、分厚い膜が出来上がっていた。


脂肪分は30%くらいあるのではないかというもので、これでは飲めたものではない。


慎重に上澄みをすくって量を集める。


当たり前だが味は微妙でコクはある気がした。


細かい砂糖を入れて、これを最近練習していた旋風の魔法で攪拌する。


最初は飛び散りまくって辺りがひどいことになったので、うまく調整しながらとなった。


するとどうでしょう、徐々に生クリームが泡立ち、柔らかなホイップクリームに……ならない。


20分攪拌しても固まる気配もない。


(作り方間違えたか?攪拌はよくできてるはず。確かこんなかんじで生クリームとった感じがしたんだが。固まる……固める……冷やすのか!?って、氷ねーし!ニッセルトのおっさんを呼ぶか?いや、無理だろ。あ~俺が真のアイスマンだったら!ってか、作れなかったら砂糖分丸損じゃねーか!)


どうしようか悩んだトキは一人熟考する。


(オーブンなし、冷蔵庫なし、氷もなし、バターもなし、これで作れるもの。ケーキ不可。アイス不可。シュークリーム不可。団子不可。プリン不可。プリン?できないか?砂糖と卵と牛乳があればいける気がする)


クレウスの乳なら濃厚なプリンができそうな気がする。


これからの作業は全て~したような気がする、というものになる。


牛乳を温め、砂糖を溶かし、といた卵を投入。


鍋でお湯を温め、小さなカップに入れたものをつけて、蓋をして蒸す。


適当な時間で見るとそれっぽくなった。


味はプリンっぽい。


(っぽい、って感想が多いな。きっと、平のお母さんだったら簡単に作れるんだろうな)


さらに、砂糖と水でカラメルソースを作る。


これは簡単で少し香ばしいちゃんとしたものができた。


ここまでのところを料理職人に教えて、あとは試行錯誤を重ねてもらうことにした。



集団演舞や模擬戦、球技大会では、衣装や装備を統一することになった。


それぞれの職人が作業に追われているが、炉がまだ完成していないため刀剣の作成が間に合うのか危ぶまれている。


防具は出来るだけ革製のものを揃えるようだが、かなりの人数になるのでこちらも時間が押しているようだ。


ちなみに弓技大会は一般参加、飛び入り参加も可としており、弓矢は全て学園ギルドの弓職人の手作りを使うことになっている。


冒険者、魔法ギルドのメンバーはどのような演出にするかを議論している。


模擬戦では間引いた刀剣を使う予定だが、負傷者も出ることは予想されているので、当日は治癒魔法が使えるシンクが待機することになっている。



これらに合わせて学園ギルドの紋章を作ることも提案された。


で店の看板や装備などにつけるためだ。


ギンを描いたポスターを使おうという意見があったが、それならハクも入れるべきとの意見もあがった。


すなるとデザインを書き直す必要があったのだが、チーグルは建設の方で忙しく、他の人に描いてもらうことになった。


しかし、チーグルほどうまく描ける人がおらず、チーグルの手が空くのを待つかとなった。


すると、トキに当てがあることを思い出した。


もう2年以上前になるが、猫探しを依頼したハウゼン男爵家のフェレアだ。


あのときはその腕前に驚いたものだ。


後日、久方ぶりにハウゼン男爵家を訪問することになった。



突然の訪問にハウゼン男爵夫人アーニャは歓迎してくれた。


事のいきさつを説明すると、フェレアは王都の幼年学校に通っていてもうすぐ帰ってくると言われた。


魔法の才能もあったようで、再来年トキが3年のときに魔法学園に入学するつもりらしい。


あれからのことを話しているうちにフェレアが帰ってきた。


金髪の髪はそのままにサイドを後ろにまとめ編みこんだようにしている。


2年のうちに少し大人に近づいたようで、垂れかかった目といいますます母親に似てきていた。


フェレアは貴族の女性らしい仕草でトキに挨拶をした。



「お久しぶりでございます、トキニア様」


「お久しぶりです。ご夫人に似られてますますお綺麗になられましたね」



確か以前はさんづけだったのに、様呼ばわりされて少しドキッとした。


社交辞令として言ったのだが、フェレアもドキッとしたようにほんのり頬を染めた。


フェレアも席につき依頼を打診すると、快く承諾してくれた。


次の休日に魔法学園まで来て描いてくれるそうだ。


要件が済んだためこの日はこれでお暇することにする。


報告や予算などで目を通す書類は山積していることを告げると、二人共残念そうな様子だった。




後日、魔法学園の本部で書類にサインをしながら支持を出していると、来客を知らされた。


そろそろかと思っていたが、織物職人から予算の申請書類が提出されたため、迎えにいくことを忘れてしまっていたのだ。


一旦放置したトキは走って案内所まで向かった。


そこで待っていたフェレアは横にある掲示板に未だ貼られていた学園ギルドのポスターを眺めていた。



「お待たせしまして申し訳ありません」



トキが声をかけるとハッとしたようにフェレアがこちらを振り返った。


今日はワンピースタイプの白い膝丈ドレスを着ていた。



「その絵が気になりましたか?お恥ずかしい文面ですが、絵の方は私も気に入っています」


「私も一目見て気に入りました。このような絵を描ける方がいらっしゃるなら私は必要ないのではないでしょうか?」


「正直言いますと、今回はその者が現在手が空いていないためフェレア嬢に依頼したのです。ですが、私はあなたの絵も同じように感動しました。きっと皆納得できると確信していますよ」



フェレアはトキの期待に焦ったかのように頑張ります、と答えた。


ハクがいるところまでフェレアを連れて歩いていると、ちょうど大きな図面を持ったチーグルを見かけたので声をかけて呼び止めた。


チーグルは白いタオルを頭に巻いてバンダナのようにしていた。



「悪いな、忙しいところを。こちらハウゼン男爵家のフェレア嬢。学園ギルドの紋章デザインを依頼した方だ。こちらはチーグル=クアンです。あのポスターを描いた本人で、今は施設の建設に携わっています」



フェレアを見て茫然とするチーグルを肘でつつく。



「お、お初にお見えかかります、フェレア嬢。このような姿で申し訳ありませんが、完成を楽しみにお待ちしております」


「こ、こちらこそ。チーグル様に及ばないまでも精一杯のものを描かせていただきます」



そして、お互い見合って止まる。


フェレアもチーグルも顔を赤くしながら。


(うわぁ~分かりやす。ビンゴっちゃったか、これ)


どうしたものか困ったが、軽くコホンと咳払いをして二人の甘ったるい空気を流す。



「じゃ~ハクのとこに案内するから」



一礼してからフェレアはトキを追った。


後ろを見るとチーグルはまだ見ていた。


(この依頼が終わったらチーグル連れて男爵家にお礼言いに行くか)


めんどくさいが両者とも世話になっているので、間に入ってやろうと考えていた。


(チーグルは確か平民だったけど、大丈夫なのかな?男爵家も当主も気さくでいい人だったけど。まぁ~あとは本人たちに任せるか)


チーグルも坊ちゃんな髪型を除けば可愛らしい感じで、小柄なフェレアと似合いそうではある。


ここで、一生ものの借りを作っとくのもいいなとトキは黒い笑顔を浮かべていた。

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