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銀翼の飛翔  作者: fey5
第5章 学園と仲間と ―初年度―
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49話 学園ギルド発足

新暦1347年 ガレリア大陸 カルティア王国 王都 カルティア魔法学園




学園ギルド設立の申請から2週間後、ようやく承認の通知がきた。


予算案の方も大まかには申請した通りとなった。


前期金貨10枚、後期10枚、年間で金貨20枚である。


予定通り、まず施設内の備品などを優先することになった。


この予算を管理するのは、商業部からトキの補佐としてついた2年のジェクエル=ハミントンである。


伯爵家の次男らしく、実家からは独立して行商からでも始めるつもりだったらしいのだが、自衛するくらいの魔法力は身に付けようとこの学園に入学してきた。


今までは空いた時間に独立資金をこつこつ貯めていたが、将来を見据えて大所帯を運営するこの機会を逃したくないと立候補したのだ。


魔法の成績は良くはないらしいが数字にはめっぽう強く、予算案作成時にも活躍してトキを多いに助けてくれていたので満場一致で決まった。


ジェクエルのように自衛や進路の保険として入学してきたものは職人部や商業部に多い。


組織図も着々と完成している。


トキを頂点に補佐・会計にジャクエル、商業部が冒険者部と魔法部、職人部に二人ずつ、農業部に一人が付き、それぞれのギルドに卸さない・売却しない物は引き取って小売に出し、利益が出た場合は組織の予算に回す。


トキがスカウトした新聞クラブの人がこちらに出向する形で情報部もできた。


情報は情報部に直接提出し、それらをまとめたものを閲覧できるようにしたり、緊急性の高いものは連絡網によって伝えられる。


学園側からは敷地内にあるいくつかの施設が貸し出された。


本部となり報告会や情報が集められ閲覧できる会議室、農業部のための学園端の畑予定地、職人部の作業部屋がそれにあたる。


予算や利益によって随時拡充されていくだろう。



設立に伴ってトキはそれぞれの部長と共に王都内の各ギルドへ挨拶回りをした。


敵対勢力とみなされたり、相手にされない可能性も考えていたのだが、トキの名前が効力を発揮することになった。


どこでも銀翼がきたとすぐにギルドマスターまたは上層部の人間が対応してくれたのだ。


指導という点で各ギルドとも良好な反応を示し、今後おおまかな協力的な姿勢を見せてくれた。


特に農業ギルドがとても協力的で、今進めている畑作りから指導員の派遣を約束してもらえた。


一応漁業ギルドにも顔を見せたのだが、部員がいないので本当に顔見せだけになった。



備品の買い付けを商業部に担当してもらう一方、放課後などに手が空いた人は派遣指導員の元、農業部の畑作りを手伝っている。


20m×40mと小規模であるが、土づくりからしているから大変だ。


やはりというべきか、この時は土属性魔法を使える人が活躍した。


地質的に向いていなかったので、800m四方を深さ50cmの深さで土を掻き出して、まるごと入れ替えることになったのだ。


農業ギルドの紹介で菜園に向いた土をもらい、それらを運ぶのにはハクを始め農耕馬を使った。


ハクが俺を農耕馬扱いするなと機嫌が悪かったので、うまいこと収穫されたら食べさせてあげることを約束した。


植えるものは果菜類4種、葉菜類1種、根菜1種、茎菜類2種だ。


名前を聞いてもどんなものなのかわからないが、果菜類は全て果物のようだ。


収穫されたものを使って学園祭で出店しようとトキが提案したため、間に合うようなものを今回は苗から育てることになった。


初年度なので失敗しても仕方がないが、記録をまめにとって来年に活かせれるようにとだけ伝える。


着々と進んでいく現状に、将来は家畜も飼いたいと農業部の部長が口にした。


それを聞いて乳製品について質問してみた。


牛やヤギの肉は見たことがあるが、牛乳やチーズなどは見たことがない。


すると、農業部の人が大規模な牧畜はされておらず、西の方で見かけると話した。


王都では鮮度の問題で毛や皮、肉として売られていることがほとんどらしい。


牧畜している人たちは乳をそのまま飲んだり、酒や固形物に加工して長期保存しているが、詳しくは知らないとのこと。


(固形物……チーズか?もしそうなら…ピザ食いてぇ)


そこからのトキの行動は早かった。


まず、商業ギルドのギルドマスターに牧畜農家を紹介してもらう。


おいしい料理が作れる可能性がある、とだけ教えた。


大商会の商会長でもある彼は目を光らせながら了承した。


仮にうまくいかなくてもトキに借りを作れる、と考えたのだ。


ギルドで金を卸したトキは休日前の夕方にハク、ギンとともに目的地に向かって空を飛んだ。


王都から西に全力でハクを駆けた。


地図を見ながら飛んでいると山羊や羊の群れが見え、そこから少しいったところにテントのような建物があった。


人がいたので紹介状を見せて乳製品を譲ってもらうことができた。


白っぽい円形の固形物でかなり大きい。


見た感じではチーズのようだ。


作り方も教えてもらったが工程が複雑で長いし、かなり時間がかかるようだ。


普段は生乳をそのままか一度茹でて冷ましてから飲むのがほとんどだそうだ。


チーズを作るのはもしもの備えとして余ったものを使い冬に向けて作るらしく、その内失敗するものも多いらしい。


トキが譲ってもらったのは去年の冬前に作ったものなので、だいぶ水分が抜けて表面は固くなっている。


同じものを試食してみると、確かに濃いチーズの味がした。


失敗したものは、と聞くと匂いが臭いので捨てたと言われた。


作って1年は大丈夫と言われたので、今ある分は全て売ってもらうことにし、礼を言って王都に帰ることにした。


成功したものでも匂いはすごいのでハクが嫌がって大変だったことは追記しておく。


ギン?離れて飛んでいました。



帰ったトキは食堂の人にお願いして、買ったチーズは全て保管してもらうことにした。


あとピザに必要なものは生地、ソース、具材、窯だ。


商業部と職人部の部長にパン職人に当てはないか尋ねる。


すると、職人部に火魔法を使うパン屋見習いがいるという。


至急その者を呼び出した。


突然ギルドマスターと部長二人に呼び出された1年アーネスト=リングルは困惑していた。


その3名を伴ってトキは食堂に向かった。


お願いしてパンを一つもらったトキは薄く切ったチーズを乗せ、アーネストに魔法で焼いてもらった。


香ばしい匂いが漂い、ほんのり焦げ目が入った程度で止める。


パンを切り分けて食べる。


(うん、あとはトマトケチャップがあればそれっぽくはなるか)


焼いたチーズを初めて食べた三人は感激しているが、まだ未完成だと主張する。


残り必要なものを告げると、農業部の意見も聞くことになった。


農業部の部長も交え、本部で議論する。


窯については借りれることもないらしいが学園からは遠く、食堂にも窯はあるが毎日休まず稼働中だ。


そこで、じゃ~学園内で別に作っちまおうとなった。


本職の人に任せると予算オーバーとなるので手作りになる。


材料費だけでカツカツになりそうなため、定例会議で賛否をとってからとなった。



しかし、これには会議で待ったがかかった。


他の職人たちがそれなら炉を先にしてもらいたいらしい。


農業や冒険者、魔法ギルドで活動するものに武器をこしらえたいとのこと。


なるほど、と周りの同意を集め、窯は後期に持ち越そうと意見が出た。


そこでさらにトキが待ったをかける。



「学園祭では学園関係者以外も来場するはずです。去年の盛り上がりはどうでしたか?」



学園や生徒側はあまり派手なことはしなかった、商会が店を出してた、クラブの試合を見せたり、そんな声が2年生からあがった。



「せっかくの年に一回の行事です。周囲ではなく自分たちが参加してこそ意味があります。私たちで盛り上げ、私たちも一緒になって楽しみたいじゃないですか。その機会で自分たちの活動をアピールできればなおよし。最初が肝心です。学園ギルドが今後どのように見られるか。嘲笑される?相手にされない?ただ集まった烏合の衆?俺はそんな風に見られるのはごめんだ!俺はこの学園ギルドを誇りにしたい!だから妥協はしない!俺が払ってやる!足りない金額は俺に言え!ただし、必要なものだけを予算に組め!学園祭を目標に学園ギルドは全力を尽くす。いいな!?」



おおお、と歓声があがる。


途中から熱くなってしまったが、気にせず指示を飛ばす。



「鍛治職人は職人ギルドで本職の人を紹介してもらえ。頭を下げて教えを請え。金がかかるなら会計に要請しろ。それと炉・窯の大まかな材料費と工程期間を早めに商業部に報告。ついで、完成以降の制作スケジュールも作っとけ。料理系職人は窯を使ったものと農園で採れるものを基本的に使う前提で学園祭で出すものを決めろ。試作品を作ったら定例会議で全員の意見を聞く。試作も含めて予算をしっかり考えろよ。それ以外の職人は自分たちで作れるものを使った出し物を冒険者部、魔法部の人間と話し合え。農業部は農園の管理を徹底しろ。できる限り自分たちで作ったと言えるようにするぞ。商業部は各ギルドの報告・連絡・相談を怠るな。さらに商業部部長には来年以降に備えて、毎日活動日誌を書く事、情報部への提出を義務づける。以上。なにかあるか?」



全員の中で会計のジャクエルだけが挙手をした。



「今ギルドマスターが言ったようにすると、前期の予算だけでは確実に足りません」


「大体でいい。いくらになる?」


「備品や畑に関する費用を引いて予算は残り金貨6枚と少し。これからの活動費を全て学園祭につぎ込むとしても炉と窯、それらには屋根か建物もいるでしょう。燃料費、各種素材・材料費用、どれだけ少なく見積もっても金貨10枚、できれば20枚必要です」


「ふっ、その程度か。ギルドマスターをあまり舐めるなよ。白金貨の用意をしておこう!それと商業部に追加だ。3年後5年後10年後の学園ギルドの活動目標をたてろ。先を見据えて予算を組むことを忘れるな!忙しくなるぞ?他に意見は?なければ各自行動に移れ!」



再び歓声があがる。


(大見得を切ったけど人材を集める、使う、鍛えるという先行投資だと考えよう。俺は必要なときだけ動く。あとは状況をよく知っておくこと)



学園ギルドはこうして活動を開始した。


目指す目標は夏休み前の学園祭。

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