21話 一時限目 魔法体系 リッケンボルト先生の初授業
新暦1341年 ガレリア大陸 ゴウホウ霊山本山頂上
「ギーーーーーーン!帰ったぞー!」
迷宮の主を倒したトキは、底がついたギン成分を補充しにテントに突撃した。
キュェエエエ
2日振りにトキに会えたギンも、嬉しそうに拙い羽ばたきを見せながら寄ってくる。
「おおおお!少し見ない間にこんなに立派になって!」
「たった2日じゃろうに、たいして変わっとらんわぃ」
「ギン2日会わざれば刮目して見よ!なぁギン」
キュェ
2日間放置したせいでテントの中は糞が散乱していた。
せっせとギンの世話を始めたトキに老師は言い渡した。
「キリがついたら魔法の修行をするからの」
「……?」
「お主が疾風の鎧を覚えたいというから迷宮の主と戦ったんじゃろうが!」
「……あ~。わ、忘れてたわけじゃないぞ!?」
「苦労したというのにお主は……。感覚を忘れない内に早めにした方がよいぞ」
「……ジジイほんとにどうしたの?師匠の真似事なんて似合わないよ?」
「師匠じゃろうが!まったく、ギンのことばっか気にしよって」
「あ、最近構ってあげれないから寂しいのか?ジジイのヤキモチなんて醜いことこの上ないぞ?」
「誰がヤキモチなんぞ焼くかぃ!さみしくもないわぃ!」
「ギン~お前もジジイの構ってちゃんなんて嫌だよね~」
キュェェェ
「そうだよな~。ギンもそう思うよな~。」
「ふん!儂、もう寝る!」
老師はそのままふて寝してしまったが、トキは構うことなくギンと戯れるのだった。
翌日のこと。
「さて、じゃ~魔法の修行を始めますか」
「ふん!」
「ジジイ機嫌なおせよ~。今日は構ってやっから」
「いらんお世話じゃ!とっとと始めんかぃ!」
「はいはい」
トキは自分の魔力を認識した。
体の胸の辺りに固まっているそれを体全体まで広げていく。
そして、迷宮の主に吸収されたときのように全身から魔力を放出する。
「ふっ……ぷはぁ、ハァハァ」
「ふむ、やはりお主もなかなか魔法の才能があるようじゃの。まだムラはあるが、きちんと全身から魔力が放出されとったぞぃ」
「そいつぁどうも。あとは、発動するだけだな。魔法に慣れてきたら、この疲労感もなくなるんだよな?」
「そうじゃの。この魔法は難度が高いから、儂でも疲労感がなくなるまでに1,2年、戦闘できるまでに4,5年はかかったがの」
「へ~そうなんだ。ま~聞いたことがない魔法だし、それでも早いほうか?」
「そうじゃとも。儂が大魔道士たる所以じゃな」
「はいはい、構ってちゃんすごいすごい」
「ぐぬぅ。まぁよい、話を続けるぞぃ。疾風の鎧は全身を鎧のように風で纏うことは言ったかの。詳しく言えば、体の表面に沿って風で一定の厚みの服を着込んだようにしておるんじゃが、その厚みを変化させとるんじゃ。前へ加速するときは背面側から対流を生み出して追い風を受けるようにし、前面側の風は加速に不要な抵抗を少なくするんじゃ。宙に浮いて加速する場合は、さらに地面から自分へ風が吹くようにする必要がある。まっ、凧の要領じゃな。ちなみに一番つらいのは加速させた後のブレーキと旋回したときじゃ。慣れないと吐くぞぃ。そういうわけで、この魔法は発動結果に直接改変する固定型魔法ではなく、発動効果に改変する運動型魔法、とりわけその中でも能動型魔法に属しておる」
「能動型……自分の意思で効果を変えられるってことか。これ、この魔法がすごいんじゃなくて、それだけの操作能力がすごいんじゃね。参考までに他には、どんな型があるんだ?」
「うむ、固定型魔法はわかりやすいの。例えば球状に自分を風で包んで防御したとする。これは風の壁というそれ以外の結果を生まない、固定された魔法じゃ。火は燃え広がる効果を持つから、同じように火の壁を作っても、固定型魔法の中の付随型魔法に分類される。闇と光属性は物理効果はないんで基本的には全て固定型魔法じゃ。運動型魔法は操作型、流動型、複合型が知られておる。火の玉や土の槍を目標に向かって飛ばす操作型。大量な水や土などに一定の動きを加えて、そのままの押し流したり回転させ続けたりする流動型。固定型と運動型、または運動型同士を組み合わせることによって複雑な効果を生み出す複合型があげられる。疾風の鎧も操作型と言えなくもないが、全身での魔力操作が必要じゃからの。能動型ということにしておる」
「ん?能動型ってジジイが考えたのか?」
「そうじゃ。なんせ空を飛ぶものなんておらんかったからの。ふぉっふぉっふぉ。見直したじゃろう?」
「ソウデスネー。氷魔法なんてのは複合型なのか?」
「むぅ。氷などは複合型の中でも派生型と言われておるの。光と闇以外のそれぞれの属性で確認されておって、爆破効果のある『炎』、お主が好きな『氷』、最速の攻撃速度を誇る『雷』、植物操作と硬化に特化した『金』があるが、確か今は氷・雷・金の使い手がおったはずじゃ」
「へ~やっぱ強いのか?」
「いずれもが剣魔十傑に名を連ねておるくらいじゃからの」
「剣魔十傑?」
「なんじゃ、お主知らんのか?子供は皆憧れるもんじゃぞ?剣魔十傑というのは、冒険者・傭兵・魔法・裏ギルドなどに所属しておるこの大陸の10人の戦闘力がバカ高い、SSランクの猛者どもじゃ」
「へ~そんなのいるんだ。ジジイより強いのか?」
「ま~条件と状況によっては負ける可能性もあるの」
「ジジイにしては謙虚だな。儂最強とか言いそうなのに」
「……まっ、昔対峙したこともあっての……」
「ふ~ん。さて、じゃ~そろそろ修行を再開すっかね」
「儂が見本を見せておくから、まずは形からじゃ。イメージを明確にするんじゃぞ」
「了解」
魔力の全身放出はうまくいったトキだったが、発動には手間取ることとなる。
老師曰く「不細工」とのこと。
年単位での修練が必要であることは予想できたので、気長にやっていこうと思うトキだった。




