大切なものを無くしてしまった
◯登場人物
沙絵 46歳
訪問介護の仕事をしている。
千沙 18歳
沙絵の娘 保育の専門学校に通う。
「やばい!! ないないないないない!」
十一月も中頃になろうかと言う木枯らしが吹く季節に、私はめちゃくちゃ焦っていた。ちなみに自宅である。
「ママどうしたの? 隠してたお菓子でも無くしたの?」
いや、そんな意地汚くないよ〜! あ、でも何を無くしたかは、娘には言えない。
自己紹介が遅れたんだけど、私は沙絵と言います。今は四十六歳でもう四捨五入したら五十歳なんだよね……あぁ歳は取りたくないな〜。んで、来年に十九歳になる専門学生の娘の千沙と今は二人暮らし。
前の旦那と離婚してからずっと娘と二人暮らしだったんだけど、三年前に運命的な出会いがあったのだ。
知り合ったキッカケはオンラインゲームというチャラいキッカケかもしれないんだけど、おーくんは私のことをホントに大切にしてくれるし、娘のことも含めて大事に思ってくれている。
でね、私は香川県に住んでいて、おーくんは兵庫県だからプチ遠距離恋愛だったんだけど、チサの高校卒業のタイミングで私が元々住んでいた神戸に引っ越すことになったのだ。
あっ、おーくんというのは私の最愛の人で、本名は凰太と言うよ。三歳年下だけどとても可愛いの。あ、でもね、可愛いと言っても頼りがいもあって、私が解らないこととかチサの学校のこととかも相談したりするんだけど、一緒になって考えてくれたり、教えてくれたりする。
それでね、それでね! 実は二週間後に、私とおーくんは結婚式を挙げるのだ〜!
わーい! めちゃくちゃ嬉しいな。
この歳になって、ウェディングドレスを着て、結婚式場で式を挙げることができるなんて、思ってもみなかったから。
でも、それなんだよね、問題は……
実は無くしてしまったモノというのが、その結婚式の時に使う結婚指輪なんだよ……
これはめちゃくちゃやばいよね……ピンチだよね……昨日にはちゃんとしてたはずなんだよ。普段付けたり外したりはあるんだけど、ホントーに大事なものだから、どっかにポンってほっとくことはないはずなんだよ。
でもないんだよね……二週間後の結婚式までに必ず探し出さねば……でもおーくんにはもちろんだけども、チサにも内緒にしてないとバレたらヤバすぎる……おーくんと私で頑張って貯めたお金で買った大事な大事な指輪なんだもん。
あぁ……なんで私ってこんなにおっちょこちょいなんだろ……たまにお財布とかね、通帳とかね、身の回りの物はどこかに置いて、置いた場所わからなくなることもあるんだよね。でも、さすがに結婚指輪はダメだよね……
ちなみに、おーくんとは、結婚式を挙げた翌週から一緒に暮らすことになっている。神戸に引っ越して来た時も、元々そのつもりで広めの家を借りていたからだ。
あとはおーくんの元々住んでいたマンションを引き払ったり、片付けたりというくらいなんだよね。
「ママ……なんかテンパってるけど大丈夫??」
チサが心配して、声をかけてくれた。
「ん? あぁ、全然大丈夫やけん、気にせんとって〜」
さて。どこから探そうか……全く心当たりがないんだけど。




